ドキドキ、初めての調合(強制)
・・・
・・
・
~5時間後~
ごぽごぽと音を立てて片手鍋のような小柄な鍋の中で赤紫色の液体が煮えている
これは、ドラゴンシードの殻を割って中身が白かったのを砕いて、蜂蜜と精霊の涙と呼ばれる水溶液を4滴入れて中火でとろとろになるまで熱したらそこに竜胆のしずくを半分
ゆっくりかき混ぜながら入れていき、ローエンからスミレに獲ってきてもらった薬草を半分に分けておいて、半分のみを絞った汁を入れて煮込んでいる状態だ
赤紫色なんだけど、これ本当に失敗してないのかと思うだろう、レシェルナさんが作っている段階でもこうなっていたから失敗じゃないと分かるけれども最初はこれやっぱり失敗した?と思って、慌てて材料を新たに獲ってくる必要があるかを聞いた
・・・ニコニコと微笑まれて、大丈夫だ、これが途中段階だと言われたけれど俺はこれを薬として飲めるのかと不安になった
「後は、弱火でじっくり3時間煮詰めて、残りのローレア草を刻んだ物を、上に被せるようにおいていけば完成よ」
「まだ時間掛かるんですね」
「そうよぉ?さ、上に行ってお菓子でも食べて待っていましょう?」
「え、火を付けたままで良いんですか?」
火事とかになりそうだけれど、それは良いのかと不安になった
だってここはエルフの里で、ツリーハウスやログハウスが大きな木に乗っている家が多いし、レシェルナさんの屋敷もログハウスなのだ
火を付けっぱなしで大丈夫だろうか・・・との思いがにじみ出ていたのだろうか、
ふふふと笑ってレシェルナさんは机の上にいる可愛いネズミたちを指した
「火の精霊さんが面倒を見てくれるから大丈夫よ?」
「え?あ、このネズミも精霊だったんですか」
「そうよ。火の精霊さんがネズミさんなのよ。」
ネズミなのに、小さなバンダナみたいな布を頭に巻いているし、可愛くベストを着込んでティースプーンをもって運んでいたのは、確かに気になってはいたけれどまさかの精霊だったと言う新事実だ
「えー・・・と、君達に後は任せても良い?」
俺は恐る恐る聞いてみると赤いバンダナを巻いているネズミが俺の目の前まできて二本足で立ち上がり任せろと言った
ネズミ差別では無いが、ネズミに火が・・・操れるのだろうか
火の中に飛び込んでいきそうで怖いな・・・大丈夫なんだろうか・・・
『ちゅーちゅー!大丈夫、心配ないでチュ!こうするでチュ!』
ネズミはそう言って、くるりとその場で回る
そうするとネズミは小さい小人になった
うわ、小さい!ネズミサイズの小人だ
可愛いなこれは・・・って、そうじゃないだろ!この大きさだったら結局火の中に入るかも知れないのは解決していないだろ!
『これなら大丈夫でチュー!』
「火、危なくない?」
『ちゅ?』
「あらあら、ショージちゃん精霊さんは自分の得意な属性の魔法や精霊術では元気になるけれど怪我とかはしないわよ?火の精霊さんだからこのネズミさんは燃えないの。」
「あ、そうなんですか」
『『『ちゅー!火の番は任せるでチュー!』』』
ざざっとネズミが隊列を作り戦隊ものみたいに横に並び嬉しそうに敬礼した
可愛い、だがネズミだ
可愛い、だがネズミと小人だ
可愛いんだけれど、可愛いんだけれど・・・っっっっ!
小さすぎて不安になるんだけど!だってこのネズミと小人、今の俺の中指くらいしかないんだ、それは心配しても仕方ないだろ!
