第8話 考古学の魔女
感謝の印として、まずは朝食だった。
アーティファクトはもっと豪華なものを作りたかったが、アルエットの腹の虫がそれを許さなかった。
間もなく、焼いた海老と海苔を乗せたお粥と、グィオットが作ったふわふわのオムレツが用意された。
二人が食事に舌鼓を打つ間、彼は皿を洗った。
アルエットは一口目を丁寧に、二口目を豪快に食べた。
「ペリーの料理より美味しい! 手伝えたらよかったのに」
動かない人形の脚に思考が戻り、心配で表情が曇った。
アーティファクトは自分のボウルにあった海老を一つ、彼女の器に分けてやった。
「ややこしい話は後にしよう。空腹の時にすべきなのは、食事か手術を待つことだけさ」
その軽口にアルエットは小さく笑い、グィオットは(恐らく)心配そうな目を向けた。
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キッチンから廊下を歩き、客室へ案内された。
ベッドが二つ、間にナイトスタンド、そして机。
別のドアは専用のバスルームに続いていた。
「いいタイミングで現れてくれたよ。もう少しで物置にするところだった!」
アーティファクトは冗談めかして言い、自分の物置のような部屋を見せた。
「この建物は私の領域だ。助けが必要なら呼んでくれ。世界のどこからでも聞こえる」
次に二階の書庫へ降りた。
漆塗りの柱と整然とした木製の棚を、暖かく薄暗いランプが照らした。
半分は本、もう半分はラベルのない引き出しの格子だった。
乾いた空気は紙の匂いで満ち、あらゆる物体の歴史が絡み合い、郷愁と呼び声を響かせていた。
アルエットを待つ何かがここにあったのか?
グィオットは片腕をアルエットの膝裏に通し、抱えて運んだ。
これなら彼女は座った姿勢を保て、彼も片手をそこそこ自由に使えた。
体勢を確認した後、彼女はノートを彼に向けて掲げた。
『大丈夫? 痛かったら言って』
「全然平気。ありがとう、グィオット!」
せめて人形の脚は自由に着脱でき、足を引きずりながら歩くこともできた。
ユークリッドに飲まされた葉が効いたのだろうか? 彼女は渋い顔をしたが、二人に気づかれる前に直した。
そういえば、ユークリッドはアーティファクトとグィオットを知っていると言っていた。
名前を出さないよう気をつけながら、「ある人」について尋ねた。
特徴を聞いても、グィオットは思い出せなかった。
対照的に、アーティファクトはその言葉だけで十分だった。
「ああ、彼か。一度か二度話したことがある」
誰のことか分かっており、彼女もその意図を理解した。
それが魔女の直感だ。
動物が病気や天災を察知するように、魔女は世界やお互いに対して不可解な親和性を持つ。
この生来の能力は磨くことはできても、学んで得られるものではなかった。
「稀な例外はあるけどね」
アーティファクトが講釈した。
指を鳴らすと、棚から本が飛び出し、彼の手元へ飛んできた。
ページが勝手にめくれ、目的の章で止まった。
「私は生まれつきの魔女じゃない。神々が哀れんで力を与えてくれたんだ」
「神様っているの?」
「あるいは、そう呼ばれて満足している何かだ」
彼はアルエットに本を渡した。
「優しく扱ってくれ。原稿の原本だからね」
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『天地創造論』 98,703年 著:考古学の魔女12世
前書き
世代を重ねるごとに、魔女は曇った起源から遠ざかっていく。
かつて何があり、なぜ、どのようであったか。
私はその記録を作成しようと試みる。
この結論は、十分な知見に基づいた見立てだ。
真実の欠片かもしれない一連のつながりである。
何世紀にもわたって集められた民間伝承、遺物、狂人の戯言が、自分の判断というフィルターを通して蒸留されたものだ。
この世界における神々の正体に挑む。
