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苺の国のパルフェ魔法女学園  作者: ビリリねこ
第三章 聖騎士 対 魔女
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第35話 聖騎士たちと、魔女たち



「チェルシー、知り合いなのか?」

「ええ、元? 親戚」


 聖騎士学院3年、生徒会長のチェルシー・キルスターシュは、同じく3年で書記であるアジル・ドラムリンの方を向いて答えた。


「元?」


 言いながら、そのわずかの間にアジルは、魔法女学園2年、キース・レモネーシアの爪先から頭のてっぺんまでジロリと見た。


「ああ、なるほど、キルスターシュ家に生まれたというのに、魔女にしかなれない落ちこぼれだから、家を追い出されたのか、かわいそうに」


 笑みを浮かべて言った。


「ちょっと、あなたなんなのその言い方、レモネーシアさんに謝って!」


 魔法女学園2年のユズ・シャンペルノが怒ると、


「レモネーシア、間抜けな名字だな」


 アジルが肩をすくめてさらに嘲笑する。


「この——」


 ユズが何かを言い返す前に、ユズの従姉妹である聖騎士学院2年のアン・シャンペルノが割って入った。


「ユズ、あなたもシャンペルノ家にいつまでもいられると思わないことね、落ちこぼれとは線を切るようお父様に言っておいてあげるわ」


 それを聞いてさらに怒るユズ。

 縁を切るという言葉に動揺し、固まってしまうキース。


「いい加減にして! なんて酷いこというの、聖騎士はもっといい人たちだと思っていたけど、幻滅したわ!」


 魔法女学園2年のバニラ・フルッティが叫んだ。


「幻滅? あなた達に幻滅されたところで、痛くも痒くもないのだけど?」


 聖騎士学院3年、生徒会副会長のリリエラ・スリーズが表情を変えずに言った。

 魔法女学園2年のマルシュ・オウレドは、動転して一点を見つめているキースの背中を軽く叩いて「大丈夫?」と声をかけた。

 だが、返事は返って来ない。


 魔法女学園2年のロザリエ・タリアグラスが目の端でそれを見た。

 正面を見すえると、腰に差したロッドに手を伸ばした。


「おい、そこのデカい魔女、あたし達と本気でやるつもり?」


 それを見たリリエラが言った。

 ロザリエはリリエラに向かって、


「こちとら舐められて黙ってられるほど、大人じゃないんだよっ!」


 そう言うと、ロッドを引き抜いた。

 即座に魔力を込める。


「やめなさい! 法を侵すことになるわよ!」


 開いた手を前に出し、やめさせようとするチェルシー。


「ロザリエ、やめて!」

「それはダメだよ!」


 バニラとマルシュも止めるよう声をかける。


「チェルシー様、下がってください!」

「アジル! アン! 陣を組むぞ!」


 魔法無効化の陣を組もうと、臨戦体制に入る他の聖騎士達。


「遅いんだよ!!」


 ロザリエがロッドを振り下ろそうとした瞬間、


「はい、そこまで」


パルフェ魔法女学園3年、生徒会長のベル・キャラメリーゼがロッドを止めた。


「それは法律違反だにょ」


 ベルは可愛いのかなんなのかよくわからない、微妙な語尾で言った。


「ああ、噛んだ。法律違反だよ」


 そして言い直す。

 ベルはマイペースだった。

 言い直しつつ、ロッドに込められた魔力を霧散させた。


「何者?」


リリエラの問いに、


「パルフェ魔法女学園3年、生徒会長のベル・キャラメリーゼ。そちらは聖騎士学院の生徒会の方々ですね?」


 聖騎士学院生徒会が身につけている金の苺のブローチを見てベルは言った。


「そうだが、だったらなんだ」


 アジルが答える。


「今日のところはこの辺で収めてもらえませんか? うちの者の無礼はお詫びさせていただきますので」


 そう言って頭を下げるベル。


「ふん、そんなもの受け入れるわけな——」

「わかったわ。こちらも失礼な言動があったので詫びさせてちょうだい。それから後ろの方も安心してくださる? 私たちは手出ししないので」


 背後でランセを隠すように立ち、隙なく構える魔法女学園3年、主席魔法使いレイ・フランベールの方を見ずに、チェルシーは言った。


「みんな、行きましょう」


 そして踵を返すと、


「それではまたね、魔女さんたち」


 スタスタと歩いて行ってしまった。


「ま、待ってくださいチェルシー様!」

「魔女ども、次はないからな」

「はー、せっかくの楽しい気分が台無し」

「ユズ、今日の事、覚えておいてね」


 チェルシーを追いかけ、他の聖騎士達も去っていった。





「全く、何やってんのよあんたたちは」


ベルが聞くと、


「あいつらが、そこのチビに何かしようとしてたから止めたんですよ、ベル先輩」


 バレー部の後輩であるロザリエが、ランセの方を見ながら答えた。


「ふーん、レイ、そっちは大丈夫?」


 こちらへ向かって歩いてくるレイとランセに向かって問いかける。


「ああ、大丈夫」


 ランセを振り返りながら答えるレイ。


 ベルは魔法を撃とうとしたことについては、咎めなかった。

 ロザリエが撃とうとしていたのは、水かけ祭り用の補助系水魔法だった。

 攻撃魔法は授業など特別な事情がない限り法律で禁止されているが、補助系魔法は使用が許可されている。

 ロザリエのロッドを掴んで魔法を消し去る時に気づいていたのだった。


「もー、他の学校と揉めないでよ、わかった?」

「はーいっす」


 気のない返事を返すロザリエ。


「キースちゃん大丈夫?」


 キースの背中を抑え顔を覗き込んで、マルシュが聞いた。


「ごめん、ありがとう。大丈夫」


 キースは頭を何度か振って、ほっぺを両手でぱん! と叩いた。


「全く、私らに怒鳴り散らしてた時と大違いじゃん。あいつらにもさ、私たちに言うみたいに言ってやればいいのに」


 ロザリエがそう言うと、


「本当よー! も一腹たって! 腹たって! ふざけんなって感じ!」


ユズもヒートアップする。


「ユズ、もし家を追い出されたらうちに来なよ。畑仕事手伝ってもらう代わりに部屋を貸すよ?」


 バニラが半分本気で言った。


「バニラ、私を労働力として見ないで! 私はおばあちゃんのとことか行くあては色々あるし、家を追い出されるって決まったわけでもないから」


 ユズは両手を大きく振って断った。


「そうだよねー、ユズの家はお金持ちだもんねー、色々行くあてはあるよねー」


 バニラがジト目でユズを見た。


「もーそんな目で見ないでよ、みんなで畑仕事手伝いに行くからさ一」


 ユズがそう言うと、


(え? 『みんなで』って?)


 動揺を隠しつつ、キース、ロザリエ、マルシュが密かに思った。


「やったー、じゃあみんな来週末よろしくねー!」


 喜ぶバニラ。


(え? これマジで決まった感じ?)


 なんとなく二人の勢いに飲まれて何も言い出せないキース、ロザリエ、マルシュが、古びたパンのような表情を浮かべた。





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