第4話 人形の魔女
アルエットはベッドの中でびくりとして目を覚ました。
また晴れた、平和な一日。
窓の外では小鳥がさえずり、人形たちはドア枠から頭を出して「おはよう」と声をかけてきた。
廊下に出ると、アルエットは工房へと続く階段を覗き込んだ。
視界がぼやけ、道が実際よりも深く狭く歪んで見えた。
彼女は目をこすり、浴室の鏡の前で顔に水を浴びせるために走った。
昨夜のことはきっと夢だ。
たとえ何かの危険が潜んでいたとしても、彼女は人形の魔女であり、ここは自分の領域だ。
それに、工房のすべては、小さな道具から革の切れ端に至るまで、昨日と同じままだった。
はぁ。ただの気のせいだ。
キャビネットを確認すれば、いつものように封印されているはず。
彼女は顔を上げた。
鍵穴がなかった。
いつから?
キャビネットには最初から鎖もボルトも鍵穴さえなかった。
少女の前にあるのは、二つの大きな扉と取っ手、そしてその中で待っている何かだけだった。
喉が渇き、アルエットは冷や汗をかいた。
どうして今まで気づかなかったのだろう?
なぜずっと開けられないと思っていたのだろう?
キャビネットに触れた時のことを思い出そうとしたが、鍵がかかっていた記憶しか出てこなかった。
そう思ったのには理由があるはずだ。
開けようとした方法のせいだろうか?
いつも……。
人形の手で。
急な動きをせずに、少女の震える目は「自分の」左手へと下がっていった。
いつも無意識のうちにその手で扉を揺すっていた。
人形の手が開けようとしない時、彼女はキャビネットに鍵がかかっていると思い込んだ――いや、自分の意識がそう告げた。
コントロールしていたのは彼女ではなかった。
やめて、やめて。馬鹿げている。
右手でキャビネットを開けてみればいいだけの話。
それでも動かなければ、工房の他のものと同じように、単に詰まっているか、特別な仕掛けがあるだけかもしれない。
でも、もし開いたら、次はどうなる?
中には何が入っている?
この1年知っていたすべてが崩れ落ちてしまうの?
実際のところ、彼女は何を知っているというのだろう?
青白い指がピクリと動いたが、行動には移せなかった。
彼女にはできなかった。
アルエットは下を向き、靴作りの作業を続けた。
手伝いに集まった人形たちが調子はどうかと尋ねた。
気分が悪かったにもかかわらず、彼女は微笑み、彼らが持って来てくれた朝食を食べた。
ポピーが転がって糸に絡まったとき、彼女は無理やり笑った。
できる限り普通に振る舞った。
自分の疑念を何かに気付かれるのが怖かった。
✦ ✦ ✦
何かの言い訳をして、アルエットは靴作りの工程を早められないか人形たちに尋ねた。
今夜までに終わらせたかったのだ。
人形たちは首を傾げ、昨日はゆっくり着実に教えてほしいと頼んだのにと文句した。
しかし、彼らは一瞬で苛立ちを捨て、要求に同意した。
「まあ、いつも気が変わるもんね!」
とクスクス笑いながら仕事に取り掛かった。
靴底に釘を打つために背を向け、アルエットは顔をしかめた。
人形たちはよく彼女の過去の自分についてほのめかした。
しかし、詳しく聞こうとすると、はぐらかしたり、会話の内容を忘れたりした。
以前は、彼女はそれをあまり気にしていなかった。人形たちは無邪気だ。
おっちょこちょいだ。
でも、本当にそうなの?
アルエットは手の中のハンマーを握りしめた。
人形たちはアルエットの世話をするために全力を尽くしてくれた。
もし叶えられない願いがあったら、人形たちは縮こまってふさぎ込み、謝りながら代案を探した。
熱を出した夜には、彼らは彼女に付き添い、回復した時にはお祝いをした。
一緒に本を読み、遊び、寂しい時には親指ほどの腕で抱きしめてくれた。
それでも。無条件の愛の向こう側――トントン。
子供のような無邪気さの向こう側――トントン。
誰もが欲しがるような平和な生活の向こう側――トントン。
何かがおかしい――グシャッ!
