第8話 異世界に物を持ち込むと起きる事
マサオ「困った事になりましたわ」
マサオは悪役令嬢に転生していた。女神が風邪を引いてクシャミをしたせいで手違いが起きたのだ。女神の風邪が治るまで元の姿に戻る事は出来ないらしい。そして大きな問題があった。
マサオ「何をすれば良いのでしょうか?」
マサオは悪役令嬢をよく知らなかった。男だったので乙女ゲームは避けていたからだ。つまりマサオが辿り着いた答えは悪役令嬢としては0点だった。
マサオ「若い女性が積極的にやる事と言ったら…婚活ですわね」
マサオは料理教室に通い始めた。結婚相談所の経歴の備考欄に料理が得意だと書くためだ。
マサオ「甘くて美味しいスイーツを作って差し上げますわ!」
ノリノリである。異性に憧れを持つのは誰にでもあるのでおかしい事ではないがここでマサオはある事に気づく。
マサオ「この世界の食べ物はあまり美味しくありませんわね…」
その言葉を聞いて風邪を引いている女神がマサオに話しかけてきた。
女神「異世界は文明レベルが低いので品種改良が進んブァァーックション!」
マサオ「ばっちいですわ」
女神「化学肥料も無かったり農地を巡った戦いで荒らされたりで収穫量も高が知れます…ズビビッ!」
マサオはクッキーにチョコレートで顔を描きながら女神に質問する。
マサオ「異世界転生って食に拘る文化圏から来た人には地獄ではなくて?」
女神「なので所望されるチート能力は食事関連を選ぶ方も多いですね」
マサオ「では私もそういたしましょう」
料理教室を飛び出したマサオは悪役令嬢として所有している土地の一角に来た。そして女神に欲しいチート能力を言った。
マサオ「私が元々居た世界の作物で農業がしたいですわ。そこから作物の種や木と肥料を転送するチート能力をお願い」
女神「分かりました」
悪役令嬢の体を借りているマサオが一瞬光ってチート能力の付与が行われた。実はマサオは異世界で農業をすることに憧れていた。だったら異世界転生なんてしなくて元々居た世界でやれば良かったんじゃない? と思うかもしれないが異世界というブランドが大切なのだ。
マサオ「みかんの木を転送!」
マサオが転送魔法を唱えると目の前に数本のみかんの木が現れた。
マサオ「異世界には無いこの美味しいみかんを売れば大儲けですわ!」
女神「そう上手く行けば良いのですが」
収穫したみかんは好評だった。しかし暫くすると問題が起きた。虫がみかんの木をかじって傷付けていた。
マサオ「キャーーー!!! 何ですのこれは?!」
女神「害虫のカミキリムシですね。転送する前から木に卵が産み付けられていたのでしょう」
マサオ「てめぇマジふざけんなよこの野郎!」
虫を潰したマサオは女神に泣きついた。
マサオ「何とかなりませんの?!」
女神「害虫の天敵は鳥です。なのであなたが居た世界では鳥獣保護法があったのですがこの異世界にはありません。ハンターが獲物として全て狩ってしまうのです。魔法や手作業で対策しようとするとコストや時間がかかるので異世界で農業は難しいのでは?」
落ち込んでいたマサオにメイドが慌てて駆け寄ってきた。
メイド「大変ですお嬢様! 町で病気が流行っていて人が沢山亡くなっているそうです!」
マサオ「何ですって!」
マサオが町に行くと何人もの人が荼毘に付されていた。感染力が高い疾病らしく他にも多くの者が倒れていた。
マサオ「この病気は一体何処から…」
女神「あなたが持ち込んだ作物からですね。あなたが居た世界のウイルスへの耐性がこの異世界の人達には無かったのです。このペースだとこの異世界の人間の半分が亡くなるでしょう」
マサオ「そんなに?!」
女神「もちろん魔女裁判の様な副次的被害も出るでしょうね」
マサオは自分が捕まってしまうのではないかと恐怖した。しかし丁度このタイミングで女神がマサオを救った。
女神「あ、私の風邪が治ったのであなたを前の体に戻しますね」
悪役令嬢であるマサオの体が光るとマサオの精神体は悪役令嬢になる前の体に戻って行った。そしてその場には災厄を招いた大罪人として処罰される事になる元の精神体を取り戻した悪役令嬢が取り残されたのだった。