『小さくても精霊でチュー!任せろでチュー!』
「そうよ、じゃ、よろしくお願いするわね」
『『『『ちゅー!』』』』
小さなネズミたちは片手鍋の周りに集まり、どこからか梯子を出してきて片手鍋の縁にかけてそこら辺から板を何人か(何匹かでも良いのかな?でも一応人扱いしとこう)で担いで持って来た
そしてかけ声を出し合ってネズミたちより大きな木べらを液体の中に入れて、一生懸命にぐるぐるとかき回しだした
・・・可愛いぞ、この精霊達・・・しかも賢いちゃんと鍋の底からかき回せている
ずっと見ていたい気もするけれどレシェルナさんに呼ばれて俺は渋々その場を離れた
何だが小さい頃に呼んだことのあるぐりとぐらみたいな感じで見ていて飽きなかった
俺がレシェルナさんの方へ追いつくと待っていてくれたレシェルナさんは、透明なガラスのフラスコのような物を複数並べてその中に色んな物を説明しながらもいれていった
そして一冊の本を渡してきて、それらを使い勉強した
ビスケットもだしてくれたので本を見てレシェルナさんの説明とフラスコの中身を実際に見ながらビスケットを食べた
ビスケットと紅茶が美味しいな、と思っていたらここには来てないはずの柴犬の子犬がやって来て俺の足下に来た
『わんわん!』
「あら、珍しく貴方がここに降りてくるなんて・・・どうしたの?」
『わふ!僕もビスケット欲しいわん!』
「ふふ、上にも沢山あったでしょう?」
ミーシェちゃん達のいた階にいたはずの子犬くんが尻尾を振ってお座りしながらもレシェルナさんの手に握られているビスケットを見ているし、よだれを出しつつ食べたそうにしていた
可愛いので思わず撫でた
『くぅーん・・・きゅーん・・・駄目?』
「いいわよ?ショージちゃんの手からもらう?」
『わんわん!ちょーだい!ちょーだい!』
「はい、どうぞ」
『わん!』
子犬が俺の差し出したビスケットを俺の手を噛まないように気を付けながらも食べて尻尾を振って喜んでくれた
よしよしと褒めてあげると嬉しそうに尻尾がかなりの速度でぶんぶんと振られた
あぁ、犬も可愛いなぁ・・・猫も嫌いじゃないが犬も好きなんだよなぁ
『わふ!』
『ショージ、浮気は駄目ニャよ』
子犬のことを撫でながら考え事をしていたら、スミレまでもがどこからかやって来て俺と子犬の間に無理矢理入ってきた
君達は一体何処からやって来たんだ、とか思わなくもないが、精霊なので床や壁などの障害物はあってないような物なのだろう
「浮気じゃないよ、人聞きの悪い事言わないでよ」
『みゃーもかまうにゃ!にゃーの方が一杯可愛いニャ!』
「そ、そうだね?ほらスミレもビスケットやるから」
『にゃう!』
ぱくっと俺の指事スミレがビスケットをかじるが、それほど痛くなかったので我慢したらぺろぺろと歯が当たったところをなめられた
何だろうか、飼い猫に他の猫と戯れて帰宅すると焼き餅を焼かれた、内の子可愛い、と言っている飼い主みたいな気分になってきた
うん、嫉妬しているスミレが可愛い
犬は犬、猫は猫でそれぞれ可愛いんだけれどな・・・
スミレは子犬にフーッと威嚇して尻尾を膨らませた
しかし子犬の方は首を傾げて不思議そうにスミレを見ていた
『ショージと契約したの、みゃーなのみゃ!』
『わふ?』
『ふーーーー!!!!』
確か召喚したときの精霊は他の精霊とは仲良くなれないので契約することが出来ない
一人一体までなら従えることが出来ると本にあったな・・・
成る程、こう言う事か・・・
「あらあら、ふふふ。ショージちゃんモテモテね」
『わん、遊んじゃ駄目なの?』