爪をハンマーで叩いてしまい、アルエットは叫び声を上げた。
大したことはなく、血が少し滲んだだけだった。
人形の手は、ハンマーを振り下ろす瞬間に力を抜いていた。
打撲傷が腫れてくるのを見て、安堵感が押し寄せた。
まだ人間だった。
人形たちは皆振り返り、息を呑んだ。
すべてを放り出して、応急処置をするためにパニックになって走り回った。
二人が救急箱を取り合い、他の二人は罪を犯したハンマーを溶かすことを検討した。
ペリーは落ち着くよう命じ、ポピーはアルエットの手を抱きしめて死なないでと泣いた。
あまりにも優しい。疑いと共に罪悪感が募った。
✦ ✦ ✦
夕方には、魔術のおかげで革のブーツが完成した。
人形たちがいなければ不可能だっただろう。
彼らは片方の靴を完成させ、それを使ってアルエットに学ばせた。
時間の大部分はコツを教え、彼女の間違いを直すことに費やされた。
ワックスとポリッシュで革を仕上げると、人形たちが作品を確認して「完成!」と声を揃えた。
結果は、ピカピカのほぼ完璧な靴一足だった(アルエットのものにはいくつかの癖があるが)。
人形たちは彼女に履いてみるよう騒ぎ立てた。
「私用じゃないのよ!」
人形たちの半分が息を呑んだ。
「私の足がどれだけ大きいと思ってるの?」
そう文句を言いながらも、彼らはブーツを履かせようとした。
ポピーは一人で片方の靴を持ち上げたせいで、中に落ちてしまった。
皆がもう片方の靴を動かしていたとは知らずに。
笑みを浮かべ、アルエットは暗く恐ろしいかかとの深さから鼻をすすっている人形を救出した。
「みんな、ありがとう。特にペリー」
彼が指導役だった。
他の人形たちも方法は知っていたが、彼らはドミナで一番教え方が下手だったのだ。
ペリーはお辞儀をしてから、変わらぬボタンの目で見上げた。
「なんてことないさ。練習すれば、近いうちに一緒に領域の外へ行けるかもしれない」
「町に行ける!」
パティが歓声を上げた。
「わあ、久しぶりだね!」
ペニーが喜んだ。
「明日行くの?」
ペギーが尋ねた。
「違うでしょ、バカ! 行ったとしても、僕たちはただ『眠ってしまう』だけさ!」
ポリーが思い出させた。
ポピーは会話に参加せず、いつの間にか引き出しの中でうたた寝していた。
アルエットは彼女を抱き上げ、リビングルームへと運んだ。
工房のドアを閉め、薄暗い階段を上がる前に、彼女はキャビネットをちらりと見た。
人形たちは6匹の陽気な猿のようにしがみついた。
ペリーでさえ肩に止まり、時折転げ落ちそうになる兄弟を捕まえた。
アルエットはペリーを含め、皆を小さなバスケットのベッドに寝かしつけながら、良い夢を見るようにと祈った。
ペリーは抗議することなくそれを受け入れ、寄り添ってくるポピーの頭を撫でた。
アルエットは外出着のまま寝ることにした。
朝一番で準備を整えたいと言い訳をした。
バッグにはブーツが詰め込まれ、戸口にある自分の靴のすぐ隣に置かれていた。
逃げる準備ができていた。
✦ ✦ ✦
いつものように寝返りを打つ儀式の後、彼女は戸口の壁をじっと見つめ、眠ったふりをした。
人間の右手で1分ごとに頬をつねり、自分を起こしておいた。体が痛んだり痒くなったりしても、彼女は凍りついたままでいた。
人形の手足を動かさないように気をつけた。
真夜中を過ぎた頃、暗闇の中で何かが動く音がした。
布に擦れるワイヤーの鈍い音が夜の静寂を切り裂き、アルエットを操り人形のように関節から持ち上げた。
力を抜いて、彼女は目を閉じた。
もし「あれ」が暗闇でも見えて、起きているとわかったらどうなる?
