偉い人=変人しかいないんだろうか…
????
俺は何を見せられているのだろうか?
俺が疑問に思っているとスミレが呆れたように、俺の足元で丸まって、ニャーと退屈そうに鳴いた
あのスミレでさえも、呆れているんですがそれは…
俺とキューリャさんが戸惑っているとシェンフ君がこっそりと教えてくれた
「(実は理事長先生、褒められるとすぐ調子に乗り、褒めないとすぐに被害妄想に走ったり、感情の起伏の激しい人でね。研究者肌で一つの事を夢中になってやっている時はそうでもないんだけど、通常時は特に不安定でね。実力はそこそこあるし、学園では医務室の先生以外の光魔法に適性のある先生なんだ。…だからいざという時に光属性の魔法で失敗した魔道具の爆発や暴発による怪我を治療するんだ。…だから、理事長なんて役目を押し付けて、って教頭先生が常にぼやいてた)」
………………………
おう…サイですか
「どうだね!ドラゴニア第二皇子!私の輝かしい実験棟へ君を招待したい!」
「…あ、そういうの要らないです」
「な!なぜだ!?私のこの英知溢れる素晴らしい結晶の詰まっている塔だぞ?」
あ、なんだか泣き出しそう…
なんだか悪いことを俺がしている気分になる…
先生が、途端に捨てられる子犬みたいな目になって潤んでる…
心なしか、髪の毛のはねっ返り具合も先程までよりは下に下がっている気がした
罪悪感がじわじわと背中にくる
周りの生徒たちがおろおろしながらティッシュを用意し、なんかウサギの縫いぐるみを用意している・・・どこから出てきたんだ?
ティッシュを一枚とり目の下あたりに当てながらも理事長先生(仮)は震える声でもう一度なんでと聞いてきた
「わ、私は、この学園の偉い人なんだぞ!」
偉い人がこんなことで一々泣きそうになるんじゃありません!
「わ、私は、賞だってたくさん貰っているし、頑張っているんだぞ」
知らないよ、興味のかけらもないね
「ノブレもフォーゲルも沢山お仕事しているから、私が楽にしてあげる魔法を開発してきたんだぞ!」
…うん、よかったね、凄いね
「そ、その私の誘いをこ、ことわ、っう、うぅ…」
あかん
完全に、泣きそうだ
くしゃくしゃに顔を歪ませ、持っているティッシュをぐしゃりと握って今にも大粒の涙をこぼしそうな目で、うつむいている
これじゃまるで俺が悪いみたいじゃないか!
スミレがやや呆れたように、あぁー、泣かせた、みたいな顔で俺を見上げてくるし、チクチクと罪悪感が先程よりも具体的に質量を持って俺にのしかかってきた
「先生、うさぴょんです、どうぞ!」
「うさぴょんがいるから、泣かないで下さい。」
あーあ…生徒たちが二人して、ウサギの縫いぐるみを先生に見せて、慰めようとしている
か、完全に気まずい…
まるで小さい子供を相手にしてあげなくて、うっかり泣かせてしまった時の気まずさだ
ぐずぐずと鼻を鳴らしながらボロボロと泣き出した大の大人を二人の子供が慰めると言う謎の光景をしばらく見て困惑していると何とかウサギの縫いぐるみを両手に抱きかかえてティッシュで鼻をかみ、涙も拭いて生徒たちに慰めて貰いまくった先生が俺にもう一度、今度は涙声でしゃくりあげながら聞いてきた
「ど、どうしても、ヒック、駄目?」
う”……ざ、罪悪感があああああああ!
なんだこれ
精神攻撃なの?!とんでもない攻撃なんですけど!
防げないんですけど!
「だ」
「ぅぅう」
ぎゅ、とウサギの縫いぐるみを抱きしめる手に力が籠るのが見て取れる
ええい、あなたは俺より遥かに年上なんでしょ?!
魔族は人間よりも何もかも上でしょ!
