第43話 そろそろ働け
一粒種のレオポルトの扱いですが、王都の学校に通わせて、人脈をつくるか、稼業を継がせるか。
貴族の資質が無いと判断されたレオポルトは稼業を継ぐ方向に
「オスヴァルト、休憩だ、そなたも休め」
実際は主人の前では休憩にはならないのだが、それが従僕の務めとソファに座る。
メイドが絶妙なタイミングでワゴンを押して来てコーヒーを入れると、綺麗なお辞儀をして退出していく。
「あのメイドは中々の美人だな」
「庶子のオルガでござますが」
「はて?」
ルードルフは自身の記憶の糸を手繰り寄せる。
オルガは確か下働きの娘を孕ませて産まれた子だったはず、顔もそれなりでしかなかったと思っていたのだが、やれやれ歳は取りたくない物だ。
「オスヴァルト、我が息子はどんな状態だ?」
「大変素晴らしい才能の持ち主としか言いようがありません、いかがでしょう王都の魔法学校に入学させてみては?
そこで人脈を作れば爵位の足がかりになるかと愚考致しますが」
「オスヴァルトよ、勉強は金にならんのだ、むしろ金が出て行くばかりだ、レオポルトにはそろそろ俺の仕事を覚えてもらわないと困るのだ。
爵位はしっかり金を稼いでからでないとな」
「ミヒャエルはいかがでしょうか? 庶子ですが頭の回転は早いですし、人望もあります」
「あいつはなかなかのものだ、だが魔力がなぁ、あの程度の魔力ではアルトナー家が舐められるぞ」
執事オスヴァルトは悩んだ、ここでレオポルト坊ちゃまの秘術を明かせば王都の学校に行かせてくれるだろうか?
いや、奴隷商会の戦力に組み込まれるだけかもしれない……
「どうだ、オスヴァルト、レオポルトに奴隷商会は勤まりそうか?」
「なんとも言えません、とりあえず見習いの仕事をさせてみて適正を見るのがよろしいかと」
△△
ボクは勉強部屋を追い出され奴隷商会の見習いとして働き始めた。
見習いの仕事はトイレ掃除から始まり奴隷達の部屋の掃除、廊下を磨いたら窓ガラスを一点の曇りが無くなるまで磨きあげる。
今まで下働きがやっていた仕事をボクが汗を流しながらしている、ミヒャエルやロットマン達はボクを心配してくれたけど、もう平気さ心の殺し方を覚えたからね。
単調な窓ふきをしていても頭の中では複雑な術式を入れ替えたり、展開したり、少しでも時間があれば思いついた術式を書き記しているよ。
廊下の片隅でメモをしていたところ突然声をかけられた。
「どうだ、レオポルト、今の仕事は」
「これは商会主様、たいへんやりがいのある仕事でございます」
父上だけど、仕事場では商会主様と呼ばなければならないのさ。
そんな商会主様はボクをジロジロ見ながら言う。
「レオポルト、お前今回の買い出し遠征について来い」
「かしこまりました、商会主様」
その日はミヒャエルやロットマン達はそれは喜んでくれたよ、いよいよ下働きの期間が終わり見習いになれるのだからね。
だけどボクの心はそれ程でも無かった、それよりも。
“お前には商人に向いてない、勉強でもしていろ!”
と言われた方がよっぽど嬉しかったけどね。
リバリ村なんて言う、初めて名前を聞く田舎の村に出張買い取り。
ボクは見習いだから父上じゃなかった、商会主様の後ろに立って見ているだけだよ。
「……それではサランダーは奴隷契約を受け入れました、こちらが料金となります」
「それでは次の奴隷希望者に会って頂けませんか?」
村長が商会主様に言う。
「かまいませんよ」
入って来たのはさっきのサランダーよりも少し背が低い男、だけど肩幅は広いし腰周りもしっかりしている。
「一般奴隷希望のウラノスです」
「レオポルトよ、さっきのサランダーは金貨1枚で買い取った、こっちのウラノスはいくらの値をつける?」
父上が突然ボクに訊く。
「金貨1枚と銀貨30枚で良いかと思います」
「ほう、どうして前より値を上げたのだ?」
「背は低いですが肩周りの肉が付いています、これは重い物を運ぶ事に慣れているからだと思います、顔が日焼けしていますが手に泥がついていません」
「なかなかの観察だな、だがそれでは値を上げた理由にはならんぞ」
「ウラノスの仕事は農夫ではなくキコリではないでしょうか?」
「ほう」
商会主様は奴隷希望者に向き直ると。
「さて、ウラノス君だったかな、君の仕事を教えてくれないかな」
「先程言われた通りわたしはキコリのせがれです」
みんなはボクの観察力を褒めてくれたけど、そんな事掃除している時に奴隷達を見ていれば気が付くよね。
あ~あ、早く術式の本を読みたいなぁ。