一歩一歩、糸は彼女を見慣れた工房の方向へと引っ張った。
真っ暗な地下へと階段を降りるにつれ、少女の心臓は胃の腑まで沈んだ。
工房のドアが勝手に開いた音が聞こえた。
糸は作業机の椅子にアルエットを座らせた後、離した。
一分間、光も音もなかった。いつも人形たちの明るい声が響いていたホールは空虚だった。
自分の高鳴る心臓と、耳鳴りが大きくなるのを無視しようとした――きしむ音に遮られた。
目の前のキャビネットの扉が抵抗なく開いた。
何かが重そうに這い出し、机を軽くこすった。
すぐにその音は止んだが、その存在の関節がきしむ音は続いた。
目の前にいる何かが糸で吊るされていた。
昨夜、彼女は暗闇を覗き込んだ途端に意識を失い、ベッドで目を覚ました。
目を開けたらまた同じことが繰り返すだけか?
真実を知ろうと思ったが、その先はどうすればいいのかわからなかった。
そもそも、何が起きている?
冷たくて硬い何かが、一晩中つねっていた腫れた頬にそっと触れた。
磨かれた木でできた指だ。
その感触を彼女はよく知っていた。
キャビネットから出てきた「あれ」が近づいてきた。
もっと近くへ。
木の匂いと、それに跳ね返る自分の息を感じた。
そして離れた。
カチャ、カチャ。ギーッ、キーッ。
次に何かが加工される音がした。
何かが組み立てられている音。
アルエットは椅子に座ったまま、人形の腕以外は動かなかった。
その手が何をしているのか感じることはできず、目を開ける勇気もなかった。
わかっていたのは、それが動いているということだけだった。
球体関節が独立して回転するのを肩の皮膚越しに感じた。
誰が何を作っているのか、なぜ秘密なのか?
いつから?
人形たちは知っているの?
どうすればいい?
恐怖が高まり、息が詰まった。
こすれる音はすべて止んだ。
「あれ」がカタカタと近づいてきた。
また彼女の顔を覗き込んでいた。
もう耐えられなかった。
目を閉じたまま、彼女は目の前にあるものを突き飛ばし、工房から走り出した。
家中に木と金属がぶつかる音が響き渡った。
リビングルームでは、6体の布人形がまだ何も知らずに眠っていた。
少なくとも、彼女はそう願った。
人形たちへの信用は揺らいでいたが、それでも彼女は逃げるために急いでバスケットを脇に抱えた。
ドアノブをひねりながら靴に飛び込み、アルエットは振り返ることなく森へと全力疾走した。
人形の手は再び彼女のものになったが、それを信用するのは別の話だった。
梢が星明かりを遮り、森の中を進むのは困難だった。
どこに走っているかはどうでもよかった。
追っ手はいなくても、ただ家との距離をできるだけ取りたかった。
1分後、バスケットから呼ぶ声が聞こえた。
「アルエット? アルエット! 大丈夫?」
ポピーが微かな声で囀った。
他の5体の人形は眠ったままだった。
アルエットは走るのをやめた。
バスケットを地面に置き、手と膝をついて崩れ落ち、息を整えた。
アドレナリンは引いて、ただ震えていた。
ポピーはバスケットの縁までパタパタと歩いてきた。
「どうしたの?どうしてこんなところにいるの?」
「工房のキャビネットには何が入っているの?」
平静を保とうとしながらアルエットは喘いだ。
籐がきしむほど強くバスケットを握りしめた。
ポピーは微笑む縫い目に手を当てた。
「え? あの……」
「私に何を隠しているの? どうして今までこんな当たり前なことに気づかなかった?」
葦の一つが裂け、ポピーがわぁっと咽んだ。
「私たちはどうやって出会ったの? 私は誰? どうして誰も何も教えてくれないのよ!?」
これほど憤った記憶は初めてだった。
叫び声の反響が森を揺るがした後、静寂が訪れた。
ポピーは泣き出した。