歳とか、魔力量とか、身体能力とか!!
一々泣きそうになるんじゃない!
それに俺まだ一言言っただけでしょ!
そんな捨てられた子犬みたいに見るんじゃないの!
あぁ、もう!どうすりゃいいの!
“だ”しか言ってないのに、“だ”めと続くのが怖い、みたいな顔されちゃ、俺何も言えないじゃないか…ハァ、弱ったなぁ…
『ニャー…にゃんだか可哀そうにゃ…』
うぅ、言わなくても、俺もそう思っているから!
そんな事言って、攻めるような目で見ないで、スミレ…
『ぷるぷる震えてて可哀そうにゃ』
「…はぁ」
「ぅう、わ、私は、ひっく、ノブレみたいに脳筋じゃないから、迷宮に放り込むなんてことしないもん…ぐず、すん、ただちょっと魔法が暴発するだけ、だもん」
うん、それはそれで問題なのではないかな?
後爺みたいな脳筋が二人もいたら俺学園止めてるよ?
スミレに対する溜息を、自分に向かってされたものだと勘違いしたのか、じわじわと涙が滲みウサギの縫いぐるみが所々涙の水分で濡れだした
…言いようのない、罪悪感
生徒たち二人は背中をさすり、先生を一生懸命誉めてみたり宥めてみたりしている
な ん だ こ れ
俺がもう一言も言い出せず、困惑していると牧野さんが魔法を使って先生の抱えているウサギの縫いぐるみを動かした
ウサギの縫いぐるみがティッシュを掴み、先生の涙をぬぐう
さらにそのままウサギがやすっちい紙を細長く丸めてできた棒の先に星の紙を二枚重ねて作ったぺらぺらな杖らしきものをどこからか取り出し先生の額にぺちぺちと星の飾りを当ててジェスチャーで精一杯慰める動きをしている
「うううううううう、うさぴょんんんん!」
・・・ちょっと前から気になったけど何だそのネーミングセンス
人の事言えるようなネーミングセンスはないけど、ウサギの縫いぐるみを“うさぴょん”っていうのはどうなんだ…
大体ウサギはぴょん、なんて鳴かないし・・・
てか先生なのに、ウサギを動かしているのは牧野さんって事わからないのかな…?
無属性の魔法の一つで、物を動かすだけの操り人形にする魔法だ
ヘタすれば、初級魔法なので新入生の俺やカフィーユ君(この場にいないけど)でも出来るような、簡単な魔法だ
そんなので喜んでいいのか先生…
「(理事長先生は繊細な人だから誰でも出来る、初級魔法のこれでも、縫いぐるみを動かされれば本当に縫いぐるみに息がふきこまれていると喜んでしまうんだ。)」
俺とスミレが呆けているとシェンフ君がまたこっそり耳打ちで教えてくれたけれども…
なんというか…繊細というより単純なのでは?大丈夫か、この先生…
そう、おもってしまった
「私は、頑張るぞ!二人の欲しがっている子を勧誘して、もっと褒めて貰うんだ!」
なんか、ウサギの縫いぐるみに向かって決意を新たにしだした
んんんんんん・・・断り辛いんですが、それは・・・
生徒たち二人が『頑張ってください先生』『そう!うさぴょんも応援してますよ!』と励まし、大きくこくりとしっかり頷いて先生はウサギの縫いぐるみを生徒にそっと渡した
・・・な ん だ こ れ(4回目)
先生は こほん、と咳払いをしてから俺にきらきらとした目を向けた後、今度は自信満々そうに(どこからきた、その自信…)の声を張り上げてきいてきた
「ドラゴニア第二皇子、君は解析魔法を所持していると聞いた!さらに魔法術式を組み立てたり、錬術が得意と聞いた!他にも、武器鍛造までも出来ると聞いたぞ!見せて欲しい物だな!私の塔で!」
…………………
さっきまで泣いていた赤子がもう笑う、とやらだったか?
