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護衛の仕事で成り上がれ  作者: 肩ぐるま


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第37話 トゥデラのファン

ナーシャについては、治療魔法が使えるので、回復役としてパーティに加えることにした。

この世界はラノベのような世界なのに、レベルやステータスがない。ただ、スキルと熟練度があるだけだ。そのスキルも、本人が意識を集中すると頭に浮かんでくるだけで、客観的に確認する方法がない。

異世界から来た俺は、例外的に自分のスキルを見ることができるが、奴隷契約を結んでいても、奴隷たちのスキルを見ることはできない。

一方、この世界には、ペナルティというものがあって、悪事をすればスキルが鈍るらしく、「勤勉はスキルを伸ばす。怠惰はスキルを鈍らせる」と、子供の頃から聞かされて育つらしい。

スキルやペナルティという超常的な現象を、この世界の人々は当然のこととして受け入れているが、超常的な現象をもたらしている神?というか超常的な存在は、意思を持っていて、その意志に反した行動をした場合、俺が経験したように、スキルを封印されるという大きなペナルティをくらうことがあることも分かった。

今回の俺の場合のように、封印を解除するクエストが示されるのは幸運で、スキルが封印されるだけで、クエストが示されない場合も珍しくないそうだ。


超常的な存在が見張っているならば、この世界はもっと平和な社会になっていてもいいはずだが、実際はそうではない。国同士の戦争が絶え間なく起こり、敗れた国の兵士が盗賊になって、力の弱い者を襲う。

そんな社会が崩壊しないのは、人口の7割を超える奴隷の存在と、その奴隷を管理する奴隷管理庁の存在であるらしい。

何故、奴隷が多いと社会が崩壊しないのかというと、大量の奴隷が働いている農場などを、兵士や盗賊は襲わないからだ。

奴隷を傷けると、奴隷管理庁が乗り出してくる。奴隷管理庁の徴税官は、超常的な存在から、特別なスキルを与えられているという。それが、奴隷探知と転移、そして、奴隷に対する犯罪者を罰するギルティという魔法だという。

徴税官には、国内の全ての奴隷の存在と状態を感知することができ、その奴隷の居る場所に転移することが出来るという。おまけに、ギルティは、犯罪者を一瞬で誅殺する広範囲魔法だということだ。

たった1人の徴税官に、他国の軍隊が壊滅させられたこともあると伝えられている。

もっとも、このギルティという魔法は、好き勝手には使えない。

奴隷を助けるために、奴隷に危害を加えようとする相手にしか発動しない。しかも、どの相手にどのような魔法が発動するのかは、徴税官の思うようにはならないらしい。

あまりにも不確定な要素が多いこの異世界だが、その不確定さ故に安定しているともいえなくはない。

つまり、自由に使える、圧倒的な力の存在が許されていないのだ。

王や貴族といえども、徴税官には頭が上がらず、その徴税官は、奴隷に関すること以外では無力である。王侯貴族、奴隷管理庁徴税官、圧倒的多数の奴隷、この三すくみこそが、この世界の安定をもたらしいるらしいが、同時に、その安定は、奴隷ありきの世界という停滞をもたらしてもいる。


さて、新しいメンバーが増えて、王都では物価が高すぎるのでラズラに戻ろうかと相談していたとき、徴税官代理のホゾスから使いが来て、奴隷管理庁に顔を出すことになった。

「この度、吾輩も出世して、管轄が割り当てられましてな。ラズラに赴任するので、ラズラまでの護衛を依頼したい。ラズラに行くのは、そなたたちにも都合がよい話であろう」とホゾス。

「その依頼は、直接か?それとも、商業ギルドを通してか?」とトゥデラが尋ねる。

「ふむ、直接依頼した方が、手数料を抜かれない分、そちらの取り分が多くなる。が、しかし、商業ギルドを通すと有力な実績となりますな。どちらを選ぶかはお任せしますぞ」

「だそうだ。どうする主殿」とトゥデラが俺に聞いてくる。

「商業ギルドの手数料は、いくらだ?」

「報酬の10分の1が手数料だな」

「それくらいならケチらずに、商業ギルドを通してもらったらどうだ。トゥデラはどう思う」

「私もその方がいいと思うぞ」

「それなら、商業ギルドを通してくれ。出発はいつだ?」

「5日後になりますな」

「それなら、こっちもそれまでに準備をしておく。行くのは、馬車か?」とトゥデラが確認する。

「吾輩が乗る馬車1台に、随行者3人は馬ですな」

「馬に乗るのは騎士か?」

「戦闘が出来る文官ですな」

「腕は立つのか?」

「トゥデラ殿から比べればとてもとても」とホゾスは首を横に振る。

このとき、

「馬車に乗るのは、ホゾス一人か?」

「もちろん、一人ですぞ」

「それなら、そちらの馬車にナーシャを乗せることが出来るか?」とトゥデラが思い切ったことを聞いた。

「ナーシャ殿ですか。ふふふっ。よろしいですぞ。吾輩も馬車の中で独りでいるよりも、話し相手があるのは嬉しい」

「それなら我々は、徒歩で行こう。何かあったときに、素早く対応出来るからな」

「そういえば、馬を1頭お持ちでしたな」

「あの馬は売ろうと思っている。路銀が必要だからな」

「それはもったいない。路銀くらい貸しますので、トゥデラ殿が騎乗されてはいかがかな?」と好条件を出してくる。

「利息はいくらだ?」とトゥデラ。

「利息など要りませぬよ。吾輩は、トゥデラ殿の武勇に惚れ込んでおりますからな」

意外なところに、トゥデラのファンが居た。

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