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苺の国のパルフェ魔法女学園  作者: ビリリねこ
第四章 聖騎士 対 魔女
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第61話 雪の精霊①


 ボワロンが技を失敗するのには理由があった。

 技には発動条件があり、それを満たせなくなっていたのだ。


 技を発動する条件は——一定範囲内ならば——自由に決めることができた。


 ボワロンは、聖騎士フレイネルと付き合い始めた7年前に、この技を会得した。

 その時の勢いで、次のような条件付けにしたのだが、後日それを後悔する。


 それは、『愛の力を信じて念じる』ことだった。

 1年前に浮気され、それを信じることができなくなっていた。


 一度決めた条件は変更できない。

 以来、技は使用できなくなっていた。





 ムース・ボワロンとアステア・フレイネルは同じ一時保護施設の仲間だった。

 身寄りのない子供たちは、里親が見つかるまでのあいだ、その施設で過ごす。


 一歳年下で犬派のフレイネルは、同じく犬派のボワロンによく懐いていた。

 その当時、施設の子供たちの中では、猫派が多かったのだ。


 ある年の瀬、フレイネルが、


「ここには雪の精霊さん来ないの?」


とボワロンに聞いた。


 年末になると、親が子にプレゼントをあげるイベントがあった。

 そのイベントは、土着の精霊信仰と結びついているので、フレイのような言い方となる。


「来るわけないだろ、ここは家じゃないんだから。雪の精霊は家にしか来ないんだよ」


 ボワロンが突き放すようなことを言うと、フレイネルは泣き出してしまった。


「やーい、ムースがフレイ泣かしたー!」


 他の子にからかわれるボワロン。


「まあまあ、どうしたの? よしよし大丈夫よー」


 この施設の職員であるステア・オルストリアがやってきてフレイネルを慰めた。

 何があったか尋ねるステアに、先ほどボワロンをからかった同い年のレタン・ネフィルが答える。


「ムースが、ここには雪の精霊は来ないって言って泣かせたんだ、あはは」

「本当のこと言っただけだろ、何も悪いことしてない!」


 笑うレタンを追いかけるボワロン。


「ここに雪の精霊は来ないですって? 誰がそんなことを? 毎年来ているというのに」

「……?」


 その言葉に泣き止み、ステアの腕の中で顔を上げるフレイネル。


「うそ、来てるの?」

「本当ー?」


 走るのをやめ、ステアを見る、まだ信じきれないボワロンと、少し嬉しそうなレタン。


「本当だよ。私去年見たの、院長が雪の精霊を追い返しているところを」


 大きなネコの人形を抱きながら現れたのはルルーナ・ミスティフィエ、ボワロンと同い年の5歳。


「ルルーナ、どういうこと?」


 ボワロンが近づく。


「さあ、わからない、でもここにも来てるのは事実みたい」


 ルルーナが表情を変えずに言った。


「皆さんがそんなことを気にしていたなんて、わかりました! これから真実を話します!」


 皆がステアに注目した。

 ゴクリと唾を飲み込む音が聞こえる。


「……実は雪の精霊は、昔々ここで暮らしていたのです!」

「「「ええー!!」」」


 驚く子供たち。


「ここを出て、立派な精霊となって帰ってきてくれたのですが、そんな我が子も同然な者からプレゼントなど頂けません。だからお帰りいただいているのです」


 ステアが胸を張って言った。


「えー! すごい!」

「もらってくれよープレゼントー!」

「なるほど、そういうこと」

「……」


 他の子供たちが声を上げる中、ボワロンは黙っていた。

 生育環境のせいか、仕草や表情を読み取る能力を異常に発達させていたボワロンは、ステアが嘘を言っているのを見抜いていた。


(本当は来ていない)


 おそらくルルーナが見たのは、雪の精霊の格好を真似てプレゼントを売りにきた、押しかけ販売員か何かだろう、とボワロンは思っていた。


「……」


 でも、何も言わなかった。

 みんなの嬉しそうな表情を、壊すようなことはしたくなかったのだ。


「皆さんがそんなに気になっているのなら、今年は来てもらうことにしましょうか」


 ステアがパンと叩くように、胸の前で手の平を合わせた。


「本当に一?」

「やったー!!」

「何頼もう」

「別に、来なくていいけど」


 他の子たちもやってきて、皆ではしゃいだ。





 ボワロンがもうじき6歳になろうかという頃、施設にいたその時のメンバーは、それぞれ里親が決まり離れ離れになる。

 最後まで里親の決まらなかったボワロンは、ステアが里親となり、一緒に暮らすことになった。


 この国では18歳になると里親の元を去らねばならない。

 しかし、成人となりステアの元を離れたといっても、ことあるごとにそこを尋ねるような関係だった。


 ボワロンは、それなりに人生を楽しみつつ、仕事に専念して生きてきた。

 何人かの男と付き合ったりもしたが、いまいちピンと来なかった。


 ボワロンが28歳になる頃、世界3位の魔女の称号を受けた。

 その後、宮殿での祭事に招待された際に、聖騎士となっていたフレイネルと再開する。


 すぐに意気投合した。


 フレイネルが押しまくったことで、あっという間に恋仲となった。


 夜、寝る前に一時保護施設での昔話をするのが好きだった。

 このまま、二人で一緒に家族になるんだと、ボワロンは思っていた。

 しかしそうはならなかった。


 お互い忙しく、なかなか結婚の話にはならなかったのだ。

 そうして付き合って6年目のある時、ボワロンは見てしまった。


 見知らぬ女とフレイネルがキスしているのを。

 目の前が黒く染まった。


 ボワロンは、フレイネルにズカズカと近づくと思い切りビンタをした。


 フレイネルはそれを受けて膝から崩れ落ちた。




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