なんだ、この変わりよう…
ヘタに、嫌だと言うと今度こそ落ち込ませかねないし…さてどうしたものか…
また泣かせたら大変だぞ…うーん…
困ったな…あぁ、そうだ
このままどうしたらいいのかわかんないので、分ちゃん何とかして!
【 】
おーい、分ちゃーん?
【何でもかんでも頼るな!ヽ(`Д´)ノプンプン】
オコ?
【オコ!ヽ(`Д´)ノ だぞ!】
………………頼むよ、何とかしてよ分ちゃん
【断りたいの?】
断るよ!だってきっとこの人マッドだぞ!
【 】
俺研究に没頭なんかする人じゃないからな!
【性格を考えるなら昇次はどっちかというと研究者体質】
違いますしおすし
【知らない魔術、知らない道具、知らない魔法薬を作る方法、材料あったらとことん試したくなる】
・・・・・・・
【違う?教えて貰ったら自分でやりたくなる、違う?】
・・・・・・・・・・・・・・・・
【で、何が不満?】
正直言うと研究に没頭しすぎてお友達いなくなりそう
【失えば、また新たに獲得できるぞ?あとぶっちゃけ、手遅れ】
うるさいやい!…ぐすん
【それで、断るのか?私はマジックエルフという観点から、考えるに応援する】
なんで?
【マジックエルフは魔法関連に強固、魔術式を組み立てるのが人一倍早い。それだけじゃなく、魔道具を作り出す式も学べる。私はこのほかいくつか利点を考えて、加味して、このチームをお勧めする。】
校長のチームは駄目なの?
【駄目、と言う訳ではないがあまり有益な物が少ない。学園内の清掃、とてもいいことだがその分危険も多い。】
あ、そっか…危険か…
危機管理は全く考えてなかった
普通にいい事じゃん、とかしか思ってなかった
【m9(^Д^)プギャー】
おい(怒)清掃活動やら爺のくそみたいな我儘に付き合ってる子達を止めたりっていう活動は別に悪いものに思えなかったんだよ!
【嘘だ。昇次は自分が思っている以上にツンデレ】
・・・・・・・・・・・・・・・
ツンデレじゃねぇ、バーカ
【教頭のチームを外から支えるのがいいなとおm】
お黙り分ちゃん
【 】
分ちゃんは理事長先生を推薦、かぁ…
うぅーん…でもなぁ、アルト君と一緒に遊んだりダンジョン言ったりしたかったんだけどなぁ…
【アルトもカフィーユも誘えばいい。】
…ついてきて塔にこもるのも一緒にしてくれるとでも?
【聞いてみたらどうだ?】
まぁ聞く方が早い気もするけどね
なーんて脳内会議(分ちゃんとお話し)をしていたら、理事長先生が再び泣き出しそうにしているのに気付かなかった
「わ、私の塔は嫌かね?すばらしい、魔法や魔道具を、頑張って生み出しているぞ?」
「先生、大丈夫です」
「この子も認めてくれていますよ!」
再びボロボロと泣き出してしまった理事長先生…
御免ね、無視した形になって。ただ脳内で魔法とお話ししてただけなんだ
「ねぇ、ルールウド君」
「?なに、どうしたの?」
「…どうしたらいいんだろう」
「うーん、理事長先生は情緒不安定で繊細だから、これが日常だよ。」
「そっか…」
「うん」
理事長先生がこんなに不安定で、大丈夫なのか、この学園…
うーん…そうだなぁ…
「…理事長先生のチームって何を主にしてるんですか?」
「わ、私の目をかけているチームでは錬術から魔術、魔道具、調合なんでもやるぞ!この学園内で薬を買えるのは私の功績あっての者なのだ!」
ちょっとわかりにくいが、それってどういうこと?
何でもやるってのはわかるがその次の、学園内で薬がうんぬんってなに?
どういうこと?新薬研究してるからってこと?
