↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
記憶の回帰〜Oath of Karma〜  作者: 儚威
第1章 セイクリッド学院編
11/47

第11話 一瞬の賭け

(バレたはずはない。なら、なぜ呼び出される……)


 そんなことを考えながら、俺はハレス先生の後をついていった。


「俺はここまでだ……くれぐれも失礼のないようにな」

 ハレス先生がこんなに緊張しているのは初めて見た。

 嫌な予感がする。


 俺は表情を整え、学長室の扉を開けた。


 ――――――――


 奥の席にはストライトが座っていた。

 対面のソファには、苛立った様子のヘンリー校長と、その隣ににこにこしているおじさんとおばさんがいる。


(多いな……)

 率直な感想はそれだった。

 だが——


 奥からこちらを見ているストライトの視線が、妙に引っかかった。その視線が、胸の奥に焦りを呼び起こす。


「はじめまして、セオン・クレスト」

 ストライトが穏やかに言った。


「改めて、私はストライト・ウィリアムだ。こちらはヘンリー校長、魔法研究のアレク先生、そして癒しの部屋(ヒーリングルーム)のロザリナ先生だ」


「……あの、俺をここに呼んだ理由は?」

 戸惑いながら聞く。


 するとストライトが、少し申し訳なさそうに言った。


「セオン君。君はマルコ君たちにいじめられていたそうだね。それに気づけなかったこと、学長として本当に申し訳なく思っている。だが——」


 声が少し低くなる。


「君をいじめていた3人のうち、2人が何者かに殺され、1人が行方不明だ」


「は、はい……知っています」


「その日、俺はいつも通り殴られて……寮に引きこもっていました」

 するとストライトが静かに言った。


「マルコ君は、もう死んでいるんだ」

「え……」


 思わず声が出た。

(なぜわかった……!?)


 アレク先生が資料を見ながら言った。


「死体があった場所を詳しく調べたところ、灰の中からマルコ君と思われる細胞が見つかりました。さらに灰を分析したところ、興味深い結果が出ています」


 一拍置いて、続ける。


「通常の炎魔法では、人間をここまで完全に燃焼させることはできません。つまりこれは、通常の炎とは性質が違う、特殊な炎魔法によるものです」


(そこまで気づいてるのか…)


「そうだったんですね……」

 俺は驚いたふりをした。


「一体どんな魔族が……」

 するとストライトが、わずかに目を細めた。


「魔族?いや——私は人間の仕業だと思っている」


「な、なんでですか……?」

 ストライトは穏やかに笑った。

「勘だよ」


 理由がないなら、俺だと決めつけることはできない。


「亡くなった3人の親御さんにはすでに伝えた。マルコ君の父親が、君と話したいと言っていてね。機会があれば、話を聞いてあげてほしい」


「……はい」

「だが、その前に」

 ストライトの声が少し変わった。


「確認しておきたいことがある」


 嫌な汗が背中を流れる。


「君——何か隠していないか?」

 心臓が跳ねた。

「え……?」


 するとヘンリー校長が机を叩いた。


「お前がやったんだろ!!森に魔族なんて出ない!お前しか考えられん!寮にいた証拠もない!クラスの奴がお前が連れて行かれるのを見ている!!」


(……確かに状況は最悪だ)

 だが、それだけで断定はできないはずだ。


「まあまあ」

 ロザリナ先生が穏やかに言った。

「決めつけるのは良くありませんわ」

「はぁ……」

 ヘンリー校長はため息をつくと、立ち上がって俺の前に来た。


「逃げるなよ。今から『鑑定』する」


(!?)

 背筋が凍る。


(鑑定スキル……!!まずい……『魔法奪取(マジックスティール)』は見えるのか……!?)


 もしバレたら、この場にいる全員を——


 右手に、無意識に力がこもる。

 それが生き残る唯一の方法かもしれない。そう思った瞬間——

「スキル——『鑑定』!!」


 室内の空気が張り詰めた。全員がこちらを見ている。ストライトだけは椅子に座ったまま、静かに観察していた。

「お、お前……!!」

 ヘンリー校長が目を見開いた。

「お前……魔法をひとつも持っていないじゃないか!!」

「え……?」

「本当かい?」ロザリナ先生が聞いた。


「ああ、間違いない」

 ストライトが小さく笑った。


「ハハッ、すまないセオン君、魔力量が多いから、てっきり君かと疑ってしまった。まさか魔法が使えないとは……驚いたよ」

(……助かったのか?)

 だが、油断はできない。


「当たり前ですよ。魔法が使えない俺が、あの二人を殺せるわけないじゃないですか」

 ロザリナ先生が立ち上がった。


「その言葉に嘘は感じませんね。セオン君、体の傷を治して差し上げます」

 淡い光が広がる。痛みが、ゆっくりと消えていく。

(助かった……)

 ふと、あることに気づいた。


(待てよ……ヘンリー校長はスキル持ちだから魔力が強い。なら俺は——)

 胸が高鳴る。


(何かが変わっているかもしれない。)

 早く試したい。

 そんな俺を——

 部屋の奥から、ストライトは静かな眼差しで見つめていた。まるで、何かを見極めるかのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。