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護衛の仕事で成り上がれ  作者: 肩ぐるま


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31/41

第31話 男としても見て欲しいんだが

茂みを回り込むと、そこにあったのは、半壊した馬車の残骸だった。

「これは、もしかして、追いかけていた馬車か?」

倒れている馬車には鉄格子が使われていて、明らかに普通の馬車ではない、

「これは、奴隷の運搬に使う馬車だな」とトゥデラ。

「私も、こんな鉄格子の付いた馬車で運ばれました」とルージー。

「木材の割れ目が新しい。それほど日が経っていないな」とトゥデラ。

「すると、俺たちが追っている馬車か?」

「奴隷商の馬車が、そうそう走っているとは思えないから、これが追っていた馬車だろう」

「襲ったのは盗賊か?」

「おそらくな」

そんな会話を交わしながら、馬車の残骸と周囲を調べる。

馬車の木材に矢が刺さった跡が幾つもあるが、矢は全て回収されている。

矢は、買うと結構高いから、盗賊が残していくわけはない。シャフトと呼ばれる軸が折れて破損しても、鏃を回収するために、矢そのものを回収する。

殺された死体が無いところをみると、運んでいた奴隷だけでなく、奴隷商や護衛も捕虜にして連れて行かれた可能性が高い。

ただし、草むらには血が黒く固まった箇所が幾つもあったので、殺してから運んだ可能性もある。

馬車に積まれていたかもしれない物は、何も残っていない。

「奴隷だけでなく、奴隷商も護衛も連れ去られたのか?」

「どうやら、そのようだな」とトゥデラが答えながら、地面を調べている。

「地面を調べて何か分かるのか?」と聞くと、

「他人事みたいに聞くな。襲ってきたのは何人か?連れ去られたのは何人か?どの方向に向かって去って行ったか?それを地面から読み取る訓練ぐらいしろ」

またもトゥデラにしかられた。

この世界で意識を取り戻してからかなり経つというのに、俺はまだ甘さが抜けていない。

目に見えない腕という固有のスキルを持っていれば、多少の甘さがあってもこの世界で生きていけるだろうが、普通のスキルしかない今の俺では、何事にも全力を尽くさなければ生き残れないのだ。

その現状をトゥデラに指摘された気がした。


「トゥデラさん。そこまで怒らなくても。私たちは奴隷ですよ」

とルージーがトゥデラに反論しかけたが、俺はそれを手で制して、

「悪かった。トゥデラに頼り過ぎていた」

俺は、ひと言謝り、しゃがみ込んで地面の様子を調べ始めた。


地面を見ても最初は何も分からなかったが、やがて、足跡が見分けられるようになった。

もしやと思ってステータスを見ると、追跡1というスキルが増えていた。

ペナルティをくらってから、スキルは少ないままだったので、ここでスキルが増えたことは正直、嬉しかった。そして、同時に、剣術も6になっていた。

「トゥデラ、ルージー、剣術が6になった。それに、追跡というスキルが身に付いた」

俺が嬉しくなって報告すると、

「はぁ〜、主殿、警戒心が無さ過ぎだ。剣術が6になったことを教えてくれたのはいい。私がそれを求めていたし、全員の生き残りに関わることだからな。だけど、新しいスキルのことまで教えなくていい。いくら私たちが奴隷でも、そこまで信頼するな」

トゥデラは少し不機嫌に言い放った。

するとルージーが、

「トゥデラさん、それは言い過ぎです。旦那様は、奴隷である私たちのことを、家族のように扱って下さっているのです。いつか聞きましたが、旦那様の元の世界では奴隷は居なかったとのこと。だから、私たちは奴隷ではなく、家族のように扱いたいと言っておられました。旦那様のような奴隷主は、どこを探しても居ませんよ。それに、私は旦那様のことが好きです。男女の好きではなく人間としてですが。私は、奴隷でなくなっても、旦那様に尽くしたいと思っています。トゥデラさんも旦那様のことは好きなんでしょう?」


『今、微妙な言い回しをされた気がする。好きと言っても、男女の好きじゃないって、なんか、傷付いたぞ』


「まあ、好きか嫌いかで言えば好きだな。男としては見ていないが、確かに、主殿以上の奴隷主はいないだろうな」


『ぐっ、トゥデラから追い討ちをくらった。男として見ていないだと。さっきより、ダメージが大きいぞ』

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