「えっと、薬品とかポーションとか、魔道具とか、そういうのを作って、売店とか工房に卸したりして、時には新しい商品を作る、学園の金策面で貢献してます」
お、おう…生徒がフォローしてくれたからなんとなくわかった
「確かに、一寸俺向きかも知れない」
俺がそういうとルールウド君が困ったように眉を顰めた
否定しきれない、と思っているのかもしれない
「よし、じゃあこうしよう。」
「?」
「ルールウド君、俺今日一日ヒマなんだよね?」
「そうだね。一日、と言わず、学園内でチームが決まるまでヒマになるね」
「俺これから一週間ずつ、各チームに行って体験してもいい?」
分からないのは、話を聞くだけで何とか決めようなんてしているからだろ!
もうぶっちゃけ手紙攻撃もうんざりだし、先生たちがもうアピールもうざいし
何より、体験してチームがどんなのか、見てみないとわかんないと思うんだ
「体験…?」
「そう。お試し期間をしたいんだ。だって話聞くだけだとよくわかんないし、皆都合のいいことしか言わないでしょ?」
「うん…そうだね」
「だから、試しに一周間や2週間、順番にチームを回ってどんなことをしてるかみたいの。」
俺がそういうとルールウド君も頷いてくれた
生徒会長さんは何も言わず、顎に手を当てて考えている
「で、肝心なのはここからなんだけどさ」
「?」
「カフィーユ君とアルト君も、一緒にチームを見て回りたいんだよね」
「……成程ね、二人も一緒に体験するって事か…」
「その順番を決めるのは先生たちがくじ引きで決めてくれないかな。そしたら不公平とか文句とかでないでしょう?」
「…どうかな」
俺がそこまで言うとルールウド君的には好感触、生徒会長さんは考え中でわかんないけど、シェンフ君はそうした方がいいと納得しているようだった
牧野さんは傍観なのか、にこにこしているし、リッツ君の飼い主とリッツ君はそれでもよさそうな感じがするから、好感触、かな?
「一週間、ずっとそのチームにいるからアルト君やカフィーユ君にも意見を聞いて、体験して、それから決めたいと思うの。…どうかな」
「…まずはその話をみんなに持ち帰って貰って、先生を通してアルト君とカフィーユ君に聞いてみないとね」
「ですよねー」
俺が言うとルールウド君が苦笑して個人的には良いと思うと付け足してくれた
「話し合う必要や順番決めたり、他の人たちに話したりする必要があるよね。」
「そうだね」
「体験させたい事もカフィーユ君達に合わせて安全に、尚且つ俺が入りたいと思うようなものにする必要あるよね」
「確かにね」
「俺明日の準備と明日武器を鍛造するから、その間に決めておいてくれると嬉しいな。」
俺がそういうと生徒会長さんが頷いて了承を得た
「そうだね。じゃあいったんこの話をみんな各先生やチームメイトたちにしに行こうか。ルールウド君、悪いのだけれども君はショージ君の部屋で待機していて欲しい。何しだすかわからないしね。」
「はい、わかりました」
俺は何しでかすかわからない、ですと?
失礼な!オコだぞ!