つまずいたり、おもちゃを取り上げられたりした時に、人形たちがする子供っぽい泣き声ではなかった。
いや、小さなポピーはその言葉に傷ついたかのように泣いた。
これ以上アルエットを怒らせないよう、ポピーは嗚咽をこらえた。
「わ、わからないの。ごめんなさい、アルエット。怒らないで。お願いだから怒らないで」
ポピーはしくしく泣いて、本物の子供のように縮こまった。
「お願いだからベッドを壊さないで。みんなのお気に入りなの」
罪悪感が胸を刺した。
それはアルエットの心の苛立ちに打ち勝った。
たとえポピーが演技をしていたとしても、彼女は後悔するようなことをしてしまった。
怯える人形を両手で抱き上げ、謝罪の言葉をささやき、自分も少し泣き始めた。
ポピーは柔らかい手でアルエットの濡れた頬を拭いた。
数滴の涙で布を濡らすには十分だったが、布人形は気にしていないようだった。
ポピーは心配事を忘れ、アルエットが落ち着くまで撫で続けた。
そして落ち着くと、彼女はポピーを他の人形たちと一緒にバスケットに戻した。
それから立ち上がり、さよならを言って歩き去った。
まだ混乱し心配していたポピーは、徒歩で追いかけようとした。
数歩進んだところで顔から倒れた。
片方のボタンの目がぶら下がり、彼女はすすり泣いた。
肩越しに振り返り、アルエットはため息をついて戻り、人形をすくい上げてバスケットに戻した。
ポピーは眠そうに落ち着き、アルエットが家まで歩いて戻る間、それ以上何も言わなかった。
見張り人形たちが家への道を指し示した。
逃げるための全力疾走の間、現れなかったのに。
✦ ✦ ✦
玄関のドアは大きく開いていた。
一見すると、他には誰もいないように見えた。
しかし、家からかなり離れた場所で立ち止まっても、わかった――何かが戸口に立っていた。
ぼんやりとした影から見えたのは、胴体、右腕、頭のばらばらな姿が大人と同じくらいの高さで「立っている」ことだけだった。
わずかな星明かりにきらめく赤いワイヤーがその体を吊るしていた。
再び恐怖が押し寄せた。
アルエットはポピーや他の人形たちに警告したが、返事はなかった。
彼らは皆、ただの布の山のようにぐったりとしていた。
かつて生きていたのかどうか疑うほどだった。
戸口から男の声が響いた。
その低い声は、壊れてきしむ歯車のようにガタガタと鳴った。
「人形たちは何も悪いことはしていない。許してやってほしい。彼らは知っていることをしただけだ。ポピーたちは君を愛している」
その言葉は理にかなっていて親切だったが、他人事のようで口調は表面的だった。
アルエットはバスケットを草の上に置きながら、そのシルエットから目を離さなかった。
あれは微動だにしなかった。息もしていなかった。
彼女の心を見透かしたかのように、こう言った。
「隠し事をするのは趣味じゃない、愛しい人。しかし、今回の君は不安定だ」
アルエットは親密な呼びかけにひるんだ。
「『今回』って、ど、どういう意味?」
彼女のために、その姿は答えなかった。
それに気づくと、彼女は敗北感にうなだれた。
この状況は知っているよりも複雑だったが、一つ確認しなければならないことがあった。
「あなたが私をこんな風にしたの?」
とささやき、傷ついた目の上に手をかざした。
「断じて違う」
最初の感情、ほとんど悪意のある憤り。
まるでアルエットを傷つけるという考え自体が馬鹿げているかのように。
彼女は驚いた。
「なぜキャビネットに隠れていたの?」
「こんな見苦しい姿を見せたくなかった。それに……」
と答え、考え込むように黙り込んだ。
「3年前、君は私を嫌いだと言った。二度と会いたくないと」
「どうして?」
「わからない。今姿を見せてしまったことは申し訳ないと思っている」
