ミーシェちゃんにも友達出来たみたいです
パチンコがおもちゃだと知ったとたんに他の生徒たちの目が輝き顔に自分もやってみたい、と書かれているかのようだった
しかしすでに先生が言った教室に戻る時間だし、なによりスミレが空腹なのか、さっきから耳元でやたらと抗議しているので早く教室に戻ろう
「教室戻りましょうか」
「ですね。今日は楽しかったです」
「ねー、ショージ様明日も投げる奴をかして下さい」
「いいですよー、ただし先生に聞いてからにしましょう」
「わかりました」
教室まで略一本道なのでまっすぐに歩いていると向こうから制服を着た同じような背丈の子供達がまばらに歩いて着て、先程俺達が出てきたところへと向かっていくのが見えた
多分、上級生だろうと思われる
「「あ」」
ルールウドくんに会ってしまった
俺はルールウドくんに頭を気持ち程度に下げて挨拶した
「ふふ、ショージも無事に入学したんだね。どう?お友達出来そうかい?」
「たぶん?まだ初日だから憶えないといけないこと沢山ありそう。」
「学園だもの。そりゃあるよ。」
ふふふ、とルールウドくんが笑って俺も釣られて笑った
もう少し話していたかったけれど、俺はキューリャさんにルールウドくんはマクスェルさんに肩を叩かれてしまい、残念ながらも先を急ぐことになってしまった
「あぁ、もう行かないと授業に遅れる。またね、ショージ。」
「うん、またね!」
二人してそう言って別れると俺はすぐに話を聞きたそうにしているクラスメイトの中へ、ルールウドくんは俺と話すため立ち止まっていたルールウドくんを待っていた友達だろう子供の所へと足早に進んだ
「ショージ様、先程の方がお兄様なのですか?」
「そうですよ?ルールウド兄様ですよ」
俺がいつも通りに【くん】と着けて呼ぶことがないように気を付けて(一応貴族だし、兄は立てておきたいよね、立場をちゃんと明確に分かるよう呼び方もそれなりに注意しないと)いうと後ろで転んだ音がした
振り返るとルールウドくんが転んでいた
・・・めったに呼ばないけれども何度か兄様と呼んだことはあるのに、未だになれないのかも知れない
俺が駆け寄るとルールウドくんが苦笑して起き上がった
「大丈夫?」
「きゅ、急にショージが兄様って言うから驚いたじゃない。」
「お・・僕なりに気を付けてみたんだよ。ルールウドくんが兄なのは変わらないしね?」
「はは、まぁ貴族的には正しい、って分かっているけれどさぁ・・・全く、なんの前触れもなくいうものだから思わず転んじゃったよ」
「痛いところ無い?」
「ないよ、心配してくれてありがとう。」
一通り怪我がないか確認してから今度こそ別れて急いで教室まで戻った
なにげに皆待っていてくれて、驚いたけれども簡単なことでまだ皆自分達だけで教室までの移動が出来る自信がないのだそうだ
教室へと移動した後は慌てて従者さん達の指示に従って自室へと移動した
俺と、ルネアくんと、カフィーユくんはキューリャさんが案内してくれつつもエレベーター(板)に乗って自室に続く廊下まで移動した
自室についたらカフィーユくんが照れながらもまた明日と言ってくれたのでにこやかに二人して挨拶した
部屋に着くなりスミレがニャーニャーと一層激しくなき出したので仕方ないからかりかりを出してあげた
床に皿を出すとシュタッと飛び降りて座ってがつがつと口一杯にかりかりを頬張りだした
「スミレ~、そんなにがっつくとのど詰まるよー」
『ふみゅっけほ、けほ!にゃふ、ふみゃ!』
「言ったそばから噎せているし・・・ほらミルク飲みな?」
俺が違う皿にミルクを入れてスミレに上げるとすぐにスミレは両前足で皿を抱え込み、ぐぐっと一気飲みした
・・・そんなことも出来るようになったんだね、スミレ・・まるで杯を煽っているかのようだよ
俺も喉が渇いたから冷蔵庫から飲み物を取り出そうとして俺が視線を冷蔵庫へ向けただけでキューリャさんが冷蔵庫から瓶入りの水をグラスに注いだ物を用意してくれていた
「どうぞ、喉が渇きますよね」
「あ、ありがとうございます」