統計
現在、信仰を持つ人間の60%は唯一絶対の神に祈る。
これは「神」と呼ばれる。
残りの40%は多神教を信仰しており、太陽、農業、海、さらには米粒や小石に至るまで、様々な領域を支配する色鮮やかで変幻自在な神々を崇める。
対照的に、魔女たちは神を信じない。
その言葉を使うとすれば、それは単純化のためだ。
70%の人と事実上すべての魔女にとって、「創造」こそが絶対である。
創造神話
世界は無から始まったが、100,000年前に何かがそれを形成した。
これは「創造の魔女」として知られている。
それは空間、時間、そして我々の現実の法則を形成した。
太陽、海、人間、動物、その他を支配する原初の魔女たちを創り出した。
名前を持つものすべてを。
「創造」の手はそこで止まった。
それは性質上、その後我々のもとを去った。
「創造」は舞台の一部になることには興味がなく、ただ作ることが本望だ。
こうして、世界は原初の魔女たちの気まぐれに委ねられた。
90,000年の間、これらの魔女は力を振るい暴走した。
人間を含む他の生命体は、誰一人として逆らうことができなかった。
しかし今、そのような全能の魔女の痕跡は存在しない。
あの者達がどうなったのかを伝える神話もない。
物語はプロローグで途絶えている。
我々の文明
我々という種は神々と共に最初から存在していたが、文明の正式な記録はわずか100,000年前に遡るのみだ。
迫り来る時の顎が、より古い歴史を食い尽くしてしまった。
90,000年前とそれ以降の情報量の極端な格差は、まるでデータが検閲されたかのようだ。
不気味なことに、原初の魔女や神々への言及も同じ時期に消えている。
遺伝的祖先の民話が、神聖な神話を置き換えた。
我々がこの世界で足場を築くことを可能にした100,000年前、一体何が起きたのか?
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「我々」という言葉の意味を明確にすることへのためらいについて。
魔女と人間に根本的な違いはあるようで、ない。
魔女は人間から生まれることがあり、人間も魔女から生まれる。
魔女たちは自分たちの領域の人間を「人」と呼んで欺瞞に浸る。
しかし、「創造」はこれらを区別しない。
すべては等しく「人類」であり、等しく滑稽で、醜く、愚かだ。
噂によれば、「創造」は時折、人や動物、あるいは物体の姿をして世界の様子を覗きに来るという。
もし誰かが「創造」の真の姿を見れば、発狂する。
その正体は最大の謎である。
しかし、これだけは断言できる。
「創造」はドミニオンを含め、我々が見聞きするすべてを作った。
「創造」は神ではない。
その称号を受け入れはするが、崇拝は求めない。
それは決して、我々の同類ではない。
結論
この物議を醸す原稿も、私自身の体も、焼かれるかもしれない。
しかし、怯えていては「考古学」の名に値しない。
私の研究とその結論は述べられなければならない。
人間の唯一神と創造の魔女は同一である。
多神教文化において、彼らの神々はかつての暴君たる原初の魔女たちに相当する。
潮の神は海の魔女だった。大地の神は地の魔女だった……等々。
世界中の神話には常に変身する神々の物語がある。
これは魔女の根本的な能力、すなわち人の殻を侵食し、そのドミニオンへと溶け込む潜在能力にあまりにも似ている。
前述の通り、現代の民話では物語における神々の存在が大幅に減少している。
しかし、森、天、嵐などの怒りを買う人類というテーマは共通して残っている。
まるでこれらの要素が意識を持っているかのように。
まるで、人であるかのように。
最初の魔女たちは、自身のドミニオンの要素そのものになったのだろうか? もしそうなら、一つの疑問が私を苦しめる。
太陽とは何か?
生命そのものを育む空の球体は――魔女なのか?
