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苺の国のパルフェ魔法女学園  作者: ビリリねこ
第四章 聖騎士 対 魔女
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第59話 光明


 ルシェミが放った黒の液体は、命あるものや、魔法などのエネルギー物質を飲み込む闇の塊だった。

 それは、無限に広がり世界を覆うと言われていて、使用はおろか、精製方法を調べることも禁じられていた。


 ボワロンの魔法を受けて、そちらへ方向を変える黒い液体。


「げぇー、こっちに来た!」


 逃げるボワロンや、その他の教員たち。


「アルマナ、あれはどうやったら消滅させられるんだ?」


 ミリがアルマナに問う。


「200年前の文献によれば、時の魔女が最大火力で焼き払ったと書いてありましたけれど……、その時は、握り拳ていどの大きさだったとか」

「握り拳……? その10倍はあるね……」


 ミリは苦い顔をしながら笑った。





「あれは何じゃ?」


 アルマナとミリは、ラクリマ姫と合流すると事情を説明した。

 少し遅れてバニーユとラブラージュも、黒い液体から逃れてやってきた。


「まったく、とんでもないものを呼び出してくれたようじゃな」

「こりゃあ骨が折れそうだね」


 腕組みをするラクリマ姫と、顎に手を当てるニルヴァネージュ。


「ニルさま、何とかできそうですか?」


 アルマナが不安な表情を浮かべて聞く。


「さあねえ、奥義をぶっ放して消し去ったって話は先代から聞いてるよ。問題はかつての10倍のサイズに対して火力が足りるかどうかだね」


 ニルヴァネージュが呵呵と笑った。


「ダメだったらどうなるんです?」


 ラブラージュが思ったことを口にした。


「もし、奥義の威力があいつを滅するのに足りなかった場合、その魔力を吸収されると考えると、完全に手がつけられなくなるね。かつての魔女もそう考えて、下手な魔法を撃つより最大火力でいったんだろう」


 一転して真剣な表情のニルヴァネージュ。

 黙り込む周りのものたち。


「結界があるのは、あれを閉じ込めておく上ではむしろ好都合か。いや、簡単に破壊されるかも知れないとしておいた方がいいか。宰相のやつも国を滅ぼしかねないのはわかっているみたいだね。しかし、私らをあれに飲み込ませた後、収拾する策を用意しているのかね」