俺がムス、としたのがわかったのかシェンフ君がフォローを入れた
「今のは、ショージ君の事じゃなくて他の上級生…言ってしまえば外部のスパイが、っていう意味だよ?だからそんな顔をしなくていいよ」
「俺はどうせ何するかわかんないですよーだ」
「自覚はあるんだね」
シェンフ君がそういうとルールウド君は笑った
むっとしたのでルールウド君には影の手でわしゃーっと撫でてやった
「わ、ちょっと、急に影の手を使わないでよ」
「笑ったのが悪いんだよ」
ルールウド君とじゃれていると話を自分たちのチームを押している各先生たちに持っていくために、全員が出て行った
理事長先生も、チームの人たちや校長先生たちと話すために出て行ってしまい、俺とキューリャさんとルールウド君とマクスェルさんだけが残った
「やっとこれで自由になれる―!手紙攻撃から解放される―!やっふー!」
俺がグググーっと背伸びをして腕を高く上にあげ伸ばしているとルールウド君が苦笑した
「入学してそうそうに教頭先生に目を付けられたようなもんだからね、同情するよ…」
「猫被んなくていいけどあの人一々行動が雑い。あとやり方がえげつないとこがちょっと苦手なんだよなー…なにもルールウド君を俺の教室に寄越さなくてもいいじゃないか…」
「…否定はしないよ。」
ルールウド君もそう思っているのかやはりそこは苦笑一つこぼすだけで何も言わなかった
今日一日ヒマになってしまったので俺は教科書を片手にルールウド君に教えて貰う事にした
「明日の準備は良いの?」
「うん、今日一日ヒマになったから、午前中は勉強、午後から準備にしたいの。」
「そっか。じゃあ何から始める?」
「闇属性の魔法、基礎編から!」
「はいはい。」
闇属性魔法の専門教科書を開き、影を操る魔法、ブラックアウトのように自分の近くの人にまで影響を与える範囲指定魔法を応用したちょっとした初級の中でも使えることの多い魔法などを教本片手に、時折実践してみたりしながら勉強しました
鐘が鳴ったのを聞いて他の科目に切り替え、今度は火属性の魔法の初級編を学び、鐘がなったのを聞いて授業の様に合間、合間に飲み物なんかを飲みつつ休んで勉強した
魔法を覚えるのは楽しい
例えできなくとも、不適正属性というハンデがあっても知らない魔法を教本から学ぶのは面白かった
そして礼儀作法の時はマクスェルさんが直々に教えてくれた
多少、魔法の勉強より気合い入れないとお仕置きが怖いとか思ってしまったのは俺だけじゃないと言い張りたい…
魔法を武器に(俺の場合使用しないことを条件に)付与させるやり方を頑張っているとコンコンとノックの音がした
キューリャさんとマクスェルさんが扉の方へ行きキューリャさんが誰何を訪ねるとステフィム先生だと名乗った
分ちゃんに念のため聞いてみると本物だと言う事で頷いて通して貰った
扉の先にいたのはステフィム先生となんと…カフィーユ君とアルト君だった
カフィーユ君はわかるけど、アルト君は別のクラスだから、凄く驚いた
「どうしたんですか、先生」
俺がそう尋ねるとステフィム先生はため息を飲み込み、青白い顔をしてお腹を摩りながらも俺が今朝言った、チーム体験をするという一大イベント(?)が、何処からか漏れ出てしまいその詳細さえも何処からか伝わっており、2時限目からアルト君とカフィーユ君が勧誘されまくり上級生が二人のクラスに押し入ったり、魔法をかけようとしてきたり、先生が二人を守るのが授業中でもお構いなしの上級生たちのアピールによって困難になったり、他の教科の先生たちも悪乗りしてカフィーユ君やアルト君を誘ったり、なんか…
はい、ごめんなさい
ご迷惑をおかけしました
「ショージ様は大変人気者ですねー」
カフィーユ君がぐったりしながら、そういった
アルト君は、苦笑が引きつっているようだった
「ごめんね?」
俺がそういうとアルト君は励ましてくれたけれどもなんだかその励ましの声に力は籠っていなかった
「ショージ様がいなくなった分、僕達に勧誘の話がドサッと来ちゃったので、僕達も休んでいいですか…後、チームに関するそういうのはちゃんと話通してくれないと困りますよ」
「先生を通して話をしてもらおうとしていたんだ」
