初めての寂しさ
あの日から翼とメッセージや電話で連絡を取っているが、会えていない。
翼とメッセージのやり取りをするなど、少し前の美咲では考えられないことだった。
⦅電話で先輩の声を聞けるなんて……考えられなかった。
それなのに……会えないのが、寂しい……悲しい……。⦆
今日、仕事を終えて会社を出て駅に着いた。
駅のホームで電車を待っていたら、翼がやって来た。
隣には会社の男性社員たちが居た。
「美咲ちゃん、お疲れ!」
「お……お疲れ様でした。」
それだけだった。
その時の会話は……。
電車がホームに滑る込むように入って来て停車した。
電車に乗った。
皆、同じ車両で、男性社員たちは和やかに談笑している。
それを見ながら、美咲は寂しさが募った。
美咲が降りる駅より早く、男性社員たちは降りる駅に着いたようだ。
美咲の方を振り向き声を掛けて行く。
「俺達、次で降りるから、美咲ちゃん、気をつけて帰るんだよ。」
「美咲ちゃん、気をつけて!」
「は……はい。」
「美咲ちゃん、また明日。」
「また明日ね。美咲ちゃん。」
「はい……また、さようなら。」
電車を降りて行く翼を見送った。
美咲は寂しくて堪らなかった。
⦅本当に付き合ってるのかな? 先輩と私……。
毎日、会いたいって……思ってしまう私は……我儘なの?
付き合うって……どのくらいなの?
会うのは、どのくらいなの?
分かんない……分かんない……不安……。
付き合うって、こんなに苦しいの?
………それとも、夢だったのかな?⦆
悶々としたまま美咲は電車の窓から景色をボンヤリと見ていた。
⦅前は……片思いの時は良かったな……こんな……。
こんなに寂しくなかった……な………寂しくなかった……よ。⦆
美咲の自宅の最寄り駅に着いた。
バッグの中のスマホは光り、メッセージの通知を表示している。
美咲は、それに気付かぬまま歩いている。
夜空を見上げると、今夜は曇っているようで、星が一つも見つからなかった。
今の美咲は、夜空の星を翼と二人で見た日が遠い昔のようで、現実には無かった夢の世界のような気がしている。
「ただいまぁ~。」
「お帰り、手を洗って来なさい。」
「はぁ~~い。」
お父さんももうすぐ帰って来るって連絡があったの。
3人揃って食べるの久し振りだわ。」
「そうなの、洗ってくるね。」
久し振りに親子三人が揃って夕食を摂った。
夕食の後、入浴した美咲は両親に「もう寝るね。お休みなさい。」と声を掛けてリビングを出た。
自分の部屋に入ってから、思い出したようにバッグの中からスマホを取り出した。
目覚まし時計代わりに使っているスマホ。
寝る前には必ずバッグから出している。
スマホを手にしても、美咲はアプリを開かなかった。
美咲から溜息が漏れた。
翼からのメッセージを期待してしまっている自分に気付いたからだ。
⦅もう、寝よう。
明日は……休みだけど、早く起きよう。
お父さんと散歩でも行こうっと。⦆
ベッドに横になって、寝付けなくとも目を閉じた。
真っ暗な中に一人の美咲――そう感じた。
美咲が初めて感じた寂しい夜だった。




