友人を兄妹に紹介
俺達はベンチに一人分のスペースを空けてあげてアルトくんをベンチへ座らせるとアルトくんは何だか億劫そうに座った
・・・昨日まではそんなでもなかったのに、座るだけでもとても億劫そうだ
「昨日より悪くなった?」
「ううん。唯、昨日の夜に、足首が痛み出したから、兄さんに相談して包帯巻いて貰ったンだ。ほんの一寸痛むだけだから湿布薬で良いといったのだけれど一寸、過保護なまでに固定されて、オマケにこんなに包帯巻かれちゃった」
アルトくんは平気だと言うけれどそれにしては随分と包帯がしっかり膝下まで巻かれているようだから、多分石がその包帯の下のどこかにあるのだろう
石を簡単には取り除くことは出来ないのだと言うから・・・一時的に隠したと言う事だろう
俺は包帯をした足にはそれ以上触れない様にして、皆を軽く紹介をすることにした
「アルトくん、こっちがルールウドくんで、こっちがミーシェちゃん」
「ルールウドくんが、お兄さん?」
「うん、そう。ミーシェちゃんは妹、になるかな」
「そっか。僕はこの病院に長期入院してる、アルトって言います。よろしく」
「手紙で聞いているよ。よければこれからもうちの弟と仲良くしてあげて欲しいな。」
「アルトお兄さんよろしくね~」
ミーシェちゃんが笑顔でアルトくんに挨拶したらスミレもみぃ~と一鳴きした
まるでミーシェちゃんとルールウドくんを宜しくと言っているかのように鳴いた
スミレは俺等の保護者気取りなのかな?若干偉そうに鳴く物だから少しだけかりかりのグレードを下げようと決めた
ルールウドくんが、メニーさん達の紹介をするとメニーさん達は一人ずつ頭をキチンと下げて自己紹介を軽くした
「メニーと申します。以後お見知りおき下さいますよう」
「ジョアンです。一応執事してまーす!つっても姉さんにいつも怒られてるけどね」
「・・・少し口が過ぎますよ、ジョアン」
「ぅ、またグーは勘弁して」
咄嗟に自分の頭、特に先程たんこぶを作ったばかりの部分を抑えてしゃがみ込んだジョアンさんに対してメニーさんが目を鋭くして睨みつける
流石にすぐこの場で叱り出さないだけ優しさが滲んでいると思うことにしておこう
「愉快そうな人達だね。」
「うん。メニーさんは優秀なメイドさんで、僕とミーシェちゃんの精霊術の先生なんだ」
「へぇ、そうなんだ」
キューリャさんも紹介したいんだけれど、キューリャさんは透明になったままだった
俺は仕方なく、もう一人いるんだけれど照れ屋さんだからと言ってアルトくんにキューリャさんの名前と光魔法を使えるドラゴンの子供の執事さんもいるとだけ紹介しておいた
「そのキューリャさんというのはとても恥ずかしがり屋さんなんだね。今もいるの?」
「うん、でも魔法で姿が見えなくなっているみたい。」
「相当恥ずかしがり屋なんだね。ショージくんと沢山あっていたらいつか一緒にあってくれるかな・・・?」
「うん、多分」
その後はミーシェちゃんとジョアンさんが二人してまたノートに絵を描き出して、僕とアルトくんはルールウドくんに学校の話や外の話を聞いた
学校というか学園は結構大きくて敷地内でどんなことがあるかとか、敷地内にある施設環境とかを話してくれた
しばらく話を聞いていたが、アルトくんのお兄さんらしき青年が白いローブに身を包んだ男性が西棟の方から来てアルトくんを呼んだ
アルトくんが振り返るとすぐにその青年を見てやはり青年のことを兄と呼んだのであっていたようだ
「あ、にいさん。」
「アルト、足の検査をしておこう。検査用の魔導具の予約が取れたぞ」
「・・・分かった、今行くよ。じゃあね、ショージくん」
「また午後にね」
「!うん、また午後にね!」
午後にここに来るとは限らないが午後に中庭に来たらまた相手して雑談してあげようと思いながらも別れた
ゆっくりと歩いて行くアルトくんのそばに駆け寄って一緒に西棟の方へ行くお兄さんの背中を見送った
「ショージ様」
「?!」
どこからかキューリャさんの声がしてまた驚いてしまったが、今度はすぐに姿を見えるようにしてくれていたので、そんなに驚かなかった
キューリャさんはメニーさんの後ろに控えるようにして立っていた
「キューちゃんどうしたの?」
「・・・残念ながら、先程の方は午後、中庭には来られないかと・・・病の進行が思っているより早いと・・・」
「えー?!だって、さっきは大丈夫そうだったよ?」
「・・・大丈夫そうに見えるよう、努力して我慢していたのでは無いかと。」
分かっているのだけれど、実際に他人から言われるとはっきりと分かってしまって少しだけ“そうなるよね、分かってはいるのだけれど・・・”と思ってしまった
