第53話 美魔女の掌中
美魔女娼館主、それなりの歳なのですけど、身体が若々しいのは、金に糸目をつけずに集めたサプリと、若者を相手に定期的な運動をしているからです。
ネコ足のソファにしどけなく横たわる、娼館主エステファニア、どうでも良いけど、この人いつも横たわっているわね。
気だるそうな表情のお姉様の身体をチェック、アレ、わたし負けてない?
「どうしたミヤビ、今日は目つきが違うぞ」
「いえ、エステファニアさんの、素敵なボディラインに見とれてしまいまして」
「わたしは娼館主だぞ、範を見せんでどうする。
それよりも、今日はこの前の手紙の話しか、おまえが娘を身請けしたいとは、どう言う事だ?」
「ええ、身請けもありますけど、まずはこちらをご覧ください」
合図をすると、ビロードに包まれた物を運んで来る従者。
「さぁ、こちらバレーナの皮で作ったボールです、こうやって座って運動すれば、まぁ、ウエスト周りがほっそりとなることうけあいですよ」
物作りの才能がある少女エルヴァ、彼女に頼んでソープマットを作っている素材で、バランスボールを作ってみたのよ、結構厚みがあるし、上でポンポン跳ねても平気よね。
わたしは両手を水平に伸ばして、通販番組みたいにバランスボールの使い方をアピール。
さぁ、感触はどうかな?
「毎度毎度、面白い物を持って来るな、ミヤビよ」
「これを使った運動を流行らせてみればいかがでしょうか」
「うん、却下だ」
「はい、それは、もちろん …… えー、何でですか!」
「ミヤビよ、それを幾らで売るつもりだ、マッサージ用のエアーマットが金貨5枚だぞ、最低でも、これだけ取らないとダメだろう」
指を三本立てる娼館主のエステファニアさん。
「そりゃ、金額は要検討ですよね~」
「そう言う事だ、ところで、それはどれくらいの重さにまで耐えられる?」
「さぁ、けっこう丈夫としか言えませんけど」
「まぁ、良い、それは置いて行け、他の使い道があるかもしれん」
「分かりました、このボールは保留と言う事で。
この前お願いした、身請けの話しはどうですか、良い娘はいましたか?」
「うむ、教養のある娘を用意したぞ、高級店に勤めているから、接客も教えられるし。
しかしミヤビよ、娼婦にそこまでの教育が必要なのか?」
「絶対に必要ですね、ただ、頭が回るだけの娘では最初は楽しいかもしれませんが、飽きるのも早いです。
何と言うか、話題の引き出しが少ないと、言えば分かってもらえるでしょうか」
「なるほどな、ショーティー、いるか」
「なんすか~」
チャラそうな男が現れたけど、騙されたらダメよ、彼は有能秘書なの、あれは全て演技だからね。
「アマリージョを呼べ」
「りょーかいっす」
数分後にやって来たのは、高級店の風俗嬢にしては地味な娘、いや、ボディラインとかは極上品だし、顔つきも整っている、だけど、何と言えば良いのか、そこはかとなく漂ってくる文化系の部活の雰囲気。
「初めまして、わたくしアマリージョと申します …… 」
そこからは、わたしの質問の嵐だったわ、絵画、音楽、歴史、矢継ぎ早の質問にも的確に答える、地味女アマリージョ。
音楽史の話をしても、単に作曲技巧だけでなく、そこに至る過程までを教えてくれる。
「 …… 大変けっこうです、アマリージョさん、わたしはあなたを身請けしたいです、ご意向を教えてください」
「それは、ありがたいお言葉です、差し出がましいお願いかと思いますが、身請け後も会いたい人がおります、時々でよろしいので、そのお方と、顔を合わせる訳にはまいりませんか?」
要するに、身請けされた後も会いたい人がいるって言う訳ね、ヒモ着きなの?
「あー、ミヤビよ、アマリージョには太客がついていてな、そこそこのお大尽なのだが、家庭の事情で身請けが出来ないのだよ」
男尊女卑の世界だけど、女だって黙っているだけじゃない、旦那が愛人を囲う事を許さない妻もいる訳だ。
「あの、ミヤビ様、もしも身請けされたなら、そのお方との身体の関係はもちません、一刻二刻、共に過ごすだけで良いのです」
「男と女が、身体の関係にならないで、何をするのよ?」
「フィッチャでございます、そのお方とはフィッチャの仲でございまして …… 」
フィッチャって言うのは、早い話が囲碁の事よ、盤の広さとか、細かいルールは違うけど、基本は同じよ、文化人の嗜みとされている遊びだけど、高級娼婦ともなると、囲碁の相手もしている訳ね。
その後もアマリージョと話を詰めたけど、太客と会うのは数十日に一回、場所は海辺のスリーローズ商会で、身体の関係にはならない、等と条件を揃えた。
こんな美人さんと一緒に過ごして、囲碁だけやって、ハイ、サヨナラ、なんて出来るのかしら。
とは言え、わたしは、高級娼婦の教養担当を確保したわ。
○○
やっと、騒がしい女ミヤビが帰った娼館主の部屋、しどけなく横たわっていた美魔女は、待っていたとばかりに起き上がり、愛人を呼ぶ。
「ショーティー、こっちへ来い」
「なんすか、何か面白い事でもありましたか」
「そこのボールに座ってみろ、ああ、パンツは下ろしてな」
有能男性秘書は、一瞬で雇用主の意図を見抜き乗馬の鞍になる。
暴れ馬に跨っているかの様な激しい快楽を過ごした娼館主。
異世界最初のバランスボールは、製作者の意図とは全く違う使用方法を見出した。
実際にバランスボールの上で二人が跳ねたら、破裂するんじゃないでしょか?