「あぁ、職員室では教頭先生や理事長先生が張り切ってチーム体験すると言う話をしていて、ちゃんと伝わりましたよ…不本意な、形でね。全部の先生が、ね。しってしまいましたよ?僕たちに話が通る前に、ね。」
「………あー、えーと…迷惑かけてごめんね」
俺が直接迷惑かけたわけじゃないが間接的に迷惑かけてしまったのでそういうと二人は苦笑して、首を緩く振った
何処か、疲れているようだった
ステフィム先生がややぐったりしながらも今日一日二人をここに居させるよう言ってきた
「いいですけど…自室にいた方がいいんじゃないんですか」
「一か所にいてくれた方が、色々と都合がいいとアルト様の担任が言ったので。」
「アハイ」
俺が苦笑をするとカフィーユ君がソファーに座った
「なんだか、今日は沢山疲れました」
「僕もです…」
アルト君もぐったりしているので俺はソファーを進めて二人にグリーン茶を入れてあげた
そしたらアルト君が一口口を付けて思い切り苦々しい顔をして口を押えた
あぁ、アルト君の口には合わなかったか
俺が紅茶を魔法で出してあげるとすぐさまそっちを飲んでほっとした表情になった
良かれと思った、グリーン茶だったが俺も好きじゃないので仲間を見つけた感じでほっこりした
「グリーン茶はお気に召さなかった?」
「薬を思い出して、ちょっと…ショージ君の作ってくれた、あの薬を使う頃は点滴だったけど最初の方なんかは飲み薬だったからね…」
「あ、ごめん!そうだよね、一寸薬っぽかったね」
「そんなに気にしなくていいけどね、もう直ったから!ふふふ。ショージ君のおかげで助かったんだもの、そんな顔しないで。」
けたけたと明るく笑い飛ばすアルト君に、不思議そうな顔をしているカフィーユ君だった
とりあえず、そのまま俺の部屋で夜までいることになったので俺はテンションが上がる
上げざるを得ない!本を数冊出してきて、一緒に読もうと言うとステフィム先生も驚き目を丸くしてから微笑んだ
「読書がお好きなんですね、ショージさま。」
「知らないことを知るのは楽しいですから!」
「さようですか。どうかお二人に危害のなきよう、派手な事をなさらない程度に、お願いいたしますね。」
ステフィム先生がそう注意しているが俺はそんなに“やらかし”ているというのだろうか
色々と予想外の事をしているっていうのは若干、心当たりがあるけどさぁ…
そこまで警戒することなくね?地味に傷つくのですがねえ…
ひっそりと俺が落ち込んでいるとにっこり笑ったルールウド君が慰めにもならない言葉をかけてきた
「派手じゃなかったらいいって。よかったね」
……うんルールウドくん、そうじゃない…
俺が文句をため息とともに飲み込み、そのまま本を三人と読んでいたらステフィム先生がまるでそうしていたなら何も問題ない生徒なのに、とでも言いたそうにため息をつき、俺の部屋から一礼して出て行ってしまった
「ところで、お昼食べたあと俺部屋で一寸色々としたい事があるんだけど…」
具体的には武器を作る為の、環境をちょっと…簡単にだが作っておきたいのだが、と思っているとアルト君は気にしなくていいからそれをしてもいいと言い、カフィーユ君も頷いたので結局準備段階から他人にじっくりと見られると言うね…
俺の作る物なんか大したものじゃないしその準備だってたいそうな物じゃないんだけどなぁ…そんなの見て面白いのだろうか?
数十分後、ゆったり本を読んでいたらカフィーユ君は飽きてしまったのか、教本を片手に自主勉強をしだした
それを横目に色々と本を読み進めていると、コンコンとノックの音がして、誰かが訪ねてきたようだった
キューリャさんが誰何を訊ねるとルネア君だったみたいで、心配してくれて様子を見に来てくれたみたいだった
なんて優しい子なんだろう、と思ったけれども一応念のために分ちゃんにルネア君は本人で、更に操られたりしてないかというのを聞いてから通した
扉が開いてルネア君とルネア君の従者さんを部屋に通してあげた
ルネア君が俺とカフィーユ君を見てほっとした表情になったが、次にアルト君を見て首を傾げた
ああ、アルト君とルネア君はあったことなかったっけ?