『遊ぶくらいにゃらいいにゃ・・・けどショージはスミレのニャ!契約は駄目にゃ!』
『僕はレシェと契約してるわん』
『ニャ?!・・・にゃう、にゃらいいにゃ』
スミレは何か納得したのか、はふんと大きな溜息をついて脱力したみたいでぺったりと床に突っ伏した
俺が手を伸ばすとスミレは嬉しそうに膝に乗ってきた、が、子犬も御手をしてきた
おお、御手が出来るのか、この子犬
御手が出来ると言うことは詰まり教え込んだんだろうか
しかし御手をしたことで内のスミレがまた不機嫌になったらしくじーっと子犬の方を警戒しているかのように見ている
俺は仕方ないのでスミレを撫でてあげた
「スミレ、イイコだから仲良くしてあげような?」
『ニャぅ・・・ショージは、みゃーのにゃ!』
「そうだね、俺が召喚したのはスミレだけだよ」
『浮気しちゃ嫌にゃ!』
「してないってば。後言い方・・・(汗)浮気って・・・」
『にゃう!』
スミレが俺の体にすりすりと自分の体をすりつけてまるで自分の所有物にマーキングするかのようにすりすりしてきた
俺はスミレのしたいようにさせてあげて大人しくしていた
抵抗したらスミレが可哀想だしね
一通りすりすりして気が済んだらしく、膝の上に丸まったスミレが子犬に対して馬鹿にしたように鼻を鳴らした
うーん・・・そこまで敵意をむき出しにしなくてもスミレは一応俺の召喚した精霊だし家族みたいな物なのになぁ
微笑ましそうに見ているレシェルナさんは目を細めてそのやり取りを見ているが止められるならなるべく止めて欲しかった
可愛いけれど、すりすりされてくすぐったかった
「ふふふ、さて、そろそろお薬作りに戻りましょうね。ささ、上に行って頂戴。」
『にゃーい!ミーシェと遊んでくるにゃ!』
『わふわふ!』
二体の精霊がスウッと姿を消して恐らくミーシェちゃん達のいる階へといってしまった
俺とレシェルナさんはその後また万能薬を同じように何度も作って見たり、他の薬を作ったりした
この部屋に入ってから大体一日経ち、数々の薬が綺麗な小瓶に詰められた
万能薬事エリクシェードという薬は赤紫色をしていたというのに、今では綺麗な透き通るアメジスト色をしている
このエリクシェードは点滴に混ぜると体内の石を排除できるし徐々に体力も治してくれる薬だそうだ
また、飲んでも大丈夫な薬でありとあらゆる病気や大怪我を治せる薬だそうだ
まさに万能薬
エルクシェード=エリクシルと思ってくれて良さそうだ
因みに、死亡してもこれを死因の怪我とか箇所にかければ蘇生も出来るそうです
流石の万能薬・・・死者蘇生も出来る物があると言うのは知っていたけれどまさかその薬を自分が作れると思わなかった
・・・まぁレシェルナさんが丁寧に教えてくれたから何とかなったのだけれど、まさか作れるとは思わなかったよ
「これでショージちゃんのお友達も病気が治るわよ」
「ありがとうございます、レシェルナさん」
「お祖母ちゃん、って呼んでくれないと寂しいわぁ」
俺は思わず固まってしまった
だってエルフママさんも若く見えるけれど、レシェルナさんも結構若く見えるんだもの・・・
とてもお婆さんというような見た目をしていない
そもそも俺とレシェルナさん達は血縁関係では無い訳で・・・
「え、でも」
「お祖母ちゃん、頑張って教えたのになぁ~」
「え、でもおれ」
「お祖母ちゃんって呼んでくれたら嬉しいのになぁ?」
じわじわと圧力じみた物を感じながらも結局呼ぶまで手を放してくれなかった
仕方がないので小声で言うとそれだけでも嬉しそうにしてくれたのだが俺的には言わされた感がしてそれで良いのかと疑問だった
