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護衛の仕事で成り上がれ  作者: 肩ぐるま


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第33話 徴税官代理の運命は

「私は、徴税官代理だ。こんなことをしてタダで済むと思っているのか?」

剣を突き付けられながらも、強気な態度を崩さない法務衣を着た男が言い放った。

「お偉い徴税官代理殿は、今は、その命が我々の手の内にあるのが、お分かりにならないようだ」

厳つい顔をした長身の男が、口の片側を吊り上げるような笑みを浮かべて、法務衣を着た男を揶揄う。

「この法務衣を着ている以上、私は公務中である。その私に手を出すと、国家反逆罪。極刑は免れぬぞ」

と、神経質そうな額に青筋を立てる徴税官代理の男。

「役人であることが大層な自慢のようだが、この状況でも自信が揺るがないというのは、信念ではなく愚鈍というものだ」

と言うなり、厳つい顔の男は、剣の柄で法務衣を着た男の顔を殴りつけた。

「ぐっ」

徴税官代理は、顔を押さえてその場に蹲ってしまった。

その隣に立たされていた男は、その光景に怯みながら、

「な、何が望みだ?この奴隷が欲しいなら連れて行けばいい」と交渉を始めようとした。

奴隷商の横には、手首と足首に鉄の枷を嵌められ、猿轡をされたたナーシャが立たされている。

「貴様の意見など聞くまでもなく、その奴隷はもう我々のものだ」

長身の男の後ろに居た、顔立ちは整っているが陰険な眼をした金髪の青年がナーシャに近付きながら宣言した。

「しかし、お前を殺しては奴隷契約の書き換えが出来ない。死ぬ前に、奴隷契約の変更を済ませろ」

そう言いながら青年はナーシャに近寄り、その腕を捕まえて自分に引き寄せた。

「う~、う~」

ナーシャは何かを言おうとしているが猿轡をされているので、唸り声しか出せない。

「奴隷契約の強制は違法ですぞ」

やや小太りの奴隷商は、冷や汗をかきながら正論を吐いて男の要求を拒否しようとした。すると、徴税官代理を殴った男が、奴隷商のブーツの上から足の甲に剣を突き刺した。

「ぎゃー」

ブーツと足を串刺しにされた奴隷商は悲鳴を上げ、地面に足を縫い付けられたまま、その場で尻もちを着いた。

「手間を取らせるな」

と金髪の青年に睨まれ、奴隷商は震えながら首を縦に振った。


ここは自然に出来た洞の中で、土が数メートル盛り上がった斜面の一部が抉れたところを、熊か何かの大型の魔物がさらに土を抉って出来たような自然の洞だが、2メートルばかりの奥行きがあり、数人の人間が雨宿り出来る広さがある。

洞の中で、剣で脅されながら奴隷商は、ナーシャの奴隷主を金髪の青年に書き換えた。


振り返れば、ナーシャの回収は、奴隷管理庁からの依頼だった。

ラズラの街のはずれにある打ち捨てられたような村で、村長の預かりになっている奴隷が、何故か奴隷管理庁の興味を引いた。

そして、その奴隷の回収を、王都で奴隷商館を開いているフロンズに依頼がもたらされた。

しかも、徴税官代理ホゾスを同行させ、腕利きの護衛を1人付けるという力の入れようだった。

フロンズは、護衛を付けるという奴隷管理庁の依頼に、一抹の不安を感じたが、お上の依頼を断れる訳もなく、信頼できる自身の護衛2人を連れて、徴税官代理たちと共に、ラズラのはずれの村に出かけた。


アルディリア王国の奴隷の人口は、アルディリアの全人口の7割を超え、奴隷には人頭税が課されているため、奴隷の人口管理と人頭税の徴収は、王国の一大事業といっていいほどの規模がある。

その分、奴隷管理庁と人頭税徴税官の権力は絶大で、王国の最高位にある大貴族といえども、毎年の人頭税調査を黙って受け入れざるを得ない程である。

そして、徴税官の代理といえども、低位の貴族相手ならば道を譲らせるほどの権威と権力を持ち、その役人が、1人の奴隷の回収に同行するようなことは、異例中の異例といえるものだった。

そして、ラズラのはずれの村で無事にナーシャという目的の奴隷を回収し、奴隷主をいったん奴隷商に書き換えての帰り道で、盗賊に襲われた。

いや、奴隷管理庁がわざわざ同行させた腕利きの護衛が、厳つい顔の長身の男に一瞬で斬り殺されたところから、一行を襲ったのは盗賊ではない可能性が高かった。

徴税官代理と奴隷商とナーシャは、盗賊を名乗る者たちのアジトらしき洞に連れて行かれたが、ここで盗賊たちの首領らしい者が着くまで待機した。

そして今朝、到着したのが金髪の男だった。

ナーシャを自分の奴隷として手に入れた男が、このアジトから出発しようとしたときに、アジトの周辺を監視させていた手下のものらしい悲鳴が聞こえた。

「くそっ、奴隷庁の奴らがもう嗅ぎつけたのか?」

「徴税官代理を殺したので、分かったのでしょう。たまたま近くに、奴らが居たのかも知れません」

「ヒスタン、奴らを食い止めろ。俺は、この奴隷を連れて行く。グレイ、女を担いで着いて来い」

金髪の男は素早く決断して、手下に指示すると、この場所から離脱すべく洞の外に繋いであった馬に駆け寄った。

馬は2頭あり、グレイと呼ばれた手下の1人が、もがくナーシャを肩に担いで、もう1頭の馬に飛び乗った。

2頭の馬が離れて行くのを見て、ヒスタンと呼ばれた厳つい顔の男は、

「アーバン、イッシュ、迎え撃つぞ」

と残った2人の手下に指示を出し、自らも剣を構えて悲鳴がした方へと向かった。

徴税官代理の名前をアッザスからホゾスに変えました。

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