嘘
美咲は三日間会社を休んだ。
翼も会社を休もうとしたが、美咲が嫌がった。
「病院へ行くよ。俺も!」
「いいわ! 一人で行くから……。」
「俺は一緒に行って、美咲の身体が大丈夫か直接、先生に聞きたいんだ。」
「………私、もう子どもじゃないわ。」
「そういう意味じゃなくて……心配だから……なんだ。
もし途中で具合が悪くなったら……その時に俺が傍に居ないのは嫌なんだ。
だから、二人で行こう、な。」
「私、一人でも大丈夫よ。」
「美咲ちゃん!」
「何時までも大人になれてないような………心配してくれるのは嬉しいの。」
「だったら!」
「でも、一人で行きたいの。お願い!」
「駄目だ!」
「駄目って………じゃあ、お姉ちゃんに頼むわ。」
「お義姉さんって……仕事してるだろ?」
「じゃあ、お母さんに頼むから、ね。いいでしょう?」
「お義母さんなら……絶対に!だよ。」
「うん!」
「……なぁ、美咲、病院での結果は必ず俺に教えてくれ。頼むよ。」
「うん、分かった。」
翼に美咲は昼食時にメッセージを送ったら、直ぐに翼から電話が架かって来た。
美咲は翼に嘘を吐いた。
一日、家に居てベッドで横になっていたのに……嘘を吐いた。
「先生が少し貧血気味だから、ゆっくり休みようにって……。」
「貧血? 原因は? 病名は?」
「病名!………あの……前から……その……貧血だったの。」
「前から? そうだったのか……。
食事で良くなるのか? 少しでも改善できる?」
「うん、鉄分を多く含む食事を心掛けなさいって。」
「そっか……鉄分、か。
買い物をして帰るから、食事も洗濯も掃除も全て俺がするからね。
美咲は何もせずに寝てて! いいね。」
「うん、ありがとう。」
「まだ、俺、何もしてないよ。」
「……嬉しいから……。」
「そっか、じゃあ、今日はなるべく早く帰るから、食事を作ったりせずに待ってる
んだよ。いいね。」
「うん、待ってる。」
美咲は「三日間、安静にして下さい。」と言われた通りに軽い家事だけをするつもりだったが、翼は美咲に何もしないように言った。
食事の支度も翼がして夕食後には、美咲を直ぐに休ませた。
美咲が初めて翼に嘘を吐いた。
それは苦い思いだけが残った。
一生吐き通す嘘だった。




