戸惑い
着替え終わった植松から声を掛けられた。
「美咲ちゃん、私ね……今日デートなの。
だから、駅前で別れようね。」
「はい。川崎さんとデートですかぁ~いいですね。」
「うん、まぁね。
そのうち、美咲ちゃんもデートするようになるわよ。」
「え……………。」
「コラっ、固まらない………うふふ……。」
「……………………。」
「あれっ? 今日は言わないの?」
「な……何をですか……。」
「私なんかに、ってやつよ。」
「え…………。」
「いつも必ず言ってたのに、今日は言わないってことはぁ………?」
「植松さん、川崎さんが待っておられるかもです。」
「あらぁ~? 逸らかしたりしちゃうのぉ~?」
「逸らかしてません。」
「そぉ~?」
「はい。」
「じゃあ、そういうことにしておきましょう。」
「植松さぁ~~ん。」
「はいはい、じゃあ、また明日。」
「え?」
「更衣室でバイバイするわ。
その方が良さげだから……。」
「植松さぁ~~ん。」
「じゃあ、さようなら、っと。
気をつけて行きなさいよ。
坂東君が待ってくれって言ってたりして。」
「へ…………………?」
「じゃあねぇ~。」
植松は更衣室に残っている女子社員たちに「お疲れ様でした。お先に失礼します。」と言いながら更衣室を出て行った。
美咲は植松が何故「坂東君が待ってくれって言ってたりして。」と言ったのか分からなかった。
そして、メモを胸に抱いたまま一人で駅に向かった。
バッグに入れた美咲のスマホの画面が光り通知を表示しているのに、美咲は気付かぬまま駅に向かって歩いた。
メモで胸の鼓動を押さえるかのように抱きながら歩いた。
少し戸惑いながら美咲は駅のホームを目指した。




