第6話 龍太郎
こんにちは。義父のケアで和歌山にいますが、小説は毎日更新します(予約済み)
最後まで読んでいただけたら、嬉しいです。
龍太郎は勤務先である総合病院に着いた。
車を停めて駐車場を歩く。
彼の目の前には白くて巨大な建物があった。
『立冬総合病院』
龍太郎の父親が経営する病院で、県内屈指の高度な医療を提供している。
またクリニック、介護施設などを含め、十七箇所を運営している。
龍太郎は従業員専用入口にカードをかざした。
カチっとロックが外れる音がして、彼は中に入っていく。
彼が廊下を歩いていると、
「あ、おはようございます。龍太郎先生」
「龍太郎先生、おはようございます」
あちこちから声をかけられた。
「おはようございます」
龍太郎はとりあえず微笑んでおく。
パァァァ……。
彼の背景に白い薔薇が咲き乱れた。
その場にいる職員らの視線が男女関係なく、龍太郎に釘付けになるが、彼にはそんなことはどうでも良かった。
彼は更衣室に向かい、自分のロッカーから白衣を取り出す。
ふわっ——
龍太郎が白衣を纏った。石鹸の香りがあたりに漂う。
「おはよう、龍太郎」
龍太郎の隣で陽気な声がした。
「……なんだ、晴人か」
龍太郎が晴人と呼んだ人物に目を向けた。
「相変わらずの口の悪さだな、龍太郎。それが親友に言う言葉かよ。ところでおまえさ、今日は休みじゃなかった?」
痩せ型できつね顔。雰囲気イケメンの、古田晴人が怪訝な声を出した。
「今日は休みだったから、患者のお墓参りに行っていた。帰る途中で病院から連絡がきたんだよ。ちょっと病棟の手伝いだ」
龍太郎が荷物をまとめてロッカーに入れた。
「……おまえ、今年も患者の墓参りに行ったのか。そういうとこ、昔っから変わらないな」
晴人が龍太郎を一瞥した後、ロッカーを開けた。
「おれが助けられなかった命だからな……」
龍太郎が目を伏せ、言葉にした。
「…………」
その言葉を聞いた晴人が龍太郎に顔を向けた。
「龍太郎、気にするなって言っても無駄だけどさ、おれらじゃ、どうにもならん命もあるだろ。もう少し早く病院にきてくれていたらとか。子供なんて特に、自分から言えないぶん、場合によっては一刻を争うケースも、医学でもどうにもならんケースもある」
晴人が真顔で龍太郎に話す。
「……そうだな。それでもおれがそうしたいから、そうしてるんだ。頑張らないといけないからな。晴人、今日は昼飯、一緒にどうだ?」
龍太郎が晴人に視線を流す。
「龍太郎、おまえ相変わらずひとりで飯食うの嫌いだよな。お子様か?」
晴人が顔をしかめた。
「……ひとりで食事をする環境で育っていない晴人にはわからんさ」
龍太郎が目を伏せた。長いまつ毛が揺れる。
「相変わらず、寂しがり屋だな。まっ、おまえの家は色々複雑だもんな。しかたない、昼飯付き合ってやる」
晴人がロッカーの鍵を閉めながら話す。
「サンキューな、晴人。また後でな」
龍太郎が晴人に背を向けて、ロッカールームを後にした。
(……龍太郎は小学生の頃、母親と引き離されてるからな)
晴人は龍太郎が使っているロッカーを眺めた。
白衣をなびかせ、龍太郎は颯爽と総合病院内の廊下を歩く。
消毒液や薬品の匂いがあたりに満ちていた。
颯爽と歩く龍太郎の白衣がはためいた。
お読みくださり、ありがとうございました。
今日も良い一日でありますように(^-^)