水を飲むと水の中にフルーツが入っていたらしく、果物の香りが仄かにした
美味しい、甘かったので思わず貰ったばかりのコップ一杯の水を全部飲んでしまった
キューリャさんがお代わりを入れようかと言ってくれたのでもう一杯入れて貰った
暢気に水を飲んでいたらコンコンとノックの音がしたのでキューリャさんが扉の方へいって出た
恐らく、ステフィム先生がちゃんと俺がいるか確認しに尋ねてきたのだろうと思っているとやはりステフィム先生だったらしく、キューリャさんが先生の言葉だろうと思われる質問をしてきた
「ステフィム先生でした、昼食はどうなさいますか?とのことです」
「どうと言われても・・・」
「食堂と、部屋でとるか、それとも私が作るか」
「え、キューリャさん作れるの?!」
何それ初めて知った、と言う顔をしたら頷かれた
なんだと・・・俺は知らなかった・・・
「こ、今回は食堂でとりたいなぁ。どこにあるんだっけ」
「少々お待ち下さい。ステフィム先生に伝えて参ります」
キューリャさんがそう言って扉の方へいき、食堂で食べるというと5分後に迎えに来るから待っていろと言うことを丁寧にいってきた
聞こえているけどね
そのまま隣の部屋へ行ったのが気配で分かった
隣・・・先生の向かった方の部屋は、カフィーユくんの方だ
多分俺とキューリャさんの時と同じ事を聞きに行くのだろう
少ししたら再び俺の部屋へやって来たのを感じた
ノックがされたのでキューリャさんが先に扉の方へ行き、開けて出て俺もそれに続いたら廊下には先生以外誰も居なかった
「ルネア様とカフィーユ様は従者様の方でご用意された物で済ませるそうです。」
「そうなんですか。」
「では食堂の方へ案内しましょう。こちらです」
俺少しだけ勇気出して食堂選んだんだけどなぁ・・・
だって魔族って詰まり虫とか食べるじゃん!(ドラゴニア家日常での食事光景を思い出して下さい)
俺あれが魔族の普通だと思っているからね、そのゲテモノだらけでも食事を取ろうとして勇気出して友人の一人や二人出来ると思って、行くと応えたんだから!
まさか部屋の隣室の子達両方行かないとは思ってなかったから凄く疎外感感じるんですけど・・・はぁ、せめて誰かクラスメイトの一人くらいは居て欲しいな
そんな淡い期待があったときも数分前にはありました
結果から言うとクラスメイトは0で、俺以外恐らく皆上級生の方々ばかりで俺は凄く緊張した中での食事となってしまった
唯一の救いで食堂は男女一緒だったのか、ミーシェちゃんの姿があったこと位だ
「ショージお兄ちゃん!」
「あ、ミーシェちゃん」
ミーシェちゃんは俺より先に俺を見つけたみたいで、文字通りに飛んできた
俺が片手を上げるとミーシェちゃんは俺の前に降りてきて、ハグをしてきた
・・・・・・・・・・・・・・・・
キューリャさんとステフィム先生、さらには女性の何人かの生徒、職員、従者さん達が頭を抱えたり、目を見開いたり、額に手を当てているのですがミーシェちゃんは動じていないようです
「ミーシェちゃん、女性が自分から飛んでくるのはよくないよ」
「ミーシェ、頑張ったの!イイコイイコして?」
「ミーシェちゃん、ここは学校だよ」
「だってここでしかミーシェショージお兄ちゃんと居られないよ?」
「ここはご飯を食べるところだよ。飛んだりはしゃいだら駄目だよ。」
俺が言い聞かせるようにそう言うとミーシェちゃんはションボリして謝った
よし、なんとか第一関門は通過したな・・・次はハグをしないよう言い聞かせないと
「ミーシェちゃん、ぎゅってするのは皆の見てないところじゃないと困っちゃうな」
「ショージお兄ちゃんぎゅってされるの苦手?」
「うん、我が儘言うようだけど、こう言う他の人が居るところでしないで貰って良い?・・・えーと、ほら、気絶したら困るでしょ?」
「わかった!他の人が居ないところでぎゅってするのはいい?」
「・・・出来れば、腕とかだけの方が良いなぁ」
龍の力って子供でも油断出来ないとき在るんだよね・・・
