第2話 いきなりの事故ハグ
「……おまえさぁ、またおれに見惚れてないか?」
男性が寧々に目をやる。
彼女がビクッと肩を揺らした。
「あははは~! ま、まさかぁ、気のせいですよ。見惚れてなんかいません。この景色にうっとりしていただけです。それにしてもきれい~! 今の時期に桜なんて……わぁぁ、異世界みた~い」
寧々が舞い散る桜の花びらを見つめながら、ゆっくりと歩く。
「ふっ、異世界って……まぁたしかに非現実的ではあるな」
桜を見上げながら、男性が呟くように言った。
(なに、この人。オーラがすごいんですけど……うっ、キラキラしてるよ。まぶしいよ、見てるけど直視できないよ。漫画の世界から飛び出してきたの?)
「あの~、あなたはモデルさんかなにか? それとも、戦隊もののヒーローさんかなにかですか?」
寧々が笑顔で男性に尋ねた。
「アホ、違うわ。普通の社会人だ。なんだ戦隊ものって。おれを勝手にヒーローにするな」
男性が呆れた声で即答する。
「なぁんだ。違うんですねぇ~、そっか、そっかぁ」
(うわっ。秒で返してきた。しかも『アホ』つき。顔はいいのに口が悪い。えへへ、ギャップが最高~っ)
寧々は楽しくなってきた。
花びらが空に舞う──
風がふたりの間を吹き抜ける。
雪と桜が一面を飾る。
「わぁぁぁ……」
寧々のすぐ前を桜の花びらが舞う。
彼女はそれを少し追いかける。
「あっ……やった! 捕まえたっ」
寧々が手のひらの中に、桜の花びらを閉じ込めた。
「んっ?」
彼女が気配を感じて、そっと左を振り向くと男性がすぐそばに立っていた。
「ち、近い、近いですっ。なんで~!」
寧々の頬が赤く染まる。
「は? おまえが勝手に近づいてきたんだろうが。なんでってなんだ」
男性が眉間にしわを寄せた。
「それもそうですね。ご、ごめんなさい」
寧々が慌てて男性から離れようとするも、雪で足元が滑った。
「あっ──」
寧々の視界に空が映った。背中から地面に近づいていく。
「お、おい……」
ふたりの空気がふわっと動いた。
ドサッ。
雪の上に落ちる音がした。
「えっ……?」
寧々の背中に温かい手の感触があった。
「……っ!」
男性の声にならない声が寧々の耳元で揺れた。
「あ、すみません……」
寧々の身体に火照りが広がる。
彼女は後ろから男性に抱きしめられて、彼の腕の中にいた。
お読みくださり、ありがとうございました。
明日も良い一日でありますように(^-^)