その他色んな薬をもらって上のミーシェちゃん達のいる階に向かうとそこにはなんとエルフママさんとドラゴンパパさんがいた
「あら、ママショージと一緒にいるのは構わないけど長すぎよ。」
「あらあらふふふ。ショージちゃんと一緒に調合してただけよぉ?」
「下に行ってから一日たっちゃったじゃない。折角追いついたのにぃ」
「孫独り占めにしたくらい良いじゃない」
「むぅ。私だってショージちゃんと遊びに行ったことないのにぃ」
「フフフ、良いじゃない、何時でも一緒に遊びに来れば。」
「あら、それもそうね。」
・・・・・・・・・・えーと、これは一体・・・何事?と思わず呆けていた俺はドラゴンパパさんに頭をわしっと掴まれてぐりっと回された事で首を軽く痛めた
「ぐえ」
「ショージ!病院から抜け出すとはどういうことだか話を聞かせて貰おうかな?」
「あは、ハハハ・・・・・・・ごめんなさい」
やべぇドラゴンパパさん怒ってる?!これ滅茶苦茶怒られる奴?!と俺が内心ビクビクしているといきなりボキボキっといきそうな勢いで抱きつかれた
首と背骨が痛いので直ちに病院送りになりそうです、助けて頂けないでしょうか
「あははは、良くやった!良くやったゾショージ!」
「と、父さんショージが折れるよ!」
「ショージお兄ちゃん大丈夫?!」
「む、すまんすまん」
いだい・・・背中痛い・・・もう少しルールウドくんが止めるのが遅かったら俺はきっと再び病院へ送り返されるところだっただろう
ドラゴンパパさん、何かテンションが上がるとスキンシップ増える傾向があるな・・・
そのスキンシップは背骨を折りそうな勢いで、しかもかなり強くて元人間である俺にはキッツいんだけれど・・・これは言っても一年間変わらなかったことから考えるともう諦めるのが早いよね・・・(遠目)
何とかドラゴンパパさんの腕から救出された俺は背中を押さえつつも何で俺が褒められたのかが理解出来ずに困惑した
「えーと、なんで褒められたんでしょうか・・・怒られるかと思ったンですが・・・」
「怒られるのは後でたっぷり味わうだろうからな!」
「怒られるのは、分かっているのですが・・・何故褒められているのか分からないのですが」
「あぁ私も良く退屈な勉強や仕事を部屋から逃げ出しサボったからな!流石は俺の息子だと思ってな!しかも病院は監視が大変だろう?フフフ、監視の目が厳しく抜け出すのが難しいほど燃えるよな!わかる、わかるぞ!」
・・・・・・・
ドラゴンパパさんの後ろで頭を抱えている執事さん二名が何だかお腹を押さえているけれど大丈夫だろうか
胃薬とかないか・・・あったわ。
俺が習った薬で一緒に作った薬の中に内臓系の薬があったわ
俺は薬瓶をとりだして、レシェルナさんにこれ胃薬としても使えるかと聞いたら使えるしストレス性の胃痛にも効くと言ってくれたので執事さん二人に薬をあげた
「あの、これあげます」
「「え」」
「これさっき作ったお薬なんです。胃に効くってレシェルナさんが言ってくれたから」
「お祖母ちゃん、でしょう?」
「あ、えっとお祖母ちゃんに、教わって作ったから効能は多分大丈夫ですよ。どうぞ」
「「・・・ありがとうございます、ショージ様」」
俺が薬瓶を上げるとルールウドくんとミーシェちゃんが二人して頬を膨らませた
あぁ、そんなところはそっくりだなって思っていたら何故かエルフママさんとドラゴンパパさんもむすっとして執事さん二人をねたましそうに半目で見てきた
・・・何か俺不味い事をしたのだろうか?
