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苺の国のパルフェ魔法女学園  作者: ビリリねこ
第四章 聖騎士 対 魔女
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第60話 作戦開始



 ニルヴァネージュの命を受け、ヴィヴィアンから黒い液体を引き受けて再び走るボワロン。

 会長は、そのヴィヴィアンが抱えているルシェミに声をかけた。


「あるのか、あれを消滅させる方法が」

「うまくいくかはわからないけどね」


 光属性の魔法は聖騎士しか使えない。

 まだ、聖騎士たちが独自の信仰を持つようになる前に作られた魔法だった。


「わずかでも可能性があるなら……、やらせてくれ」


 ルシェミは光の檻で時間を稼ぐことを請け負った。


「信用できるんですか?」


 バニーユが聞く。


「信用できてもできなくても、うまくいかなきゃ世界が滅ぶんだ、やるしかないんだよ」


 ニルヴァネージュが笑った。


「口で言っても無駄かもしれんが、安心してくれ、裏切ったりなどしない。私は生まれ育ったこの国が好きだ。それを失いたくはない。まさに自分で巻いた種だ、命に変えても時間を稼ごう。だからお前たちはお前たちのやることに集中してくれ」


 ルシェミが瞳に熱いものを宿して言った。


「まあ、そう熱くなりなさんな。気楽にやれって言っても無理だろうが、力が入りすぎて失敗したなんてことがないようにだけは頼むよ」

「ああ、わかっている」


 精神支配を受けていた時とは比較にならないほど澄んだ目で言うルシェミ。


「作戦会議は終わったか?」


 アルマナ姫が話に入ってきた。


「姫さま、このような事態を引き起こしてしまい、申し開きもございません。どのような罰をも受ける所存で——」


 懺悔を続けようとするルシェミの言葉を、姫が遮った。


「よい、まずはこの場を収めてからだ。今この場であやつを抑えられるのはお主しかおらん、ルシェミ頼んだぞ!」

「……はっ! 必ずや」


 臣下の礼を示すルシェミ。


「ニルヴァネージュ、こやつの使いどころはないか? この状況で遊ばせておくのもなんだ」

「げッ」


 急にベンシーに仕事を振ろうとするラクリマ。


「姫さま、我々だけで十分です。ベンシー姫さまを頼むよ」

「頼むったって、お前らが失敗したらどうにもならないよ」


 口をとがらせるヴァンパイアのベンシー。


「そうか、わかった邪魔したな。では頼んだぞ皆の者! この国を、王国の民を、未来をそなたらに託す! 見事守り抜いて見せよ!!」


 ラクリマ姫が檄を飛ばした。


「「「はっ!」」」


 皆がそれに答えた。





 奥義は、原始の魔法をさらに改良したものだった。

 原始の魔法は土地の持つ力を利用する魔法だったが、土地が痩せていれば使えない。

 しかし、奥義は大地の奥深く、この星の力を借りて行う魔法だった。

 それはどこにいても、原始の魔法と同じ威力を出すことができた。





「さて、やるよ! 準備はいいね?」

「ああ!」

「はい!」

「もちろん!」


 それぞれに返事を返す。

 黒い液体は闘技場の中にいたネズミや虫などを吸収し、さらに倍ぐらいの大きさになっていた。


「どうした、顔色が悪いぞ?」


 ミリにそう問われたボワロンは、


「え、いや、大丈夫、ですよもちろん!」


無理やり取り繕った。


 今回はボワロンが作戦の中心だ。

 なのでヴィヴィアンが今は液体に追われている。


 だが、ボワロンは任されたその使命を完遂できるか不安だった。

 皆が期待しているその技は、ここ最近使えなくなっていたのだ。





 闘技場内にはもう一人聖騎士がいた。

 その名はアステア・フレイネル、第四聖騎士団の隊長でボワロンの元カレだった。


 フレイネルはプラリネの魔法で飛ばされ気を失い、腹を殴られたものの、黒のオーラに汚染された苺を食べていなかったことと、生来のタフネスで早期に復活していた。


 その後、医療班がやってきて病院へと転移させられそうになったが、まだやることがあると断る。


 これからやる大仕事のために腹ごしらえをしようと売店に向かったものの、店員がいなかった。

 どうしたものかと物色していると、長身でやたら見た目の整った女がやってきて、


「あれ~、おじさん以外にも聖騎士さんいたんですか~?」


などとふわりとした話し方で油断させられたかと思うと、恐ろしい速さで腹を殴打され沈められた。


「2人はかつげないので、置いていきますね〜」


 悶絶しながらその言葉を聞いた。

 ようやく回復しゲートから出ると、魔女たちが集まって何かをやっていた。


 フレイネルはそこへ向かって走り出した。





 今回の作戦は、まず撃てるもの全員で奥義を発動する。


 その9つの奥義をボワロンが一つの魔法へと集約して放つ手筈だった。


 ボワロンは、複数の魔法を一つにまとめて威力を倍増させる技を持っていた。

 今まで一つにまとめた最大の数は9つ、丁度今回と同じだった。

 しかし、奥義でためしたことは、まだない。


「これでダメなら諦めもつくよ」


 ニルヴァネージュがそう言って笑った。


 もっと魔女を集めて、大量に奥義を放つという方法もニルヴァネージュの頭にはあったが、完全に同時に当てることが難しいため、却下となった。

 大量に撃ったとしても、一番最初に到達した魔法の威力のみが問題となるなら、ボワロンの技で1発の重さを増す方が良いと考えた。


 それに対して固い笑顔を返すボワロン。

 それを見たプラリネが首を傾げた。


 作戦開始に伴って、アルマナが光の加護を施す。


「光の加護は施しましたが、黒の液体に吸収されるのを防げるわけではありませんし、気休め程度だと思ってください」


 その言葉にニルヴァーシュが頷く。


「じゃあいくよ!」


 ヴィヴィアンに合図を送るニルヴァネージュ。


 観客席を走っていたヴィヴィアンがそれに呼応し、闘技エリアへ走ってくる。

 闘技エリアの中心にいる魔女たちと、そこへ向かうヴィヴィアンの間に立つのは聖騎士ルシェミ。


 魔女たちが奥義のための魔力を集め始めた。

 それを合図に、光の魔法で黒の液体を拘束する。

 液体の真正面には立たず、魔法が通るルートを開けるルシェミ。


 魔女たちから、とてつもない魔力が溢れ出す。

 その魔力を吸収せんと、檻を砕き進もうとする黒い液体。


 9つの奥義が発動した。


「……クッ!」


 ルシェミが呻く。

 ミシミシとヒビが入る光の檻。


 最後にボワロンの持つ技で、その奥義たちを一つに集める。

 ……はずが、できなかった。


「おい! 何をやっている!!」

「……すみません! すぐやります!」


 何度試しても、ボワロンは魔法を一つにまとめる技を失敗した。





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