これは真実だった。
魔女は嘘をつけられない。
そして悲劇的なことに、この魔女は人の心を理解できなかった。
「私を誘拐したの?」
沈黙。
思いやりのある人間的な答えを返したいと思っても、それは不可能だった。
「厳密には、そうだ。人はおそらくそう見るだろう」
アルエットは凍りつき、その意味をほとんど処理できなかった。
これほど正直な答えが返ってくるとも思っていなかった。
残念ながら、それ以上の答えは来なかった。
「愛しい人。私のかわいいアルエット」
その姿は甘くささやいた。
彼女は顔をしかめ、一歩下がった。
「真実を知れば、君は死ぬ」
血の気が引いた。
これは脅しではなく、心配からの警告だった。
魂のどこかで、それを知っていた。
魔女はすでにできる限りのことを話していたのだ。
彼女の安全のために。
「私たちの家に戻ってきて欲しい。君が幸せな生活を送る為なら、我々は全力を尽くす。答えを与えることはできないが、世界の他のものは何でも君のものだ。何でも」
魔女は約束し、暗闇の中で重くガタガタと音を立てて、一歩踏み出した。
「街への旅行でも――君だけの街でも――気に入らないものの首でも、君の望みは私の命令だ」
昔、私はそういうものが欲していたの。
「君の願いを叶えよう。たとえ、この命が尽きようとも」
影の中から、その姿は右腕を上げ、手を差し伸べた。
薄暗い光がその手足を照らし、ワイヤーの反射で深紅色に染まっていた。
離れていてもわかった。
その手は、彼女の手と同じサイズ、同じ素材だった。
✦ ✦ ✦
何も追いかけてこなかったのに、アルエットは走った。
その姿は止まれとも、待てとも命じなかった。
ポピーは目を覚まさず、懇願もしなかった。
森の見張りたちは邪魔をしなかった。
家から、人形のバスケットから、そしてこれまで支えてきたすべてから逃げ出し、孤独な少女は空虚な自由を手に入れた。
彼らがそうさせたのだ。
それは以前から頭の片隅にあった考えだった。
何度も何度も、疑念を棚上げにしてきた。
しかし今、真実が心の最前線に浮かび上がり、唇からこぼれ落ちた。
「私は本物の人形の魔女じゃない」
としわがれた声で言った。
見えない糸が切れたかのように、人形のパーツは走っている途中で動かなくなった。
彼女は草むらに転がり込み、義足が滑り落ちた。
息を切らしながら、アルエットは膝立ちでバランスを取り、左肩を掴んだ。
腕は繋がったままだったが、指は反応しなかった。
最初、彼女は人形の手をソケットから引き抜こうとした。
びくともしなかった。
あんなに脆くて大切に見えた木の義肢は、今や鋼鉄の足枷のように肌を締め付けていた。
やり場のない感情に圧倒され、彼女はブラウスのボタンを外し、左袖を脱ぎ捨て、肩の球体関節を引きちぎろうとした。
無益だった。
周りの地面が深い裂け目の縁であることに気づいていなかった。
暴れているうちに、彼女は縁から転落し、「彼」がいなければ落ちていただろう。
人形の手の関節から赤いワイヤーが飛び出し、木に引っ掛かって安全な場所へと引き戻した。
安全な土地に着くと、糸は消え、一時的な光の火花となって弾けた。
すべては、常に彼女を救うためだった。
彼女はその手を見つめ、その明白な忠誠心に葛藤し、困惑した。
記憶喪失にもかかわらず、あれ――本物の人形の魔女――には、二度と会いたくないという過去の自分の願いを尊重していた。
つまり、彼は許しを得るまで二度と太陽を見ない覚悟で、ずっと隠れていたのだ。
もっとも、姿を見せなければ、どうやって許したとわかるのだろう?
なぜこれほど献身的で、執着しているのだろうか?
少女には、その魔女の心は理解できなかった。