「えっと、なんか変なことしたかな?」
「・・・狡い、僕に一番最初にくれると思ってたのに・・・」
「ミーシェも~!ショージお兄ちゃんが初めて作ったお薬、ミーシェも欲しい!」
「えぇ?」
困ったな・・・薬は薬だからなぁ
そうぽんぽん上げて良い物でもないだろうし、気軽に使って貰える様な物じゃないから・・・
と言うかその言葉を聞いて何故にドラゴンパパさんとエルフママさんまで頷いているんでしょうかねぇ・・・薬だぞ?しかも胃薬・・・良いのか、そんなので・・・
俺が困惑を隠せないでいるとドラゴングランパさんが突然何の前触れもなくお腹を押さえて呻きだした
「ぐあ、あーいたい!いたたた!(棒)いたいなー」
「?!」
「あー、いたい、いたい私にも孫の作った薬が必要だー、うーいたた(棒)」
「・・・貴様、先程までぴんぴんしていたではないか、卑怯だぞ」
「何のことだ、私は唯腹が急に痛くなっただけだ。」
あー・・・ドラゴングランマさんもあまりに唐突なことで呆れ半分、驚き半分でドラゴングランパさんを見ている・・えーと、これは俺どうしたら良いんだろうか・・・
困惑しておろおろしているとトーマスさんが助け船を出してくれた
「ショージくん、ここにいる全員分に、栄養補助する薬効のお薬を作ってくれませんか?それならば、甘くて子供の魔族にも飲みやすいし、失敗もない。それに、薬の中で一番平用事に飲んでも副作用がなくて、安心出来る薬です。それなら、そちらの方達に上げた薬と一緒に飲んでも薬同士で悪さはしないから。」
「そうね、それがいいわ。簡単な物だから、一時間と掛からないわ。一寸作ってきましょう?」
「!あ、はい。」
俺が頷くとトーマスさんが微笑みを浮かべて先程まで作った薬瓶を預かっていてくれると言ってくれた
良かった、この世界でも栄養ドリンクみたいな薬があるって事で良いのかな?
しかも簡単に作れるなら、そんなに強く効くような物じゃないよね
そう思いながらレシェルナさんと再び調合室にいきネズミ君達と戯れつつレシェルナさんに教わりながら薬を作った
・・・
・・
・
煮えている鍋にレシェルナさんの言うとおりによく分からない葉っぱを磨り潰してこしたものを数滴加えて切るように大きくざっくりとかき回す
その上に、クルミみたいな木の実を砕いたものを入れてそこに紫色のサラッとしている液体を入れる
「所でショージちゃんは、この世界にくる前、幾つだったなったのかしら」
「22歳です。一応人間で田舎の会社員してました」
「まぁ・・・そんなに若いとご両親も悲しまれたでしょうに・・・」
「多分、そうだと思います・・・」
作りながら雑談としてかレシェルナさんが俺の前の世界でのことを聞いてきたので答えた
何だか悲しそうな表情で、同情してくれるレシェルナさんだが、まぁあそこで轢死していなかったら俺はここに来られていなかっただろうから・・・俺としては何とも言えない
それに100歳未満でなくなるって事はレシェルナさんにとっては本当に子供のうちに亡くなったような物だろうし、複雑だろうな
俺もそのことを考えたら多少、両親に申し訳なくなる・・・
でもだからと言って戻れる訳でもないのでこの世界で何とか生きていくしか無いとは思って開き直っているんだけれどね
俺は話題を変えようと思って、ルールウドくんを初め、ドラゴニアの屋敷にいる人達には優しくして貰っているからありがたく思っていると言う事を伝えた
そしたらレシェルナさんが微笑んで、抱きついていた
な、鍋がまだ火、付いてるから危ないのでやめてもらいたいのですが?!