後書き
原初の魔女に関する情報を見つけることは不可能に近いと判明した。
ドミニオンを起源まで遡ろうとする努力はすべて、入り組んだ袋小路に行き着く。
唯一未踏の手がかりは、秘密めいた「冬の地方」だ。
しかし、現地の協力者が行方不明になった。
彼の小屋の近くの雪に埋もれた、破れたメモを見つけた。
彼の手書きだった。
『奴は原初の中で最も恐ろしい存在だと言われている。』
『無傷で帰れると「約束」されても、決して吹雪の中に入ってはならない。それは罠だ。魔女の魅惑的な嘘だ。』
『二度と戻れなくなる。』
✦ ✦ ✦
アルエットとグィオットは言葉を失った。
実存的危機に陥る前に、アーティファクトの冗談が現実へと引き戻した。
「言葉もないだろう? 実際、小石の神になりたい奴なんていないだろうさ」
彼は何年も同じことを言い続けている。
アーティファクトが片眼鏡を押さえ、顔をしかめると空気が重くなった。
「友人は見つからず、著者自身も直後に失踪した。現在の『考古学』は33代目だ。私は彼からアーティファクトのドミニオンを勝ち取り、11代目となった」
アルエットは4000年前の書物を恐る恐る見た。
「いつもこんなものを扱っているなら、私たちが来ても驚かないわけね」
アーティファクトは瞬きし、いつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「気にしないでくれ。君たちが私を必要としている時に、躊躇している時間はない」
一方、ドールの手は原稿の表紙をなぞっていた。
話し込んでいる隙に、関節から極細の糸を出し、革の装丁に入り込ませた。
「ちょっと! 何してるの!? 優しくって言われたのに!」
アルエットは息を呑んで叫び、本をアーティファクトに返してドールの掌を強く弾いた。
叱られたペットのように、手は凍りつき、大げさにへたり込んだ。
グィオットがアルエットの肩を撫でた。
「待った」
アーティファクトが革を親指でさすった。
「何か入っている」
ドールの器用な指が気づいた、紙一枚分の凹凸。
アーティファクトの片眼鏡が音を立ててレンズを変え、装丁の層を剥がした。
表紙の下には、血まみれのページが隠されていた。
錯乱した言葉。
走り書きされた文字が重なり、斜めにジグザグの文章を作っていた。
考古学12世は、書く時に紙を見ていなかった。
何かが彼女の注意を奪っていた。
『外に誰かいる。私は5階から見下ろしている。
それは私だ。
地上階の「私」が、私を見上げて微笑んでいる。
私が書いている間も、アレは微笑んでいる。
永遠に目を開けてはいられない。
瞬きをした瞬間、彼女は消えると分かっている。そして近づいてくる。
数十年前、心臓の手術を受けた。
それ以来、私の胸には機械装置が入っている。
だが彼女のそれは反対側にあり、心臓の役割を果たしていない。
鏡像。ドッペルゲンガー。
瞬きをしないように、まぶたを釘で固定した。
でもアレは門を開け、すべてのドアを開錠した。
まるでここが自分の領域であるかのように。
階段を上がってくる。
自分の心拍のように、一歩一歩の足音が聞こえる。
私のように歩く。その声が聞こえる。自分の声だ。
何世紀もの間、私の家だったこの遺跡が逃げろと言っている。
棚の遺物たちが恐怖に震えている。
それらより古き何かが近づいている。
もう逃げられない。
ドアをノックしている。
怖い。』
恐怖がアルエットの背筋を駆け抜けた。
震えに気づき、グィオットは強く抱きしめてから離れた。
アーティファクトでさえ動揺していた。
「こんなものを見せてすまない」
片眼鏡で書物と紙をさらに分析してから、首を振った。
グィオットがペンを取り、書いた。
『人間は、ドッペルゲンガーを見た者は間もなく死ぬと言います』
「魔女も同じことを信じている。結局、共通点はあるということか。ある時点で、推測と偶然は予兆になる」
✦ ✦ ✦
アーティファクトは二人を書庫から連れ出した。
だが出口へ向かう途中、何かがアルエットを呼んだ。
慣れてしまった死の悪臭ではなかった。
温もり。懐かしさ。
たとえいつか自分自身でなくなったとしても、アルエットが決して手放してはならない何か。
彼女の目は周囲の無数の棚を走った。
道を指し示し、特定の廊下の突き当たりでグィオットを止めた。
「アーティファクト、ここには何が入っているの?」
彼は立ち止まり、面食らった。