ミーシェちゃんに言い聞かせるように言ったらミーシェちゃんはそれも頷いてくれた
よし、第二関門もクリアだ
「ミーシェちゃん友達できそう?」
「うん!ミーシェねぇ、お紅茶入れるテストとぉ、刺繍とぉ、お花を押し花にする授業したの!そしたらね、ミーシェの隣の席の子が、上手く出来なかったところ教えてくれたの」
「そう。よかった」
なにげにミーシェちゃんも何とかお友達が出来そうで、良かった
俺がホッとしているとミーシェちゃんが俺に一寸待つように言って今度は走ってどこかへと行ってしまった
なにげにちゃんと飛ぶのは駄目と言ったのが理解出来ている用で、安心した
少ししたらまた走ってきて、今度は両手に知らない女の子を連れてきた
ミーシェちゃんが右手で手を握っている女の子を俺の前に差し出すように立たせて見せて紹介した
「あのね、こっちの緑色の子が、シュリちゃん」
「え、あ、ちょ、は、初めマシてっ!?」
急だから混乱しているのか、少しどもって声が裏返っている、緑の髪の女の子
ミーシェちゃんはお構いなしに、左手で手を握っている黒髪の兎の耳が頭に生えている女の子を俺の前に立たせた
「で、こっちの子がクランリーちゃんね!」
「いってぇな、急に掴むんじゃねぇよミーシェ」
・・・お嬢様お坊ちゃまばかりの学校で凄い言葉を聞いた気がする
兎耳の女の子が俺をじろじろと目踏みするように見てから一言
「うわ、ひょろっちぃ如何にもお坊ちゃまって感じだなー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺とキューリャさんは思わず言葉を失った
周りの人達も、生徒である子供達も従者さん達も、先生でさえも言葉を失った
「く、クランリーさん、それは、えと、あの、こ、この方は一応ミーシェ様のお兄様だそうですし、ドラゴニア第二皇子・・・」
「はああ?こんな白くてもやしなのに、皇子?あ、まぁそうかミーシェが皇女だっけ。」
「あ、あの、あの!あの、あまり失礼な事言わない・・・方が・・・」
「だーいじょうぶだって!な、皇子さん?」
そう言って兎耳の子は俺の肩をバシバシ遠慮無しに叩いてきた
これにはキューリャさんも目を見開いて口まで開けている
キューリャさんがこんなに驚いている姿なんて見たことない
「ふふふ、ミーシェちゃんのお友達は面白いね」
「お、ほらいいってよ」
「ふふふ、キューリャさんがこんなに驚いたところ始めてみた」
「クラちゃんショージお兄ちゃんと仲良くできそう?」
「まぁそうだなー、私こんなんだから、上品なの苦手だし、ミーシェにもため口だけどそれでもいいってんなら別に仲良くしてもいいぜ?」
ミーシェちゃんも凄い個性的なお友達ができたみたいだね
俺のほうのクラスメイト達はみんなこの子の言うお上品な感じの、いかにも貴族のご子息っていう雰囲気の子たちばかりだからな…と思っているとミーシェちゃんを教えているであろう、別れた時にミーシェちゃんを案内した女性の先生が頭を押さえてやってきた
「ドラゴニア皇女様、ロジェット様!」
「げ!」
「きゃ、みつかっちゃった!」
「見つかるも何もないよね…(汗)」
先生に軽くお叱りを貰っているミーシェちゃんとクランリーちゃんは、馬耳東風という表情で聞く耳を持っていなさそうだった
先生も呆れながらも次食堂で騒いだらしばらく食堂に立ち入り禁止と言い切った
それを聞いた二人は思い切り嫌そうな顔をしたし、ミーシェちゃんは俺の方を見てしょんぼりして大人しくしていると言う事を言った
クランリーちゃんが渋々といった表情で唇を尖らせてお座成りにはいはいと返事をしたのを見て女性の先生が大きなため息をついた
「ミーシェちゃん、ご飯にしようか。」
「うん!スミレちゃんのご飯は?」
「スミレはもう食べたんだよ。」
「えー…じゃあおやつ!おやつあげたい!」
『みゃーも食べたいにゃ!』
ミーシェちゃんに便乗してか、スミレが目を輝かせておやつ、おやつとせがんだ
つい先程までスミレご飯食べていただろ、明らかに食べ過ぎになってしまうからな!
