妊娠
自信の無さが美咲に嘘を吐かせた。
嘘を吐いたまま翼の優しさに包まれて日を過ごしていた。
流産手術から1週間後、美咲は診察を受けた。
「子宮が回復しているかどうかを診るので、1週間後に必ず受診してください。
予約を入れておきますね。」
医師がそう説明した。
受診した頃には美咲の術後の出血は収まっていた。
「子宮が回復していますので、次の生理が確認されたら妊娠も可能です。
可能ですが、妊娠は生理を2回は確認してからにして下さいね。
出来れば3回が望ましいです。
子宮の状態が安定してからの妊娠が望ましいです。
それと、基礎体温を測って下さい。
体のリズムが戻っているかも併せてチェックすると、体の状態を正確に把握出来
ますから、ね。」
「はい…………あの、先生。」
「はい。」
「避妊って、どうすれば………。」
「ご主人にコンドームを使って頂ければ良いと思いますよ。」
「……あの……私……私……どうすれば…………。」
「坂東さん? 大丈夫? ではないですね。
ご主人に話せないのですか?
坂東さん、女性が避妊することが出来る方法はありますよ。
経口避妊薬が……飲みますか?」
「はい。お願いします。」
「では、処方しておきますね。」
「ありがとうございます。」
「坂東さん、夫婦で妊娠のことを話し合うのは大切ですよ。
貴女の身体のことをご主人に知って頂くのは大切なことです。
避妊のことだけではなく、理解して頂きましょうね。
貴女の身体とお腹に宿るかもしれない胎児の為にも、ね。」
「…………はい。」
美咲は医師の言葉の意味が分からなかった。
翼はDVをしていない。
まるでDVをしている夫のように医師は感じたのではないかと美咲は思った。
翼への罪悪感で美咲は苦しくなった。
翼のスマホに美玖からメッセージが届いた。
翼がリビングへスマホを置いてキッチンへ行っている間だった。
「翼、久し振り。
私、日本に帰ることになったの。
帰ったら会いたいわ。」
そのメッセージの通知画面を美里は見てしまった。
美咲が二度目の妊娠をしたのは、流産から1年後だった。
メッセージが届いたのは、その時だった。