もやもやした表情でもしていたのだろうか、スミレとミーシェちゃんが二人(?)して俺の隣に来て不安そうに見てきた
「大丈夫だよ!きっとアルトお兄ちゃんは、ちゃんと来てくれるよ」
「そ、そう・・・だよ、うん。きっと来てくれるよ」
『にゃー、そうにゃよ?きっと午後にここ来てお話聞きに来てくるにゃ!』
「そうだね」
キューリャさんは何か言いたそうな表情をしていたけれど、メニーさんが目配せしたのを見て小さく頷いたと思ったらスッとまた姿を消した
そんなに俺寂しそうな表情でもしていたんだろうか
暫くして昼食の時間だとメニーさんに声を掛けられたが、ミーシェちゃんとスミレが西棟の扉の方をちらちらと見て、開く気配がないのを残念そうに見ると言う動作を何度もした
メニーさんも中々強く言えないようで、昼食に行こうと2回くらい言って促した位でやめておいたくらいだった
昼食を食堂に行き皆で食事をとって(メニーさんとキューリャさん、ジョアンさんは別の時に食べると言って一緒に食べようとしてくれなかったが何時食べるのだろう)午後、再び中庭へ行く前に、ミーシェちゃん用に適当に絵本を数冊購入してから中庭へいった
しかしやはり予想していた通りに、と言うかある程度予想していた通りアルトくんはやってこなかった
うーん、検査っていってたがやはり時間掛かってしまうのか、余程酷い症状なんだろうか・・・なかなかこなかった
ミーシェちゃんが俺と同じく西棟の方を気にしながらもアルトくんが来ないのを気にしつつ、帰る時間になってしまったので渋るルールウドくん達を玄関口まで見送ってから、中庭で日が暮れるまで待ってみた
『にゃー・・・まだ、待つにゃ?』
「本読んでるだけだよ」
『・・・にゃう』
スミレが俺の膝の上で俺が開いている本を一緒に読んでいると、そろそろ暗くなってくる頃にふわりと上着が掛けられた
振り返ると困惑した表情で、上着をもっているキューリャさんがいた
「・・・入院しているのに、風邪を引かれますよ?」
「ありがとうございます、キューリャさん。」
「・・・もう少しだけ、待ちますか?」
「もう少しだけ待っていたいと思うけど、駄目ですかね?」
「・・・温かい飲み物をお持ちします」
キューリャさんは叱るでもなく、病室に戻れと進言するでもなく頭を下げて灯りを魔法で俺の手元付近と自分の足元に浮かべてどこかへと行った
恐らく売店か、食堂辺りだろうと思いながらも、スミレと一緒に待っていたけれどスミレが退屈そうに俺の膝の上でかりかりをお強請りするくらいには経った
キューリャさんが暖かい物を用意してくれたのでちびちび飲んで待ったのだが来なかった
「ショージ様、もうお部屋に戻りましょう」
「はい」
内心分かってはいたものの、少しションボリしながら自分の病室にとぼとぼと戻った
スミレが俺の肩に乗ってくれたが心の中で重いと文句言っただけで頬を軽く引っ掻かれた
三歳児くらいの体格の子供の方に、子猫とは言え生き物が乗るには重たいと感じただけだと言うのに、頬を引っ掻かれた・・・己、スミレめ
まぁ元気づけようとしたんだろうけれど、痛いから止めて欲しいな
病室に行くとアルトくんのお兄さんと呼ばれていた青年がメモを俺の病室の扉にくっつける気でいるのか、メモとテープのような何かを手にしている所だった
「「あ」」
一寸気不味い・・・と思いつつも、俺とアルトくんのお兄さんがお互いに苦笑しあうという奇妙な光景になってしまった
「えーと、君はショージ、くんでいいのかな?」
「はい」
「アルトの兄です。」
「は、はい」
「えーと・・・」
うん、気不味い
どうしようとか、扉の前で何してるのか、とか、アルトくんはどうなったのか、とか・・・
色々とあるけれど、どうしたら良いのだろうか・・・
「ショージ様、取り敢えずは病室に通して中でお話ししては如何でしょうか。」
「あ、そ、そうだよね、と、取り敢えず時間があるなら部屋にどうぞ・・・」
キューリャさんがそうアドバイスしてくれたので、俺は頷いてアルトくんのお兄さんを自分の病室に通した
アルトくんのお兄さんは俺が勧めた椅子に座って、貼り付けようとしていたメモを取り出し手渡してきた
「これ、アルトから預かってきていたんだ。直接渡そうと待っていたのだけれど・・・中々来なかったから、扉に貼ろうとしたんだけれど・・・」
「あ、僕はアルトくんを中庭で待っていたので・・・」
「あぁ、そうか、一度中庭にも行ってみたのだけれどいなかったから・・・」
「な、なんかすみません」
うわ、きっと中庭に居なかった時と言うと・・・ミーシェちゃん達を見送りに玄関口に言っていた時にお兄さんは中庭に来ちゃったんだ