おやつはまだ駄目です
「駄目!」
「えぇー!」
『みゃああ…』
二人してがっかりしたようだったが、俺は飼い主として調整してあげないといけないのだ
悪いな、スミレ
などというやり取りをして席に着き、キューリャさんとクーナちゃんにメニューを貰って好きなもの、食べたいものを選ぶよう言われた
ドキドキしながらも人間用、もしくは何かフルーツとか、無難な物がありますようにと思いつつメニューを見ると人間用のメニューにしてくれたのかと思うほど…俺向きだった
「これ、どんなものなんですか」
「そちらのものは淡水魚の、ソテーにしたものとなっております。」
「じゃ、これはどういうものですか」
「硬いパンを切りその上に甘い果物や木の実、野菜などをのせたものです」
キューリャさんがスラスラと答えてくれるのでついついメニューの目についた文字を指して聞いてしまう
中でも美味しそう、と思った物を欲しいと言うとキューリャさんが頷き注文したものを取ってくるから待っているように言われた
お、おう、何でもかんでもやってもらうっていうのになんか悪い気がしてくるなぁ、とは思うものの、よく見ると周りの従者さんたちも同じように主人らしき子供に欲しいものを聞きそれを取りに行っている姿が見える
クーナちゃんもミーシェちゃんに何がいいかを聞いて、取りに行った
ミーシェちゃんの友達の二人もミーシェちゃんの隣の席へ座り、自分の従者さんに当たり前のように注文をした
成程、従者さんに頼むのがここでは日常なのかと納得してしまう程に皆平然としている
まさに貴族というものは人を使い慣れないといけないのだな、と思った
が、学園にいる中だけでも、何とか慣れないといけないだろう
「なぁ、なんでミーシェの兄ちゃんそんな人間のもの食ってんだ?毒だろ、それ」
「み、ミーシェちゃんのお兄様は、魔族の中でも耐性がある方なんでしょうか」
「ショージおにいちゃんはねー、元人間さんなの。」
「「は?」」
あぁ、ミーシェちゃん、こんな所でそんなことを言ったりしたら…
…し、視線が…っ周りからの異端を見るような視線が…無いか気になる
俺がただでさえ“ドラゴン族のあり得ない男児2人目”というどこから来たのか気になるような物なのに、そこに来て“元人間”と言う事をばらすという所業をやらかしてくれたおかげで周りの魔族からの、“貴族(しかも王族)に取り入った子供”という何とも言えない蔑んだ様な視線がどこからともなくしてくる
「え、えーと…も、元人間、なのですか?」
「そうだよー?でもねー、ミーシェとルー兄さまにすごい魔法を見せてくれる自慢なお兄ちゃんなの!だってね、光魔法使えるシー、お薬作れるし、よく飛ぶ石を的に当てたりハーピー一人で退治できるんだよ!」
「ま、魔物退治が一人でできるのですか」
あれ今度は一気に褒め殺しされてないか、これ
しかも先程まで“蔑んだ目”で見てきている視線が多かったのに、“光魔法が使える”と言った途端にがらりと雰囲気が変わった
なんか、先程とは違う意味で痛い視線になった気がする
こう…なんというか針のむしろにいる、気がする
急に、“光魔法が使えるならば仲間に入れておこう”的な視線とそれをさせまいとしているような、我先に知り合って名前を覚えて貰おう的な視線が…周りから感じられる
先程は敵対的な視線が多かったのに、コロッと視線が変わった気がする
はっきり言ってしまえば、不快だと言う事には変わりないのだが、ここまでハッキリとした掌返しはいっそ清々しいなとすら思えるのは、俺が日本人だからだろうか…
「光魔法って灯りつくだけだろ?」
「か、回復もできると聞きますよ?」
「そうなの!ショージお兄ちゃんはねー、光魔法で痛い所をあっという間に治すのよ!」