「ルネア君どうしたの?」
「あぁ、えっと、お昼をお誘いに…。」
「お昼はここで食べる事にしようと思っていたけど…」
「は、はい、だからあの…これ、売店で買ってきたのです、ご一緒しませんか?」
そう言ってルネア君は従者さんに持たせている大き目のバスケットを2つ持ってきた
バスケットの中にはたくさんの食べ物が入っていた
美味しそうな食べ物だったが、魔族の食事というよりはどちらかというと人間でも大丈夫そうな食べ物中心でパンやサラダ、フルーツにさらにジャムまであった
美味しそうなので早速皆でいただいた
うーん、確かに美味しいんだけど、こう…あっさりしている物ばかり食べるとガッツリ肉とか魚とか食べたくなるよな…ラーメンとか、うどんとか、餃子とか…
まぁ、いいけどね、此れも悪くないし、美味しいんだから…
うん、文句は…無いよ?本当だよ?
…味噌汁飲みたい…肉じゃがとかみそ漬けとか…
日本食、和食!中華!プリーズ!
生姜焼き…肉…なーんて事を考えながらももそもそとサラダを頬張っているとポン、と薄いスライスされた肉とショウガ、玉ねぎ、焼き肉のたれ(醤油味)さらに鍋が出てきた
わーい…と喜ぶ前に、ルールウド君がデコピンを喰らわせてきた
痛い…
「ショージ様、これは一体…?」
「なんでしょう、これ…見たところ、変な形です」
あぁ異世界の物だから知るはずもないよね
でも生肉(薄くスライスされてるロース肉)を物珍しそうにまじまじと見ている三人
肉をそんなに見ても勝手に変化しないぞ?…腐るかも知れないけれど、一応肉は皿に乗っていて、紙に包まれている
「ショージ、魔法を使って食べ物だすのは禁止って言ったでしょう?」
「つ、つい…」
「つい考えたの?」
「うん…」
ルールウド君はハァ、と大きくため息ついてこめかみを押さえた
だって食べたいと思ったんだもの、仕方がないじゃあないか
「それでこの物はなんなの」
「食材だよー?」
「調理の仕方は知っているの」
「なんとなく…。でも分ちゃんいるし、聞きながらがんばる!」
「調理するんだね…。」
ルールウド君が呆れたのを隠しもしないでまた溜息をついた
そのまま何も言わずにいるから許可されたと思って部屋の中の広いキッチンへ行き、魔石を使ったガスコンロみたいな火を出す魔法道具だったりするものを起動してそのまま鍋を火にかけた
その後は分ちゃんに習いながら調理して、なんと生姜焼きのでっきあがりー
いぇーい!
お肉とたれの焼ける香ばしい香りに、同級生やアルト君だけでなくルールウド君もちらっと覗いて来ている
ふふふ、良い匂いだものね、誘われちゃうよね!
なんて思いつつも俺は生姜焼きと、更にもう一品、今度はお味噌汁を作った
「おいわかめと豆腐だろ」
「うるせー、俺はこっちの方が好きなの!大根と油揚げ一択だね!」
「んだよ、そこはわかめと豆腐だろー?」
「…ん?なんでコントロルがいるの」
おみそ汁の具を勝手にお前好みにするな、と振り向いてみるとそこにはコントロル君がその場で俺の手元をのぞき込んでいた
しかも自然と会話してきたから振り向くまで違和感に気づかなかった
よくみるとコントロル君以外にもソルシエ君とシェンフ君、キキョウさんがキッチンの入り口にそわそわしている様子で佇んでいた
……食べたいのか?
「なー、昇次、生姜焼き俺にもくれ」
「えー…」
「なんだよ、けちけちすんなよ。ちょっと位良いだろ」
「じゃ金払えよ。」
「おぅ、いくらだよ」
即答かよ、適当にそういえばあきらめると思っての言葉だったのに、即答で金払うから作れと言われてしまった…ま、いいけどね
そこまで言われたら作るしかないけどね