数千もの同じ棚の中で、アルエットはそれに引き寄せられたのだ。
皮肉なことだ――またしても偶然が予兆に変わった。浅い呼吸と共に答えた。
「オリヴェイラの墓からの出土品だ。平和の魔女だよ」
グィオットは身を竦ませたが、アルエットは首を傾げた。
記憶喪失の者には響きの良い名前に聞こえたかもしれない。
だが実際は、すべての魔女にとって恐怖の対象となる名前だ。
オリヴェイラは魔女の裏切り者。
聖ドミナに仕え、天才的な「秋の魔女」をたやすく無力化した少女。
対魔女地雷の起源。
オリヴェイラは、亡霊のさまよう戦火の谷を生んだ元凶。
ユークリッドを含む数千の魔女が殺された諸悪の根源。
グィオットの未来を奪った戦争のきっかけ。
胃を締め付けるような予感がアルエットから離れなかった。
言っていいのか分からなかった。
アーティファクトが安心させるように言った。
「なんだい?」
アルエットは唾を飲み込み、シャツの袖を握りしめた。
「あの、棚に何かあると思うの。私の物が」
とんでもない発言に穴があったら入りたくなり、グィオットの腕に縮こまるのが精一杯だった。
男たちは顔を見合わせた。
損はないだろうと判断し、アーティファクトが引き出しを開けた。
魔法の鍵が彼を認識してひとりでに外れ、ブロンズの取っ手が輝いた。
ベルベットのクッションの上にいくつかの品が置かれていたが、双剣や月桂冠、襟のブローチといったオリヴェイラの象徴的な品々にアルエットは興味を示さなかった。
代わりに、彼女を言葉少なに釘付けにしたのは、ある一つの物だった。
銀のペンダントだ。
アーティファクトはグィオットのためにノートを掲げた。
『どうやってこれらを? 本当に平和の魔女の持ち物ですか?』
「墓荒らしが私に売りつけようとしてね。侮辱だよ! もちろん一銭も払わなかったけどね」
学者は、学術的というよりは暴力的な説得方法をほのめかしながら自慢した。
「それに、私の名を賭けてもいい。伊達にアーティファクトとは呼ばれていないさ」
ペンダントがアルエットの物かどうか、試すことができた。
「この品は声を持たない。手動で情報を得る必要があるな」
アーティファクトの左目にあるドミニオンマークが輝き始めた。
どの魔女が見ても、それは短剣の形をしていた。
十字でも、プラス記号でも、剣でさえもない。悲劇的な短剣。
「私はアーティファクト11世、古きものを支配する者。いつかこの世界のすべての物体は、人類の脆く儚い手から私の元へと渡るだろう」
金色の塵が瞳から指先へ、そして遺物へと舞った。
銀の表面と鎖が、ある人から別の人へと愛を込めて手渡された記憶と共に輝いた。
「平和、憎悪、栄光、すべては時の砂に消えるが、私は忘れない。答えよ、彼女はあなたが再会を待ち望んでいた者か?」
美しい言葉だ、まるで詩のようだとグィオットは思った。
誰もいない、自分さえもいないと思った時に母が口ずさんでいた歌のように。
光が収まると、アーティファクトは微笑み、ペンダントの鎖を畳んだ。
「ああ、これは間違いなく君のものだ」
だが、アルエットの手に置く直前に固まった。
心の奥で何かが引っかかったのだ。
この少女は本当に正しい持ち主なのだろうか?
いや、もちろんそうだ。
今まで間違えたことなどない。
違和感を振り払い、ペンダントを手渡した。
受け取ったアルエットは奇妙な感覚を覚えた。
ドールハウスで目覚めて以来、自分の体が自分のものではないように感じていた。
だがロケットを握った瞬間、指はそれを離そうとしなかった。
懐かしい温もりが心に蘇った。
そう。これはペンダントじゃない、ロケットだ。
私のロケット。
彼女は隠された蝶番を一発で外した。
カチッという音と共に、思い出の品が開いた。
中には、黒髪で顔色の悪い素朴な少年のセピア色の写真が入っていた。
ぎこちなくも温かい笑みをカメラに向けていた。
横には早熟で優雅な筆跡。
『親愛なるアルエットへ。いつまでも一緒でありますように』
写真の下には、彼のものではない霞んだ影があった。
アーティファクトはドールの手を見た。
「ロケットと写真も300年前のものだ。誰かと手を繋いでいるように見える。恐らく、対になるセットの片割れだろう」
少年の姿を目にして、アルエットの眼差しは和らいだ。
同時に、動揺がその顔をよぎった。
どうして?
他の二人が不思議に思った矢先、彼女は呟いた。
「ペリーに似ている」