「へ~」
ミーシェちゃんの雑談に聞き耳を立てているのは紳士淑女候補であるご子息、ご令嬢としてはどうなのだろう…
そう思いつつもミーシェちゃんが俺の事を誉めまくるのを頑張って聞かないようにしながらもキューリャさんとクーナちゃんがご飯を持ってきてくれるのを待っていた
~数十分後~
キューリャさんが持ってきてくれた食事はとてもおいしかったし、デザートとしてフルーツまでもつけて持ってきてくれたのがとても嬉しかった
さっぱりしたフルーツ系は、なぜかハーフエルフになってから凄く食べたくなるものだったので、気遣いが嬉しかった
食事をとった後は自由時間なので先生が自室にいるも、ここに残っているのも好きにしていいと言ってくれたのでミーシェちゃんが嬉々として俺と校庭で遊びたいと言い出した
あまりいい顔をされなかったら、数十分ならと許可を得た
俺はミーシェちゃんとクランリーちゃん達と校庭へ出た
校庭は東京ドームで例えたくなるほど広く、端のほうが見えない位には、広大に見えた
…3、4歳児の体格からしてみれば、何処でもそう見えるのかもしれないがそれ位広い所だったと言う事だ
中身のほうが一応7歳になったとはいえ、体格が成長をあまりしないためかちょっとしたものでも大きく、高く見えるんだよね
だから校庭が実際にはどのくらいの大きさなのかはわからないけれど子供には大きく感じられる、と言う位の広さなのだと思った
俺とミーシェちゃん達が校庭に出るとほかのご子息、ご令嬢様方が静かに遊んでいるのが見えた
遊んでいると言っても、校庭で走り回っている姿は一つもなく、散歩して雑談に興じている姿や、精霊たちらしき動物たちと戯れている、なんとも優雅な遊び方だった
俺はミーシェちゃんにせがまれてこれからパチンコ遊びをしようとしているのだけれども…何だろうか、この場違いな感じは
中には馬に乗ってみたりしている子息様もいる
うーん、優雅だねぇ…こんな中で本当にパチンコとかやってもいいものだろうか…
「ショージお兄ちゃん、打つ奴やりたい!」
「うーん…他の子たちに当たらないように気を付ける?」
「うん!」
「じゃ、的に当てっこしようか。的作るから、あててね」
「うん、頑張る!」
俺がパチンコとゴム玉、的を作るとシュリちゃんが目を大きく見開き驚いた
クランリーちゃんも大きく口を開けて凄い、凄いと連呼していた
ミーシェちゃんに最初この魔法を見せた時と同じ反応をしていたので思わず笑いがこみあげてくるのを必死にかみ殺して微笑みを浮かべるだけに留めた
「ミーシェどうやって遊ぶんだ、それ!」
「これねー、ひもの真ん中に石とかどんぐりとか、この球を入れてからひもを引っ張るの!見てて!」
ミーシェちゃんが町の子供たちにお手本を見せるかのように、若干得意そうになりながらもゴム玉をパチンコにセットして的に向かって放った
ヒュンと金切り音を響かせてまっすぐに的へと向かっていくゴム玉
的に当たり、パンっとはじけて中に入っている水彩絵の具が的に撒けられる
「すげぇええええええええ!なんだそれ、なんだそれ!!!みたことねえ!やらせて、やらせて!」
「いいよー!はい!」
「ここにそのちっさいのを入れればいいんだな?」
「そうだよ!」
クランリーちゃんとシェリーちゃんが二人してミーシェちゃんにパチンコの遊び方を習い、そして遊んだ
…周りにいた子供たちも、見たことがないであろう玩具に、次第に興味が湧いてきたらしく、見に集まってきた
ゴム玉が的に当たり、ミーシェちゃんのゴム玉が弾けるたびに歓声が上がる
「なぁ、ミーシェの兄ちゃん、なんでミーシェのだけ色がついてんだよ。あたいのは何で色なしなんだ」
「あ、わ、私も気になり、マス」