 目を瞑って考え込んだニルヴァネージュ。


「まあいい、魔女たち、気合い入れていくよ!」


 ドスの利いた声で言った。





「あんなのどうやって戦うんだよ」

「ちょっと会長のところに行ってくる」

「私も!」


 観客席の最後列、広い通路を3人で走るボワロン、プラリネ、ザブリコ。

 そのうち、プラリネとザブリコが離脱した。

 それでもボワロンを追いかけてくる黒い液体。


「もー、なんで私の方を追いかけてくんの!」


 一人で泣き言を言った。


 ボワロンが黒い液体から逃げていると、その液体は急に動きを止めた。

 座席に残された肉串などの残飯を漁る黒い液体。

 そして少し大きくなる。


 食べ終わるとまたボワロンを追う。


「また大きくなりましたな」

「早くしないともっと巨大化しそうだね」

「ええ、まさにこの世界を覆うほどになるでしょう」


 皆がボワロンのいるあたりを見ていた。

 そしてその時、アンチマジックフィールドが消えた。





 アンチマジックフィードが解除された事で、遠隔会話魔法が使える様になった。

 ニルヴァネージュは大王に状況を説明していた。


「お待たせしました〜」


 アンチマジックフィールドが消えてから少し経った頃。

 長身で艶美な女が聖騎士を肩に担いでゲートから歩いてきた。


 髪は薄いブルーのボブヘアで綺麗に整えられており、身のこなしも洗練されている。

担がれているのはルシェミだった。

 口から黒い霧を吐いていた。


「遅いぞ、ヴィヴィアン」


 ニルヴァネージュに叱られたのは、世界2位の魔女、ヴィヴィアン・キルスターシュ、26歳。

 彼女は10歳の頃、飛び級で聖騎士学院高等科を卒業し、その後は聖騎士にならずに数年間独自の修行を積む。

 16歳になると魔法女学園高等科へ入学し、魔女となった異色の人物だった。


「え~、頑張って運んできたというのに、褒めてくれないんですか~?」


 どさりとルシェミを地面に寝かせる。


「とりあえず、あれについて何か知っているか?」

「あれ? 何のことでしょう~」


 ボワロンの後を追いかける、黒い液体を指差すニルヴァネージュ。


「なんですか、あれ」


 それを見たヴィヴィアンは、素直な感想を述べる。


「生命力や、魔法なんかを無限に吸い込む闇だそうだ」


 ミリが答える。


「あ、先輩久しぶりです〜!」

「相変わらずふわふわしてるねー、お前は」


 キッチリとした硬質な見た目や、明らかにキレのある身のこなしとは裏腹な、ふわりとした喋り方、その乖離は、彼女が演技していることを示していた。


「そろそろ、私にも奥義とやらを教えてくださいませんか~?」

「師匠、何でこいつを連れてきたんですか?」


 ミリがニルヴァネージュを見る。


「色々な事に詳しいし、動ける奴が必要と思ったんだけどね。失敗だったね」

「失敗とか言わないでください~」


 そんな呑気な会話をしているうちに、残飯を食べ徐々に大きくなる黒い液体。

 観客席のボワロンが、ニルヴァネージュの方を見て何かを訴えている。


「話している暇はないよ! ヴィヴィアン、ボワロンと交代してきな!」


 魔女とは言え、ヴィヴィアンは聖騎士側の人間だという認識を持たれていた。

 奥義を外部に漏らすわけにはいかないため、ヴィヴィアンは奥義が使えなかった。


 ヴィヴィアンに、黒の液体に追われる役を交代してもらったボワロンがやってきた。


「ボワロン、この手順でいく、わかったな?」

「は、はい会長」


 ニルヴァネージュは、ボワロンに作戦を伝えると早速実行に移した。


「魔女たち! 全員で撃つよ!」


 人が持てる限界をはるかに超えた魔力を、手のひらに集めていくニルヴァネージュ。

 魔力の切れたミリと、中心的役割を担うボワロンは奥義を使わずそれを見守る。


 学園の教員4人と、姫に付き従う魔法重騎士4人がニルヴァネージュに続いて、奥義のための魔力を集める。


「おおお~、あれが奥義!?」


 黒の液体に追われて、走りながらも目を輝かせるヴィヴィアン。

 しかし、高濃度の魔力を感知した黒い液体は、究極魔法が発動する前にニルヴァネージュたちに襲いかかった。


「チッ!」

「師匠!」


 魔法を解除して避けるニルヴァネージュと魔女たち。

 そして距離をとる。


「動きを止めないと打てないね」

「どうやって止めます?」


 ミリとその師が話している最中、黒い液体は倒れているルシェミに近づこうとしていた。


「いけません! すぐに助けなければ!」


 アルマナが叫ぶ。

 すぐさま、ヴィヴィアンがルシェミを助けに動いた。


「起きて〜、おじさま~!」


 言葉とは裏腹な俊敏な動きで、搔っ攫うように抱き起こし、黒い液体の前を走り去るヴィヴィアン。


「う……、ぐ……」


 その騒動で意識を取り戻すルシェミ。


「おじさま起きました〜?」

「ここは……」


 直接黒のオーラの塊を飲まされたチェルシーと違って、黒のオーラに汚染された畑で採れたイチゴを通して、微量ずつ摂取していたルシェミや他の聖騎士たちは、朧げな記憶を残していた。


「あれは、私が造ったものか……止めなければ……」


 後ろから迫る黒い液体を見てそう呟くルシェミ。


「おじさん~、あれを止める方法を知っているの?」


 ヴィヴィアンが聞くと、


「ああ……、下ろしてくれヴィヴィアン」


 ルシェミの言葉を受け、ヴィヴィアンはその液体と距離が取れたところで下ろした。


「来い」


 構えるルシェミ。


「おいおい、あいつ何をするつもりだ?」

「何か手があるのか?」


 それを注視するミリとニルヴァネージュ。


「はあああああ」


 ルシェミは黒い液体を、光属性の捕獲魔法で四方から囲むと呪符を投げ、呪印を施した。

 光の檻に入れられたような格好となる黒い液体。


「捉えたのか!?」


 ニルヴァネージュが目を見開いた。


パシャーン!!


 数秒後、光の檻は砕け散った。


「なに!?」


 ルシェミが実験室で試した時は、この方法で封じ込めることができていた。

 現に、瓶に入れて持ち歩けていたのはこの方法が成功したおかげだ。


 しかし、それは小さいサイズの時だけしか機能しない方法だった。

 瓶に入るサイズの10倍以上の大きさになると、もはや呪印で抑えることができなくなっていた。


「そんな……」


 顔面蒼白のルシェミ。

 そのまま黒い液体に飲まれそうになる。


「ヴィヴィアン!」


 ニルヴァネージュが叫ぶと、ヴィヴィアンがルシェミをまた担いで逃げた。


「どうやら、あいつの切り札は効かなかったみたいだね」

「ええ、でもニルさま、一つ光明が」


 アルマナが人差し指を立てた。


「先ほどの光の捕獲魔法は砕けましたが、吸収はされませんでした」

「……そういえばそうだね、これで魔法を撃つ時間が稼げるかね」


 ニルヴァネージュが目を細めた。



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