第1話 寧々にとっては運命にしたい出会い
こんにちは^ ^
読んでいただけたら、嬉しいです。
あの最低な失恋から一年後。
「ぎゃぁぁ。遅刻なんだけどぉ~」
葉山寧々は十二月の寒空の中、雪道を早足で歩いていた。
寧々が歩くたびに「ザッザッザッ」と雪を踏む音がする。
「あ~あ、お化粧した意味がないなぁ……」
ほんのりのせた化粧が汗で溶けていく。
冷たい風が寧々の頬をかすめる。
「だ~か~らぁ、寒いんだってばぁ~」
彼女は環境に文句を言う。
「…………」
寧々はふと歩道を眺めた。
きれいに積もった雪が人々を魅了する。
(今日、お客さん来るのかな? こんな日まで営業するって、もはやド根性……。はぁ~やってらんない。家で溜まったドラマを観ていたい)
寧々は勤務先の和菓子店を目指して、ひたすら歩いた。
スカートの下から冷気が容赦なく襲ってくる。
「さ、寒~い! もうやだぁ~! こんな日まで営業とか女将さんのバカァ」
寧々が叫ぶ。
アパートから勤務先まで徒歩十分ほど。
寧々は県記念公園の横を通り過ぎる。
福祉を目的とした複合施設が公園内にあり、レストランなどもあるが、雪の影響で今はひとっ子ひとり見当たらない。
公園にはたくさんの桜の木が植えられていて、毎年お花見の時期は賑わっている。
「……んっ?」
寧々は人の気配を感じて公園内を見た。
「え── 」
彼女は目を開き、大きく息を呑んだ。
そこに男性がひとり立って、天を仰いでいた。
「な、なぁに、これ……」
寧々の足が止まる。
息をするのですら忘れてしまう──
ひらひら……。
空に美しい桜の花びらが、優雅に舞っていた。
十二月に咲いた一本の桜の木。
桜には真っ白な雪が積もり、あたりを銀世界へと変えていた。
人離れした美しい男性が、優しい眼差しでその桜を眺めていた。
ふわり──
男性の鳶色の絹のような髪が、風に大きく靡く──
背が高く、桜を見上げるしなやかな身体。年は寧々より少し上だろう。
グレーのマフラーに黒のジャケットからは品の良さが滲み出ていた。
風が吹くたびに男性の周りを楽しそうに舞う雪と、桜の花びら。
(……うわわ、こんな景色、初めて見た……ド、ドラマの撮影みたい……)
寧々の身体に電気が走った。
「…………」
ただただその光景に見惚れた。
「……!」
男性のラフなレイヤーが入った髪が揺れ、寧々と目が合う。
「……なんだよ。おまえ、おれになんか用か?」
誰も寄せ付けないような温度のない声が男性から発せられた。
「えっ? なんか用?」
寧々が驚く。
(えっ? 今あたしに言った? え? 言い方、ひどくなかった? 聞き間違い?)
「あのな、おれは他人からそんなに見られるのは好きじゃない。だから、そんなにジロジロ見るなよ」
男性が淡々と語った。
「あ、ご、ごめんなさい。なんかアニメ……じゃない、ドラマのワンシーンみたいで、思わず見惚れてました」
寧々が男性からサッと視線を逸らす。
「は? アニメ? ふっ、なんだよ、それ」
男性が寧々を見て、少しだけ頬を緩めた。
「しかし、こんな真冬に桜が咲いて、雪が積もるなんてほんと奇跡だよな……雪と桜か」
男性の横顔が再び空を仰いだ。
ドクン──
寧々の鼓動が跳ねた。
(わぁぁ……話し方は抜きにしても、ル、ルックスだけは最高かも…かっこいい~)
寧々は男性から目が離せなかった。
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