「なんで・・って…ミーシェちゃんのは的に当たると、威力がゴム玉の耐久値を超えるから壊れて、中に入っているインクが漏れてるだけだよ」
「「「…?」」」
しまった、子供達にはちょっと難しかったか…
簡単にいう言い方…さてどう言ったらわかりやすいだろう
俺がそう思っていると後ろ、校舎の方から
「的に向かって球が強く当たって中身が出ているらしいよ。」
「「へぇえええ!」」
「そ、そうなんですか…」
俺の代わりに、説明してくれる人がいてよかった、と振り返るとそこに居たのはなんとアルト君だった
「アルト君!元気そうだね!」
「うん、君のおかげでね!」
俺がついついアルト君の方へ駆け寄るとアルト君は待っていてくれた
顔色もあの頃薬を取りに行く前に会った時とは比べ物にならない位に血色よくなっている
アルト君は俺よりもずっと年上なのに病院生活しか送ったことの無い少年だ
それがまさか学園≪ここ≫で再開できるなんて思ってもいなかった
「君の作ってくれた薬のおかげですっかり完治して、不治の病が治ったと病院中の先生が君の薬を自分たちで作れないかと毎日研究しているよ」
「俺が全部やったわけじゃないし、薬草の事を教えてくれたのはスミレだよ。」
『にゃー!もっともっと感謝するにゃ!』
「フフフ、それでもスミレちゃんとショージ君には命を助けて貰えたから、いくら感謝しても、し足りないよ」
「そんなことないよ。ね、スミレ?」
『みゃー』
俺がスミレの顎の下を掻いてあげるとゴロゴロと喉を鳴らした
ふふふ、スミレが見えないだろうアルト君が不思議そうに、俺の方を見ている
傍目から見たら俺はどう映っているのかは謎だが、とても愉快なことをしているのだろう
実際は猫の姿であるスミレが肩に乗っているから顎を掻いているだけなんだけれどね!
アルト君が俺の手元を見てパチンコを不思議そうに見てきた
「よかったらやってみる?」
「いいの?やらせてもらっても。」
「いいよ。はい。」
俺がパチンコを渡すとミーシェちゃん達のやり方を見ていたらしく、すぐに的へとゴム玉を飛ばして見せた
すごくまっすぐに飛び、的のど真ん中に当たった
一発でそこに当てられるとは、中々やるな、アルト君
「すごい、真ん中に当たったね!ショージお兄ちゃん、アルトお兄ちゃん凄いね!」
「うん、真ん中にいきなり当てるとはやるねぇ」
「たまたまだよ、たぶん。ミーシェちゃん達のやっている姿を見ていたしね」
「それでもすごいと思うよ」
アルト君は結構嬉しそうに頬を掻きながらも微笑んでいる
若干照れくさそうなのが微笑ましい
アルト君とミーシェちゃんが仲良くそのままパチンコを遊びだした
所でアルト君が学園にいる理由を聞いていないのだけれど…まぁ退院して、元気になったから学園に通いだしたということだろうか
想像するだけ、で結論付ける訳にはいかないだろうけれども多分そういう事なんだろうと思う
アルト君とミーシェちゃんが競い合うようにパチンコで的当てをしているがクランリーちゃんとシェリーちゃんはその間ぼうっとしながら二人を見ている
俺がパチンコすると的を壊しちゃうので俺がパチンコをすること自体は駄目だけれども二人に遊ばないのかと話しかけてみるとアルト君がミーシェちゃんとどういう関係なのかを聞かれてしまった
「アルト君は俺…僕が一時期入院していた時にできた友達なんだ。そこから仲良しになったんだよ」
「そ、そうなんですかぁ」
「誰とでも仲良くなれんのな、ミーシェは。」
「そうだね、君達とも仲良しになれたみたいで、安心したよ。」
俺がそういうと二人は照れたように微笑んだり、二カリと笑ったりした
クランリーちゃんが俺の袖を引いて、もっと面白い遊びはないのかとかもっと遊べるものを出せとか言ってきた
