第37話 密談②
「ああ、聞いたよ」
レイが答える。
「負けた方の学校が廃校になる件も?」
「うん」
先ほど祭りで3人が再会した際に、お互い知らぬ存ぜぬを通したのは、険悪な雰囲気であったということに加えて、御前試合で戦う相手だと知っていたからだった。
試合をする者同士が親しくしてもいいのか、という迷いがあった。
また、久々の再会だったし、なんとなくどう接していいのか分からなかった。
しかし、やはり懐かしさもあり、何となくかっての遊び場にベルとレイは寄ってみたのだった。
どちらかの学校が廃校になるという二人の会話を聞きながら、ベルは立ち上がると石ころを何個か拾って、湖に投げ始めた。
少し風が強くなり、木々が波のような葉音をたてた。
チェルシーは、ベルが石ころを投げるのを見ながら、顎に手を当てて少し考えた。
「ねえ、こう言うのはどうかしら、両者戦闘不能で引き分け」
ベルが石を投げるのをやめて、チェルシーの方を見た。
「それどういう意味?」
「そのままの意味よ」
ベルの問いかけに答えると、チェルシーはレイを見た。
「演技するってこと?」
レイの言葉にうなずく。
「どうだろう」
「そんなこと、私たちはともかく、あんたはバレたらやばいんじゃない?」
心配する二人にチェルシーは、
「そもそも、こんな条件で試合を組む方が悪いんだから何があったって知らないわ」
そう言って笑った。
「決着が付かなきゃ、理屈ではどちらの学校も廃校にならずに済むけど、うまく行くかね」
「あなたたちだって、学園を潰したくないでしょ? やるしかないのよ」
「はー、なんでこんな苦労しないといけないんだろう」
それからしばしばこの場所で、3人だけの秘密の作戦会議を開いた。
◇
ベル、レイ、チェルシーの3人が収穫祭で出会う日の3日前。
魔法女学園の校長室には、教頭、各学年の担任、特別教諭等全ての教員が集められた。
教員は全てこの学園の卒業生だった。
「で、どうでした?」
一年の担任のボワロンが、前のめりに校長に聞いた。
「ミリの返事はこうよ。『奥義を教えることは許可できない、その手前までで勝て』」
黙り込む一同。
「なかなかの注文ね」
2年の担任のプラリネが言いながら腕を組んだ。
「まあ、でも現実的にはそれしかないか」
3年担任のザブリコ・ルバースが顎に手を当てて目をつむった。
「生徒一人に背負わせるのも酷だし、変装して私が代わりに出ようか」
ボワロンの提案に、
「頭脳だけは初等科ね」
「そんなガタイのいい12歳がいるかよ」
プラリネと音楽教諭のイェジ・バニーユが冷めた目でボワロンを見た。
「もー、じゃあどうすんの?」
イライラが隠せないボワロンに教頭のエピエ・ファンデュが、
「ともかく、大王を説得するしかないな。聖騎士の方は、ミリとアルマナ様が動いてくれているから上手くいくとは思うが」
なだめるように言った。
「アルマナ様が来てくれるなら心配いりませんね」
美術教諭のエル・ラブラージュが胸の前で手の指を合わせた。
「御前試合については、結果に関係なく、レイ・フランベールが実力を発揮できるようにしてあげて、折角の機会なのですし」
「わかりました」
校長の言葉に頷く三年の担任のザブリコ。
「結局我々はどうしたら?」
「まあ、いつもどうりってことでしょ」
「奥義の手前までを、フランベールに叩き込んであげましょう」
「どうせなら三年全員にやるか?」
「いいかも、あの子たち根性あるし」
教員たちが口々に言った。
それを見て校長はいつもの笑みを浮かべた。
「ではみなさん頼みましたよ」
会議は終わった。




