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底辺職の風俗嬢は異世界に行って本気を出す  作者: miguel92
第四部

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第82話.銀行員は抜け目ない人種

 お薬はダメです、みんな知っているけど、根絶されないのは、最初の頃は大した副作用が出ないからではないでしょうか。

 慢性になった頃には手遅れ、と言うパターン。



「失礼するよ、ミヤビ様とフリッカ様ですね」

ドアがノックされ、50代位の重役っぽい人が入っていた。


「わたくし当行の頭取を務めさせてもらっています …… 」


 重役特有の一見愛想が良さそうに見えるけど、本音は絶対に見せない、油断出来ない雰囲気を醸し出している、さすがは頭取だけあるわね。


「 …… まずは、フリッカ様、当行に融資の相談に出向いて頂きありがとうございます、見積書には目を通させて貰いました、リスクヘッジを考えた優れたビジネスモデルです。

 この様な提案を当行に持ち込んで頂きありがとうございます、二か所分の醸造所の融資を約束いたしましょう」


「は、はぁ」


「さて、ミヤビ様、お二人は友人同士ですかな」


「ええ、フリッカは心を許せる大切な親友ですわ」


「それは羨ましい、人生でもそんな出会いはそうそうある物ではないですからね……」



 その後も頭取はどうでも良い事をいつまでも喋っている、わたしは単なる雑談相手なの、いやいや相手はバンカーのトップよ。



「……ミヤビ様、アンフェタってご存知ですよね?」

 頭取が突然わたしに問う。


「今頃になってご禁制になったお薬ですよね」


「確かラム酒みたいな味がするんじゃなかったかな?」


「眠気覚ましに良いと言うふれ込みだった気がします」



「ええ、その通りです、ですが最初の頃はアンフェタがそんな危ない薬だとは知らなくて、当行の行員も大勢手を出しました」


「銀行って夜勤もあるの?」


「アンフェタは眠気を覚ますだけではなくて、集中力を高める効果があるのですよ、私達行員は銅貨一枚までキッチリ金額をあわせなければならないですから……」



 頭取がアンフェタの効果について説明してくれるけど、これって覚せい剤と一緒よね。

 啓発ポスターなんかでは、覚せい剤は使った途端に脳が破壊される様なイメージがあるけど、そんな事はないの。


 最初は集中力が高まるので仕事の能率が上がる。

 けど、これって集中力が高まるのではなくて、脳の疲労を忘れさせているだけなの、薬の効果が切れるとそれまでの疲れがドッと押し寄せてくるわよ。


 超強力なモン・エナみたいなものよ、緑の缶で元気になれるのは明日の元気を今日に前借りしているだけよ。


「 …… アンフェタは最初のうちは薬局で買えるほどでしたけど、今では流通ルートを辿る事すら出来ません。

 この薬の元売りは雲隠れしています、いかがでしょうかミヤビ様、彼の者を探しだして頂けませんか?」


「アンフェタにはわたしの商会も思う所があります」


 商会と言う言葉使ったのは、わたし個人の本音を隠すためよ。

 薬に蝕まれた健気な少女戦闘奴隷の姿は見ていて辛かった。


「ミヤビ様は優れた冒険者ですよね、それなりのお礼は致しますし、かかる経費も全て当行持ちと致します。

 そうそう、当行では新たに独立する冒険者達に対する財務コンサルタントの仕事もしております、いかがでしょうか、ミヤビ様から独立予定の人達にコンサルタントのご案内も出来ますが」



「大変魅力的なご提案ですがわたしの商会には分を超えた物でしょう」

 ビジネスの世界で“魅力的”と言う言葉が出て来る時は否定的な事が多いわよ。


「そこをなんとかお願いしたい、アンフェタを製造した者を確保して欲しいのです」


「御行もアンフェタに思う所があるかも知れませんが、それって衛兵隊に任せる仕事ですよね、なぜわたしに頼むのですか、理由をお聞かせいただけませんか?」


「そうですね、端的に言わせてもらうと、彼の者の頭脳が欲しいからです。

 今のままではいつか官吏に捕まって、拷問の末死んで行くだけの運命です。考えてみてください、あれだけ優れた薬を作れた者ですよ。

 城門の前に並べるなんて損失でしょう。

 しかるべき研究環境を整え人体に害の無い優れた薬の研究をさせるのが社会の為だと思ったからですよ」


 わたしの斜め前に座った頭取からは熱い視線を感じる、確かに彼の言葉は正論だ、その為にわたしを駒に選んだだけだろう。

 法的に見れば犯罪者を助ける形になるのだし、パトリッツアの件もある、これは受けるべき仕事なのか、迷う所だ。


 頭取の説明によるとニコレシアが手引きしたコカフィーナは粉末をパイプの先で熱してその空気を吸うと、多幸感を得られるそうだ、最初は半日くらい幸せな状態が続くけど、次第にサイクルが短くなり、薬の使用量も増える。


 そして何より、薬が切れた時の絶望感が酷くなるらしいの、そのまま自殺してしまう人もいるそうよ。


 アンフェタはまったく違って、緑色の瓶に入ったラム酒みたいに甘い味、飲むと集中力が高まり眠気や、ダルさも感じなくなるそうよ。

 次第に効果時間が短くなり薬の使用量が増えて行くのは同じね。



「……それでは二つの薬はまったく違うものなのですね」


「はい、まったく違います、コカフィーナは地下組織がスラムとか、怪しげな酒場に売り込んでいましたが。

 アンフェタは薬局で売られていたのですよ、最初は夜間警備の衛兵が買って行き、眠気覚ましになると評判になって。

 集中力が高まると言う効果も分かると商会の会計責任者とかそれなりの立場の方もお買いになったそうですよ、それが、ある日を境に仕入れ出来なくなったのです、アンフェタが手に入らなくなった人達は取り憑かれた様に同じ味を求めるのです」


「ラム酒ですか?」


「左様でございます、アルコールで気持ちを紛らわせるのですけど、お酒で物事が解決した事は今までに一度も有りませんよね」




 お酒で問題が解決したこと事はありません、問題が起きることがありますけど。

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