ギャラリーの貴族の子供たちに危ないような影響を与えない、危害を加えないでいて安心安全なおもちゃ…何かあるかな…アァ、水鉄砲とかならどうだろう
でも濡れたら怒られるかな
うーん、縄跳びとかどうかな
一人用の縄跳びじゃなくて長縄跳び
…でもあれかあまり出しすぎてはいけないと先生に言われているので、止しておこうかな
うん、やはりここはブーメランでも出してあげよう
無難に、安全だからね
俺がブーメランを出すと目を輝かせてクランリーちゃんが俺の手からブーメランを取った
「なんだこれ、翼みたいな変な形してるな!」
「うん、変な形、です。これはどういうものなのですか?」
「遠くに投げて遊ぶものだよ」
俺が実際に遊んでみせると、食い入るように見る二人
俺は出来るだけ遠くに投げて、ブーメランが木になっていた一度ブーメランの翼の部分で果物の茎を切り、そのまま俺の手元へ戻ってくる時に果物らしき物を持ってきた
「はい、これは下手に投げない限りは手元に戻ってくるから。」
「面白そう!」
「む、難しそうですね」
シェリーちゃんが酷くやってみたそうにしながらも、今一上手く出来なさそうだと言うような不安に思っている表情だったので簡単だと言い聞かせてもう一度やって見せた
勿論新しくブーメランを作り出して、飛ばして見せてからシェリーちゃんにあげるとクランリーちゃんが一緒に飛ばそうと言って的を俺に出すように言ってきた
的を出してあげるとそれに向かって投げるが、うまく投げられずに地面に落っこちるブーメランに、周りの子供たちが愉快そうに笑ったり、どういう仕組みなのか話し合ったりしていた
その内周りの見学している子供たちにも俺に玩具を貸してほしい、とかよこせとか言っている声がちらほらと聞こえるようになった
俺がしかたなく作り出しながらも皆してブーメランやパチンコを遊んだ
「なぁミーシェの兄ちゃん、兄ちゃんはやらねぇの、これ」
そう言ってパチンコを差し出してきたから俺はいいというとなんでやらないんだと文句を言って、さらに周りで見ている子供たちも巻き込んで“みたい”というコールをしだした
俺がゴム玉をセットしてクランリーちゃんが期待しているような視線をビシビシとむけるので渋々的に向かってゴム紐を引き絞る
暫くしてステフィム先生が飛んでくるかのように急いで走ってきた
「ショージさま!ショージさまはそれをやってはいけませんよ!」
「あぁ、よかった、この距離だと危険ですよね。」
「ショージさまはっ、距離とか、っ関係なく、はーはー…ゲホゲホっそれを使わないでください。はぁ…ぜー…ぜー…」
俺は無言で先生に光魔法を使い、体力回復する光をまとわせてあげた
するとあっという間に疲労がとれたのか、目を大きく開き、次には平然と俺に説教というか注意というか、話をしてきた
「なるべくショージさまご自身がそれをするのはお控えください」
「俺もそ…僕もそう思いますが、周りの方々が期待していらっしゃるようでしたので。」
「絶対に、おやめください」
俺は頷いたが周りの、特にクランリーちゃんが不満そうにしていた
うーん、どうしたらいいものかと思っていたらミーシェちゃんが意外なことに止めといた方がいいと賛成してくれた
「なんでだよ、ミーシェ」
「だってショージお兄ちゃん、パチンコでハーピー倒せるんだよ。」
「こんなので魔物が倒せるのか?」
「そうだよ、ハーピーの頭やおなか、石で穴をあけるんだよ!」
ステフィム先生がおなかを押さえている
胃が痛そうだったのでそっと俺は胃薬にもなる薬をさしだしてあげた
安心してください先生、俺自身ももうやろうとは思っていません
こんな目立つ様なところで的を粉砕するような事をやるなんて思ってもいません
俺がそう言ってあげると先生は安心してくれたみたいだった
