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名残りの雪  作者: yukko
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悲しい別れ

妊娠中の美咲を翼は大切にした。

それは周囲が羨むほどに………。

やっと美咲は⦅喜んでくれているんだ……嬉しい。⦆と感じる日々を過ごせている。

それが、妊娠22週で美咲のお腹の中で息絶えていた。

二人の愛の結晶が……。

病院での超音波検査で胎児の心拍の停止を確認されたのだ。

処置について医師から説明を受け、書面による同意をした。

処置の開始日について相談し、日程を決めた。

また、入院の持ち物や分娩の流れなどの説明も受けた。

説明を受けても美咲の頭の中に全く入って来なかった。

一緒に病院へ行った翼が全て聞いてくれた。


「ごめんなさい。私のせいで……。」

「美咲ちゃんのせいじゃない!」

「私………ごめんなさい。ごめんなさい。」

「美咲ちゃん……。」


美咲は幾度も謝った。

翼に……そして、お腹の中に居る息絶えた我が子に……謝り続けた。



入院の日、父と母が来た。

翼の母も来た。

姉も兄も美咲の心を心配している。

分娩を終えた美咲に医師は言った。


「お母さん、お疲れ様でした。」

「……あ……ありがとう」

「ありがとうございました、を言わなくていいんですよ。

 死産を『ありがとう』と言えるお気持ちではないでしょう。

 気持ちに蓋をせずに、泣きたいだけ泣いて下さい。

 ………これから赤ちゃんを抱いて頂きますね。

 家族だけの時間を過ごして下さい。」

「はい。」



翼が名前を書いた紙を見せた。「命名 かける

皆が「いい名前。」と言った。

手形足形を取り、用意したベビードレスを着せた。

美咲は翼と……そして両親と姉兄、翼の母……家族親族で赤ちゃんを抱いた写真を何枚も撮った。

へその緒を残した。

母乳で湿らせた綿棒を口に含ませて、ミルクをあげた。

一人ずつ書いた手紙をお棺に入れた。

お花も、美咲と翼の写真も、双方の祖父母の写真も、伯父伯母の写真もお棺に入れた。

我が子との別れの時間は、やって来た。

火葬しないといけない。


美咲は小さな小さなお棺を抱き「嫌ぁ―――っ!」と声を上げた泣き、火葬場へ連れて行くのを嫌がった。

そんな美咲を抱き締めながら、翼は優しく言った。


「翔は俺達の傍に居てくれるよ。

 これから先、ずっと一緒に……。

 だから、天国で遊ばせてあげよう。

 きっと友達も一杯出来るよ。翔に……。」

「どうしても嫌なの……。」

「美咲、このままじゃ駄目だって分かってるのよね。」

「………………分かってても嫌なの。」

「私も流産したわ。」

「え? お母さん?」

「死産より悲しくないと思うかもしれないけど、悲しかったわ。

 苦しかった。」

「お母さん………。」

「でもね、大丈夫よ。

 美咲には翼君が居るでしょう。

 一人じゃないのよ。」

「俺が傍に居るよ。翔も傍に居てくれるはずだ。

 お義父さんにお任せしてもいいですか?

 俺は美咲ちゃんに付き添っています。」

「分かった。美咲を頼みます。」

「はい、お義父さん。」


翼以外の人達が小さなお棺を抱き締めて帰って行った。

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https://furansugonosekai.com/the-nightingale-and-the-rose/
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