初めてのデート?
駅のホームで美咲は待っていた。
ホームのどこで待っていただ良いのか分からなかった美咲は、待つ間は心細くもあった。
⦅ホームのどのあたりで待てばいいの?
真ん中辺り? 後ろの方?……どうしよう……分かんない。⦆
そして、何度も翼から貰ったメモを見た。
場所の指定は無かった。
ホームのベンチに座ったり立ったり……美咲はどう待てば良いのか分からない。
どのくらい経ったのだろうか……メモを見ていたら翼の声が聞こえた。
「ごめん。待たせてしまって……。」
「!………いいえ……そんなに……待ってません。」
「否、待っただろう?
ごめんな………あのさ、」
「いいえ、だいじょう……?
あの、何か……?………言い掛けられました?」
「あ、いいよ。
何か食べに行かない?」
「食べに……。」
「うん、夕食を一緒に、って思ったんだ。
駄目だった?」
「……い…いえ。大丈夫です。
母に連絡したらOKです。」
「そっか……良かった。」
美咲はスマホを取り出して画面を見た。
翼からの新着メッセージの通知があった。
「あ゙~~あ!」
「何? 何?」
「済みません。スマホ見てなかったです。」
「あぁ……いいよ。」
⦅………昨夜のも返信なかったし……。⦆
「済みません。
あの……それに……返信しなくって………昨夜の……メッセージ……。」
「うん、いいよ。」
「今朝、読んだんです。
読んだのに返信しなくて本当に済みません。」
「いいよ。これから一緒に食べに行ってくれるから。」
「これからは気をつけます。」
「これからは返信してくれるんだ。」
「勿論です!」
「ありがと。」
美咲は母にメッセージを送った。
但し、翼と一緒とは伝えなかった。
二人で電車に乗った。
美咲の家に帰る方向の電車に乗った。
美咲が想いを寄せていた先輩と二人で電車の乗って居ること自体が夢のようだった。
翼から何かを話し掛けられて答えるのが精いっぱいの美咲だった。
美咲が降りる駅までの途中で「ここで降りたことある?」と翼が聞いた。
美咲は「ありません。」と答えた。
「じゃあ、ここで降りてみようか。
駅前に大型商業施設もあるし……どう?」
「はい。」
「何か食べたいものある?」
「……いいえ……別に……。」
「何がいいだろうな?」
そんな他愛ない話をしながら電車を降り改札を出て駅前を歩いた。
俯いて歩く美咲に翼は「綺麗だね。少ないけど、星が煌めいてる。」と夜空を指さした。
翼が指さした夜空を見上げた。
確かに少ないけれども、その少ない星が煌めいて光っている。
「綺麗。」
「うん、綺麗だね。」
翼が「あそこに入ろうか?」と指さした店はパスタ専門店だった。
「はい。」と美咲は答えて、二人で店に入った。
感じがいい店だった。
美咲は緊張の余り、その時にどんなパスタを食べたのか覚えていない。
二人で夕食を食べた後、翼は美咲を「家まで送る。」と言った。
どう答えればいいのか分からなかったが、美咲は翼と⦅まだ一緒に居たい。⦆と思った。
気が付いたら、美咲は頷いていた。
二人で電車に乗り、美咲の自宅最寄り駅で降りた。
二人で初めて駅から歩いた。
家が近づく。
⦅まだ一緒に……居たい……のに……もう、家に着いてしまう。⦆
美咲の家が目の前。
「今日はご両親に挨拶せずに帰るよ。」
「は…はい。」
「今日はありがとう。」
「いいえ、あの……。」
「何?」
「私の分、お支払いしてないです。」
「今日は俺が誘ったから、ね。」
「でも、さっきも受け取って頂けませんでしたし……。」
「じゃあ、今度は奢ってよ。」
「今度……ですか?」
「うん、今度……美咲ちゃんから、スィーツの店とか誘って欲しいな。」
「スィーツ……ですか?」
「うん、男一人じゃ入りにくいんだ。
だから、美咲ちゃんと一緒なら入れるし……。」
「先輩、甘いの……お好きなんですか?」
「好きだよ。」
「……じゃ……じゃあ、次は……私が奢ります。」
「うん。期待して待ってる。」
「きたい!」
「そう、待ってるから誘って欲しい。」
「は…はい。」
「美咲ちゃん。」
「はい。」
「また明日。」
「はい。」
「おやすみ。」
「……おやすみなさい。」
美咲は駅に向かって歩いていく翼の後姿を見つめ続けた。
夢のような時間が終わった美咲を夜空の星が煌めいて包んだ。