その後再三俺にはパチンコを使わないようにと注意をして、もう自室に戻るようにと言ってきた
もう少しだけ、アルト君と遊んでいたい所だけれども、先生が言うのなら仕方ない
「ミーシェちゃん、食堂の方に戻るよ?」
「あ、はーい!アルトお兄ちゃんも一緒に行く?」
「うん、じゃあ一緒に行こうかな。ショージ君とも話したいしね」
食堂に行く間、アルト君に学園に来た経緯を聞いたら予想していた事と近かったみたいだ
アルト君の完全回復した後は通院に切り替えて月一に病院で診てもらう以外には外でやりたい事をやれるようになったので、家族と買い物行ったり、一緒に過ごしたり、医者のお兄さんと雑談したり、俺の送った手紙を一緒に読んだりしていて、俺がそろそろ学園に入る事をしり、ご両親に相談して一緒に学園に行けるようにしてもらったらしい
それができると言う事はアルト君のおうちもそれなりに経済的な余裕がおありなようです
アルト君も俺と同じ今年入学したと言っても、俺のクラスにはいなかったよなぁ…??
と思っていたらアルト君のクラスはBクラスで、俺のクラスはAクラスという、単純にクラスが違うだけだったという話だ
単純と言ったけれどもこの学園の中でのクラスが別というのは貴族の位が違いすぎると言う事だそうで、よほどのことがないとクラスが変わること自体はない模様…
せっかくアルト君と同じ学園に通えるというのに、そこだけはちょっと残念だなぁ
ま、クラスが違う位だったら俺かアルト君が会いに行けばいい話だけどね
俺が会いに行って、アルト君と遊んだりすればいいだけの話だし、簡単だね
その後は食堂へ行ってアルト君とパチンコを使いだした時の話やら、レシェルナさんに薬を作り方とか色々と習った話をしたりした
アルト君はにこにこととても楽しそうに聞いていてくれた
「ショージ君は学園に来る前に色々とやってるんだね…」
「うん!でも学園にも来てみたかったんだ。だってルールウド君が学園に入っているからいろいろと楽しそうだって聞いていて、楽しみだったんだ!ね、ミーシェちゃん?」
「うん!お友達もできるかもってワクワクしてたの!」
俺とミーシェちゃんを微笑ましそうに見るアルト君がミーシェちゃんを撫でた
先生に再三言われて、自室に戻ることになったので残念そうにしているミーシェちゃんとその友達の二人に手を振り別れた後にアルト君とともに廊下を歩き、エレベーター(板)の中で別れた
アルト君の方が一階だけ下だった
俺が3階だとすると2階で降りた(注意;俺の自室があるのは3階ではありませんこれはたとえ話です)という感じだった
余談かもしれないが俺はこの入り組んでいる学園の中で迷子にならない自信がないのでキューリャさんにしっかり付いていこう、そう思った
エレベーター板の使い方は簡単なんだけどね
魔力をちょろっと流しながら行きたい階層のボタンをタッチすれば良いだけなんだけれども、その行きたい階層が分からないからねー
自室にキューリャさんと入るとスルっと首元からスミレが離れてスタリと降り立った
どうしたんだろうかと思っていたらキャットウォークへするりと登って、その先にある紙袋の中に入ってゴロゴロと喉を鳴らしだした
…ただ紙袋の中に入りたかっただけか、なぁんだ
スミレがくつろいでいるのでキューリャさんも好きにしていいですよと言って、俺は本を抱えて本を読みますとアピールしてソファーにゆったりと腰かけた
キューリャさんは一言、畏まりましたと言って扉の近くにある、【従者室】と書かれたプレートのかかっている一室に入っていった
その前に何かあったら遠慮なく声をかけてくださいと言って頭を下げていったので俺も頷いた後、紅茶を魔法で出して俺はのんびり読書をしていた




