夢見るお年頃
翼の告白を受けた日から夢の中にいるような日を美咲は送っている。
未だに信じられない気持ちなのは、何もかもが初めてだったからでもある。
異性からの恋の告白も、二人っきりで過ごした時間も、異性とのメッセージのやり取りも、電話での会話も……全て美咲にとって初体験だ。
美咲は周囲の同い年の女性より幼い。
姉と兄に守られて、箱の中に居た。
ようやく、その箱から美咲は外に出たのかもしれない。
美咲は部屋の窓を開けて、夜空をうっとりと眺めた。
星の瞬きを見て、翼と見た夜空の星を思い浮かべている。
「こんなに幸せでいいのかな?
先輩と………こい…びと……!」
美咲は夜空を見ながら何時しか一つの曲を思い出した。
頭の中で以前にCS放送で見たディズニー映画の「眠れる森の美女」の曲が流れ出したのだ。
歌詞を全て知っているわけではない美咲は、歌詞の同じ部分を繰り返している。
「♪あ~な~た~を いつも夢に見て~
そのひ~とみさえ とても懐かしい♪」
これが繰り返されている。
歌詞の中のその部分は、美咲の恋心を歌っているように美咲は思っている。
思わず口ずさんでいた。
母に声を掛けられて、美咲は入浴した。
お風呂でも口ずさんでいたようで、浴室から出た美咲に父が「ご機嫌だな。」と話し掛けた。
「え…………そんなこと、ないよ。」
「そうか? それにしても、そんな古い映画の曲。
美咲が知ってたなんてな。驚いた。」
「そう? テレビで見たよ。」
「そうか、テレビで見たのか。」
「うん、美しいお姫様とカッコいい王子様……。
素敵だったなぁ~。」
「そうか……まだまだ夢見るお年頃なんだな。美咲は……。」
「あのね、お父さん。」
「うん? なんだ?」
「夢見るお年頃って何歳まで?」
「まぁ、15歳くらいまでかな?」
「え゙! 15歳まで?」
「まぁ、そんな感じだな。」
「お父さん! 私、19歳!」
「まぁ、なんだ……美咲は……身体は大きいが、可愛い末っ子だからな。」
「お父さん! もう! 私、中学生じゃないもん。」
「そっか、そうだな。」
「お父さん、あっという間ですよ。」
「何がだ。」
「美咲がお嫁さんになる時は、あっという間にやって来ますよ。」
「何言ってんだ。まだまだ子どもじゃないか。」
「そう思ってたら、美琴は連れて来たでしょう。」
「もう、言うな! 美琴も嫁に出したくなかったんだからな。
美咲、ずっと居てもいいんだぞ。」
「うん。」
「駄目よ。なるべく早く自立して頂戴。」
「おま」
「お前って……何ですか?」
「もう、いい! 寝る。」
「そうですか、おやすみなさい。」
「ふん!…………おやすみ。
美咲も早く寝なさい。」
「はい。」
美咲は自分の部屋に入って静かにドアを閉めた。
スマホの画面を見た。
もう翼からのメッセージは届いていない。
それを残念に思った。
ベッドに横になり天井を見ていた。
⦅眠れないかも……。⦆と思いながら過ごしていると、いつの間にか寝ていた。
そして、その睡眠は美咲を夢の世界へと誘った。




