夕鶴
美咲はその後、子宮発育不全と診断された。
子宮内膜の肥厚が不十分で不妊症や流産となる場合に、子宮発育不全という診断名が下される。
美咲は泣いた。
そして思った。
⦅私のせいだったんだ。
私のせいで……生まれられなかったんだ。
ごめんなさい。ごめんなさい。⦆
⦅翼さん……貴方の子どもを……私では産めないわ。
私では駄目………駄目なの……ごめんなさい。⦆
美咲は思い詰めていった。
思い詰めた美咲の頭の中に「離婚」の二文字が現れた。
美咲は⦅何時、話せばいいのか? 翼さんには、健康な人がいい。あの……人……なんていうお名前だったかしら?…………み……み……あの人なら翼さんは幸せになれるわ。きっと………。⦆と思うようになったのだ。
翼の隣で休んでも、なかなか寝付けなかった。
優しい翼を幸せに出来ない私――そう美咲は思い詰めている。
そのうちに闇が美咲を包んだ。
与ひょうは、ある日罠にかかって苦しんでいた一羽の鶴を助けた。
後日、与ひょうの家を「女房にして下され。」と一人の女性つうが訪ねてくる。
夫婦として暮らし始めたある日、つうは「織っている間は部屋を覗かないでほしい。」と約束をして、素敵な織物を与ひょうに作って見せる。
つうが織った布は、「鶴の千羽織」と呼ばれ、知り合いの運ずを介し高値で売られ、与ひょうにもお金が入ってくる。
その噂を聞きつけた惣どが運ずとともに与ひょうを嗾けて、つうに何枚も布を織らせる。
約束を破り惣どと運ず、さらには与ひょうまで、織っているつうの姿を見てしまった。
そこにあったのは、自らの羽を抜いては生地に織り込んでいく、文字通り"我が身を削って"織物をしている与ひょうが助けた鶴の姿だった。
正体を見られたつうは、与ひょうの元を去り、傷ついた姿で空に帰って行った。
そのつうは美咲だった。
「さようなら……私は、もう去るしかありません。
さようなら……幸せに……幸せになって……。」
⦅本当は別れたくない! 別れたくない!⦆
悲しくて来るしくて辛い――その時、美咲は目を覚ました。
まだ外は暗かった。
それからは、一睡も出来ずに朝を迎えた。
美咲が寝たのは、短い時間だった。
『夕鶴』は、木下順二作の戯曲で、「鶴女房」(内容は鶴の恩返し)を題材としています。(Wikipediaより一部抜粋転載)




