第95話.昔美少女、今ヲタク
雨の中ポンチョにくるまって横になる、戦争って本当に惨めよね、ポンチョを叩く水音は酷くなる一方。
なんか熱くない?空を見上げるとシャワーのノズルから水が出ている。
わたしは白い糸になって陰毛の溜まった排水溝に流されて……
とりとめの無い夢から覚めると、フカフカのベッドに白いカーテン。
窓からは青い海が見えるリゾート地の朝よ、熱いと思ったのは爽やかな日差しが目に入ったからね。
身体を起こそうとしたけど、全身にギブスが嵌っているみたいで上手く起きられない。
「ミヤビ様! 目が覚めたのですか」
「あら、ポーリンじゃない、掩蔽壕は大変だったわね」
「何を言っているんですか、すぐに皆を呼びますね」
元気よくドアが開かれ、大きな声。
「ミヤビ様、元気っすか!」
元気印のナーディアの説明によると、わたしはレオポルトを救出する為に一芝居うったそうだ、うん段々思い出して来たぞ。
「……それじゃ今、レオポルトはレオノルになったのね」
「はい、カタリーナ達が三日前に連れて来てからずっと本を読んでいるっす」
「三日も、早く起きないと、奴隷商会の引き継ぎがあるのよ」
「まだ無理っす、今日一日はベッドから出ないでください、それとお薬をいっぱいゴックンしてくださいね」
「寝るのは良いけど、ゴックンは嫌よ」
「それだけ言えれば充分っす」
今の状況を分かりやすく言うなら、スマホのバッテリーが完全に空になった状態よ。
ゴックンする、苦いお薬は充電ケーブルね。
奴隷商会の地下牢に捕らわれていたレオポルトを魔法陣の力で美少女に変えて、地下牢から脱出させた。
性別や年齢まで変えられるなんてやりたい放題できるじゃない、そう思ったあなた。
最高級の魔力を持ったわたしだから出来たのよ、しかも大量の魔力を残らず使いきって。
何日も寝込んで、こんな辛い思いは二度とごめんよ。
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「……それじゃレオノルちゃんは父様に嫌われて地下牢に入れられていたのね」
「そうよ、酷い目にあったけど、地下室でずっと魔法陣の勉強をしていたのよ」
レオポルトの姿を10代前半の少女に変えるのに成功した、興味深いのが彼の記憶、しっかりと改ざんされ、つじつまを合わせている。
細かい仕草に男っぽさが出て来るけど、自分の事を産まれた時から女の子だと思い込んでいる。
胸には大きな紫の球が浮かんで見える、外見は変わっても学究の適正は変わらないみたいね、“隷属”のスキルも生きているのかしら、彼の本来の場所に居させてあげよう。
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わたしが独立する時にレオポルド商会から連れて来た奴隷のミーアとエルヴァ、学究の才の有るミーアには魔道の研究をさせている、貪欲に知識を取り込むブラックホールみたいな娘よ。
エルヴァの胸にはねずみ色の大きな球、手先が器用な職人適正で、ミーアの発案を形にするのが彼女の仕事よ。
二人とも生活が不規則になりがちだから本邸ではなく離れで研究をさせているのよ。
「ミーア、エルヴァ、起きている?」
離れの扉を開けると積まれた本と、紙束で溢れかえっている。
「あっ、ミヤビ様お久しぶりです」
「ちょっと、ミーア、何その頭は、髪の毛ボサボサじゃない、直しなさい」
「そうかなぁー」
手で髪を撫でる彼女だけど、そんな生易しい乱れかたではない、結局二人ともメイドさんに頼んで湯あみしてもらう事になった。
昔はキュルキュルした美少女だったのに、5年の間に二人ともすっかりオタ………物事を極める性格になってしまった。
元が良いからだろうか、湯あみをしてキレイな服を着せたらそれなりの女の子になった。
けど猫背はダメよ。
「あのね、今日は二人にお友達を紹介したいの」
「誰ですか?」
「魔道書持っている?」
「レオノルちゃん、いらっしゃい」
少し照れた様子で入って来たレオノル。
「始めまして、わたしレオノルです」
『初めましてー』
「ミーアにエルヴァ、レオノルちゃんは魔道に物凄く詳しいのよ」
「本当、わたしの魔道書も分かるかな?」
「もちろん」
「みんな、魔道書は後からね、三人には作って欲しい物があるのよ」
そう言うとわたしは緑の瓶を机の上に置く。
▽▼▽▼
それから半年間は怒涛の忙しさだった。
レオポルト奴隷商会はドネッセラ奴隷商会と名を代え、わたしが会長に就任した。
幸いな事にスタッフは出向者も含め殆どが残ってくれた。
以前からレオポルト商会からの依頼をたくさんこなしていたわたしは特に問題無くトップの座に収まった。
そうそうドネッセラは乙女と言う意味よ。
そして何よりも助けになるのがエルフの少女達。
どんなに離れていても、感覚同期で話を出来るのだけど、魔力が必要なのよ、それも大量に。
使える回数が限られているけど、今は試行錯誤の最中よ。
そんなわけで、使いこなせるのは私とニンファだけ。
今はヴェステン領に買い出しに出かけたユーリアとエルフ娘経由で話をしている。
[後列の三人は買いです]
わたしの言葉はエルフのラッヒエルの口から出て行く。
農村によくいる鼻が潰れて、四角いアゴした娘達だけど、胸には黄色の球が見える。
三人とも結構大きいわよ、特に一番左の子は高級娼婦になれそう。
「ミヤビ様、他にはいませんか?」
[他は、前列の一番右の子は事務職の適性がありますね、買いましょう]
「その様に手配いたします」
エルフのラッヒエルとの感覚同期を切ると、海の見えるスリーローズ商会の会長室、左手の暖かな感触はエルフのトルディね。
侍女が白いお薬を持って来た、海辺の部屋に居ながら出張買い取りが出来るとは言え、魔力はゴリゴリ削られる。
時には日に数回のゴックンをしなければならない。
毎日毎日、こんな物飲んで、味覚障害にならないのか、心配している日々よ。
事務のステラがわたしに言う。
「ミヤビ様、お疲れのところ申し訳ございませんが、ドネッセラ商会のロットマンとのお話の時間です」
「分かったわ、感覚同期をしますね」
わたしの目の前には椅子に座っているロットマンの姿、マハテルト目線だとこちらが立っていると丁度いいわね。
「ロットマンさん、今日の商会は何かありましたか?》
[あっ、これはミヤビ様、実は本日の売り込みの件で、金額の確認をよろしいでしょうか]
「売り込みと言うとクリーゼル娼館の事ですね」
[そうです、ルカーラとミラナの予定ですが、最低金額は金貨8枚で宜しいでしょうか]
「安いですね、最初は10枚から値切っても9枚までです、それでごねる様でしたら無理に売り込まなくても良いですよ」
[ですがクリーゼル娼館は昔からの付き合いがあります]
「大丈夫です、主力の娘が続けて身請けされました、今は少しでも戦力が欲しいでしょう。
ルカーラもミラナは即戦力になりますから、強気な売り込みで」
[分かりました、それと検収金額の按分率の件ですが、営業部の取り分が少ないのではと、もう少し販売部門にも……]
異世界でタイムラグ無しの連絡手段を手に入れれば勝ち組確定です。




