↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶の回帰〜Oath of Karma〜  作者: 儚威
第1章 セイクリッド学院編
12/47

第12話 気配なき者

 学長室を後にした俺は、学院の裏手へ足を運んだ。


 昼間でもここに来る生徒はほとんどいない。人の気配もなく、静かだった。


 右手をゆっくり前に出す。


「……使える」


 指先から、小さな赤い炎がふわりと舞い上がった。スキルじゃない。俺自身の魔法だ。


 まだこれくらいだが、訓練していけば……

 思わず笑みがこぼれた。


「——あのー」

 背後から声がした。


「!?」

 反射的に振り返る。そこに立っていたのは、小柄な女だった。茶色の短い髪に、腰には細い刀。まるで最初からそこにいたかのように、自然に立っている。

 気配が、全くなかった。


「ここで何してるの?」


 少女は不思議そうに首を傾げた。


(独り言、聞かれたか……)


「息抜き。静かだから」冷静を装いながら答えた。


「そうなんだ」


 あっさりと返される。特に疑う様子もなく、ただこちらを見ている。

「……君こそ、なんでここに?」


「強い魔力を感じたから来てみたら、君がいた」


 あまりにも平然とした口調だった。この距離で、俺の魔力に気づいたのか。

「いつからいたんだ」


「いま来たばかりだよ。そしたら君が炎出してたから声かけた」

(……独り言の後か。)


 安堵する一方で、別の疑問が浮かんだ。ここまで近づかれていたのに、なぜ気配に気づかなかった。

 しばらくの沈黙の後、少女が口を開いた。


「君、強いね」

「いや、俺なんてまだ全然だよ」


「そんなことないと思うけど。ボクがこの学院で見た中で、君は強い部類だよ」


 上から目線だと思ったが、さっきの気配の件が頭から離れなかった。


「それを言うなら君の方が強いだろ。気配すら感じなかった」


 少女は少し考えるように視線を逸らした。そして。


「うん、ボクの方が強いよ。魔力量は負けるかもしれないけど、今の君とボクじゃ相手にならないと思う」


 迷いも遠慮もない。ただ事実を言っただけ、という顔だった。


 否定できないのが、悔しかった。

 俺がそう思った瞬間、少女はくるりと背を向けて歩き出した。


「あ、待って。俺、セオン・クレスト。君の名前は?」

 少女は立ち止まり、目だけこちらに向けた。


「リン・レステニア」

 そのまま歩き出す。


「次会う時は選抜戦だね。楽しみにしてるよ、セオン」

「ちょっと待——」

 止める間もなく、リンは足音も気配も残さないまま歩き去っていった。


 静寂が戻る。

「……選抜戦?」


 それよりも——リン・レステニア。

 この学院の生徒で会った誰よりも、強いかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。