うわ、うわ・・・それは本当に、悪いことをしたな
「いやいや、こっちの方こそ悪かったね。アルトを待っていてくれたんだろう?」
「ええ、まあ・・・」
「俺ももう一度中庭の方に行けば良かったな。何度か言ってみようかとも思ったんだが、万が一行き違いでこっち(病室)の方に来たら、と思ってしまったんだ、すまない」
キューリャさんが温かいジュースを二人分(俺とアルくんのお兄さんの分)作ってくれたらしく、手渡してくれたのでそれを再び飲みながらメモを受け取った
メモには【今日はやっぱり中庭に行けそうにないらしいです。また明日具合が良ければ中庭に行きます。駄目だったら兄に伝言をお願いしておきます、ごめんね】とあった
アルトくんにも気を遣わせたかな(苦笑)だとしたら少し、悪い事したかな・・・
「それで、ショージくんは明日もアルトを待っていてくれるかい?」
「はい、中庭で待っているつもりでいますよ」
「・・・そう」
お兄さんは少しホッとしたように表情を和らげて微笑んだ
どうやらアルトくんは少し体調が良くなかった時用にお兄さんのことを顔見知りにしておきたかったのだろうと思いつつ、お兄さんにアルトくんの検査はどうだったのかを聞いた
「あぁ、大丈夫。少し・・・そう、ほんの少し足を痛めていただけだから・・・」
そういったお兄さんは目をそらし、俯いていた事からあまり良い検査の結果では無かったのだろうと予測が出来た
出来てしまった・・・
スミレも、不安そうにお兄さんを見上げて俯いた
心なしか、スミレのしっぽにも元気がない
お兄さんは間が持たなかったのか、検査結果の話題を逸らそうとしたのか、一気にキューリャさんの入れてくれた温かい飲み物を飲み干した
「ショージくんさえよければ、アルトともっと仲良くしてくれるかな。アルトは、友人がいないんだ。病のせいで気弱になっていてね、人付き合いが中々出来ないんだ」
「・・・アルトくんはイイコだからきっと治りますよ」
「・・・そうだね、えっと、お茶ごちそうさま。ショージくん、お休み」
お兄さんは悲しそうな表情で無理矢理笑ったような笑顔で俺の頭を数回軽く撫でてから病室を出て行ってしまった
キューリャさんがくれた飲み物も俺の分はとっくにぬるくなってしまった
廊下に出て、気が抜けたのか、俺が聞こえてないと思ったのか、少しだけ遠くなった声でお兄さんが『伝説の~~~みたいな薬があれば・・・』と小声で呟いているのが聞こえた
・・・よし、明日午前中は図書室行こう!
午後はアルトくんを待とう!本を借りて、待っていよう!
伝説の薬、と言うヒントが貰えたぜ!アルトくんを直せる可能性のある物が、在るんだね!
伝説の薬の、名称は聞けなかったがエリ何とかと言うのは聞こえた!
それを元に薬になりそうな物を探せば良いよな!
「・・・・・ショージ様、もう遅くなります。お休みになられては如何ですか?それとも何時もの様にお手紙を、お出しになりますか?」
「あ、手紙書きます!」
「・・・畏まりました。灯りをどうぞ」
キューリャさんはスタンドライトみたいなサイドテーブルの灯りを付けてくれた
手紙を書いて、ルールウドくんにエリ何とかの伝説の薬の話を知って居るかとか病気を何でも直せる薬の名称に覚えがないかとか聞いてみた
返事で何かいい物が来ると良いなと思いつつもミーシェちゃんには手紙でアルトくんはあの後来なかった、明日も会うことにした、とだけ書いた
詳しくは夢の中で会話するからミーシェちゃんには手紙でかなり細かく書く必要ないのでざっくりと書いたけれどもそれで良いと思ったからだ
スミレに届けて貰い、キューリャさんがどこか行ってしまったので俺はかりかりを用意しておいてスミレの帰りを待った
スミレが帰ってきたので床にかりかりを入れた餌皿を置いたら喜んで餌皿へとすっ飛んで走って行くスミレに、思わず少しは俺の方によってくれても良いと思ったが、スミレはかりかりに夢中になって食らいついている
まぁスミレは精霊といえども猫の姿をしているので仕方ないのかも知れない
『うみゃ、うみゃ!にゃー!おかわりにゃ!』
「お代わりなんてないよ」
『にゃう・・・おかわりぃ~』
スミレは俺のズボンの裾を前足でお強請りをするように何度か掻いた
だからお代わりはやらないと言っているのに・・・
俺はスミレを抱きかかえて姿が消えているキューリャさんに【先に寝ます、ゴメンナサイ。お休みなさい】とだけメモを残して体を綺麗にして寝間着に着替えてからベッドへと入っていった
・・・あ、ルールウドくん達の手紙の返事をスミレから貰うのを忘れてた
一寸眠くなってしまった物だから、うっかりしていた
明日の朝、ちゃんと読まなくちゃいけないな・・・