「貴方も、幼いのにこんな事になって・・・私の事は本物のお祖母ちゃんと思ってくれて何でも言って良いのよ?まずは私の出来ることをしてあげましょう。いろんな調合を沢山教えてあげるわね。」
「っむぐ」
レシェルナさんに抱きつかれ、頭を何度も撫でられる
まるで本当に子供のような扱いに、凄く微妙な感情です
そしてその後レシェルナさんが沢山の調合のことが書かれている本を棚から引っ張り出してきたり、ネズミの精霊さん達が小さい手で作業をしているのを眺めていたりして、1時間後には25本もの瓶に入った大量の栄養ドリンクみたいな薬を作り出した
まぁ片手鍋で子供の俺でも何とかかき回せるくらいの底の浅い鍋だけれども、レシェルナさんと一緒に作ったので量はそれなりにある
鍋から小瓶にゆっくり注いでいたら途方もなく瓶の数が多くなってしまったのだ
「・・・一寸多くないですか?」
「二人で作るとどうしても多くなったんだもの。それにこれはあって困るような物じゃないわ。これに色々と他の物を付け足して他の薬にすることもあるのよ。」
「へぇー、って事はこれが元の水薬でいくつか派生していくんですかぁ」
「そうなのよ。ね、ショージちゃんお薬作るのって面白いでしょう?」
「そうですね。便利そうですし」
結構作るのが難しそうとか最初は思っていたけれど料理が出来る人ならば今の所割と簡単にできるような物だった
唯分量を量り材料を加熱しつつ混ぜたり、皮を剥いたり切ったり、すりつぶしたりと、本当に料理を作っているような感覚だった
料理もそんなにキライじゃないので今の所苦手意識はないかな
「良かったらお祖母ちゃんがいくらでも教えてあげるわよ~。」
「んー・・・でも俺まだちっちゃいからそんなにかき混ぜたり出来無いんですけど」
「一緒にやってあげるから大丈夫よ。」
「それなら教わりたいです。作るの面白いし」
レシェルナさんは凄く嬉しそうに笑って俺の頭を撫でてきた
俺は照れくさいので少し止めて欲しいのだが大人しくしていた
そしたらレシェルナさんが色んな物をそこら中から出して机の上が物であふれかえった
・・・本当に何を、何のために使うんだろうか見た目だけではさっぱり分からない
俺は手元にある綺麗な赤みがかったオレンジ色をしたちいさな菱形の・・・なんだろ、これ
えー・・・と、豆粒?ビー玉?小豆?あ、やや大きめな米粒くらいの菱形がたくさん入った小瓶を透かしてみるようにのぞき見た
「あら、それはね、綺麗だけれどそのままだと食べられないのよ?」
「食べ物なんですか」
「ふふ、食べ物ですよ~?大人向けの食べ物になるのよ」
「・・・大人向けって、人間だと食べられないですか?」
エルフさん達の大人って確か結構年とらないといけないよね?
それは人間には無理なのでは・・・と思って首を傾げたらレシェルナさんはふふふと笑うだけで何も応えなかった
単純に応えられなかったのだろうか?フロストエルフの特徴を考えたら他種族の事情は分からないはずだし、一寸意地の悪い質問だっただろうか
「人間さんの事はどうだか分からないのだけれど、たまに人間さんの商人さんもかっていくことはあるわよ。ショージちゃんはもうハーフエルフなのだから、きっと大きくなったら食べられるようになるわよ」
「あー、自分入院する以前までは人間だったから、ハーフエルフ?とかになったとかの自覚ないんですよね・・・耳もおくさ・・・おかあさんのように、尖ってないし・・・」
一瞬奥さんと言おうとしたらレシェルナさんがじーっと見てきたので言い直した
何だろう、凄く目を開いて口元だけで笑われると怖い、きがする
美人は怒ると怖いとは良く聞くけれど、少しだけそこまで怒らなくても、とも思う・・・
否、確かにレシェルナさんからしてみたら俺は子供の子供だし孫で良いかもしれないけれど、俺としては何とも言えないんだよなぁ・・・他人、と言うには一年も色々とお世話になっているし、家族とははっきり言い切って良いのか戸惑うし・・・
それに俺自身、奥さんと呼ぶので半分定着させてしまいかけているというのもある
「ショージちゃん、エフィールのこと奥さんなんて呼んじゃ、駄目よ。」
