プロローグ
こんにちは。新連載です。よろしくお願いします。
「寧々まじ、つまんないんだよね。真面目すぎるっていうか。もったいぶってるっていうかさ……」
彼がつぶやいた。
葉山寧々は目の前にある光景を見て、足がガタガタと震えた。
自分の彼氏である本谷健一が自分の知らない女と、ふたりでベッドに入っていた。
ワンルームの狭い部屋の中。
壁には車のポスター。テーブルには缶ビールとスナック菓子の袋が置いてあった。
今日は健一の誕生日だった。
(な、なに……これ。急に会えないって言われたのは、こういう理由……?)
寧々の足がすくむ。
「俺、おまえの見た目以外、興味ないから。もういいわ。一生、くそ真面目に和菓子屋で働いてれば?」
健一が吐き捨てるように言い、寧々を睨んだ。
「……ひどいよ」
信じられないぐらい温度のない言葉だった。寧々の目に涙が溜まっていく。
「避妊しないからさせないって、それなんなわけ? お堅いにも程があるだろ、俺を馬鹿にしてる。妊娠したら責任を取るって言ったじゃん」
合コンで知り合った健一との交際が始まったのは、三ヶ月前からだ。
「俺、コイツと結婚するからさ、もういいから消えろ。一度もさせてくれないとか、マジありえねーから」
健一が獣のような目つきで寧々を見た。
「ちょっと、言いすぎじゃない? まだ子供じゃない」
健一の隣で裸になっていると思われる女がクスクスと笑う。
(なにこれ、なにこれ……「俺は寧々と結婚したい」、あれは嘘だったんだね……)
寧々の目から涙があふれ出した。
その光景を見た、健一と女がニヤッと笑った。
「も、もういいっ! さよなら。健一のバカバカバーカ」
寧々は彼に背を向けて、ドアを開けて外に出た。
夏の空が青くて、眩しくて、寧々の心とはかけ離れていた。
二十歳の夏、寧々は失恋した。
それも最高の裏切りで……。
「超ムカつくんですけど!」
寧々はドアを思い切り蹴り飛ばし、アパートの階段を降りていく——
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また次回お会いできるのを楽しみにしております。