「ぅ・・・でも」
「貴方のお母さんでしょ?この世界の中で一番力になってくれるのは好きな人でも友人でも恋人でもない、家族なのよ」
「・・・・・ご、ごめんなさい」
「私の事をお祖母ちゃんと呼ぶのも同時に、馴れていかなきゃ駄目よ。」
「・・・はい」
俺は頷くまでレシェルナさんに目を覗き込まれると言う何とも気不味いことをされた
目を逸らそうとすると、さらに咎められた
・・・俺は結局、ネズミの精霊さんに出来たよと教えて貰うまで解放して貰えなかった
最後にもう一度レシェルナさんに謝って、結局許して貰った
「ショージちゃん、そのオレンジ色のはね、強いお酒に漬けて食べるのよぉ?だから、子供には食べられないのよ?」
「そ、そうなんですか」
「そうよ。でもね、それを使って中級の気付け薬が出来るの。混乱とか錯乱した魔族に効くのよ?他にも気絶した人にも効くの。」
「へぇ」
気付け薬・・・なるほど、これはそういう風になるのかぁ、なんて思いながらも見ていたらクスクスと笑われてしまった
そんなに変だっただろうか
前の世界ではこんなのなかったから珍しかっただけなんだが・・・
俺が首を傾げるとレシェルナさんは菱形の入った瓶を開けて米粒よりは大きくおはじきよりは小さい菱形の物を掌に10粒以上出した
コロコロと掌に出したが瓶を開けたときからつんときつい酒の匂いに、俺は眉をひそめた
確かに、強い酒に漬けた物のようだ
子供の体では無くてもこれはきついとおもう
元々そんなに酒に強くない俺としては大人になったとしてもお世辞でも好きになれそうにないと思ってしまうような匂いだった
生前の酒でこのきついにおいが近い酒を言うと一番近いのはウォッカかな
何か匂いだけでももういい、と遠慮したくなるような、あの感じだ
思わず顔を逸らすとレシェルナさんがほら先程言ったとおり子供にはきついでしょと言い足そうに微笑んできたので俺は無言で頷いた
そしてレシェルナさんはそのまま菱形の何かを乳鉢に入れてすり棒ですり潰すとそこに一寸だけ赤い葡萄のような実を一粒いれ混ぜるように潰した
そのペースト状にした何かを違う皿に移して、そこに緑色のどろどろした物を一滴垂らしいれて、湯煎しながらもかき混ぜた
ネズミの精霊が焦げないように火加減してくれたおかげでほどよく温まったお湯が出来ていたのか、レシェルナさんに褒められていた
ネズミたちは誇らしげにチューチュー鳴いて、ちょこまかと机の上で火を出しつつ水を温めているのを見て、可愛いとか思ってほっこりしてしまった
そして出来た何かの液体は、ドス黒いものだったのだがレシェルナさんが作りすぎた栄養ドリンクもどきの薬を一瓶分入れるとぽん、と音を立てて綺麗な金色のしゅわしゅわした発泡している液体になった
何だろう、見た目からしてその・・・ビールに見える
違うんだろうけれど、何となく、先程のアルコール臭と、今の金色、発泡している見た目
そして何よりも・・・その泡が白くて液体の上の辺りに留まっていると言うあからさまにこれビールだろと言いたくなるような、泡の出方
恐る恐るにおいを嗅いでみたらアルコール臭はばっちり残っていた
これ薬じゃねぇ
確定で、ビールもどきだ
菱形の何かと、葡萄もどき、更に緑色のどろどろした何か、そこに栄養ドリンクみたいな薬をくわえただけという訳の分からない材料で何故にビールが・・・
え、これお酒だよね?そりゃ子供は駄目だよな
なんせお酒を子供が飲むと色々と悪影響を受けると言うからな
「ふふ、ショージちゃんはまだ子供だからこの薬は早かったかしらね。子供でも大怪我をしたとき意識を失うから、これを使うときもあるのよ。憶えておいて損はないと思うのだけれど・・・ふふ、まだ幼児体だから焦らなくても良いわね。」
「後で、さっきの薬の作り方も教えてくれますか?」
「いいわよぉ?お祖母ちゃんは何時でもショージちゃんに教えてあげるわぁ。」
レシェルナさんが笑顔でそんなことを言いつつビールもどきを牛乳瓶に入れてコルクをして棚に置いていった
その作業を4回ほど繰り返してビールもどきを瓶に入れ終わると栄養ドリンクみたいな薬を籠に入れて上の階へと戻った




