第28話 一人で出来るから平気だよ(カタリーナ)
今回はカタリーナ目線の話です。
年の割には幼い描写になってしまいました。
今日は“けっさん”の準備でミヤビ様は朝から忙しそうにしている、そんな日はわたしやリフリーも一緒になってお手伝いをするよ。
「……ねぇ、イルダ、検収金額が銀貨7枚少ないのだけど、もう今からリストをもう一度チェックなんて出来ないわよ」
「ミヤビ様、落ちついてください、7枚と言う事はおそらく税金分です、どこかで税込前の金額で検収してしまった可能性が高いです」
「それを探すのが大変だと言っているのよ!」
「税が銀貨7枚と分かっているのだから、元の金額もすぐに分かりますよね、その金額を探せば良いのです、リストお借りしますね」
「ああ、もう昨日の夜はピッタリだと思ったのに~
あっカタリーナ、お使い頼めるかな?」
「はい!」
「レオポルト様のところに行って、この稟議書を渡して欲しいの、見せれば分かるからね。
それから検収はもう少し遅れますと言って。
あと奴隷ギルドに提出する年度末報告書が出来ていたら、受け取ってそのまま奴隷ギルドに届けて欲しいの。
たくさんあるけど出来る?」
「はい、わかりました」
みんなが忙しそうだからわたしも早足でレオポルト様の部屋に行ったよ。
「レオポルト様、こちら“りんぎしょ”です」
「ありがとう、カタリーナ、おりこうさんだね」
ご主人様はわざわざわたしの顔の高さまで膝を曲げると頭を撫でてくれました、エヘヘ。
「ご主人様、奴隷ギルドに提出する書類はどこですか?」
「ああ、これだね、はい」
「ありがとうございました、今すぐ届けてきますね」
「カタリーナが行くのかい?」
「もう何回も一人で行っていますよ」
外にお使いに行けるようになったわたしは自慢げに言う。
「ちょっと待ってね」
そう言うとご主人様は銀貨を取り出し、わたしの手に握らせてくれます、ご主人様の大きな手でわたしの手を包むとなかなか離してくれません。
「カタリーナの手は柔らかいね」
「えっ、そうかなぁ~」
これって褒められたのだよね。
「お小遣いの銀貨は内緒だよ」
「ミヤビ様にも?」
「もうこの商会はミヤビ商会だね」
急に寂しそうな顔になってわたしの手を離したご主人様。
◇
わたしは、街の中心にある奴隷ギルドに向かって歩いて行きます。
「あら、小さな剣士さん、今日はお使い?」
「そうだよー」
「帰りに寄って来なよ、一本サービスしてあげるから」
串焼屋のおばさんがわたしに言う、いつもおまけをくれる優しい人だよ。
外に出る時には必ずレイピアを腰に吊るします、最初の頃は街の人達もオモチャだと思っていたみたいだけど、ある日ひったくりを倒したの。
それからは、街の皆はわたしの事を“小さな剣士さん”って呼んでくれるようになったよ。
大きな扉の奴隷ギルドに着くと受付のお姉さんを探すんだよ。
「レオポルトどれーしょーかいです、お届けに来ました」
「あら、カタリーナちゃん、偉いね、ちょっと待っていてね」
奴隷ギルドのお姉さん、わたしにコッソリ飴をくれる優しい人だよ。
◇
お使いの後は、いつもおまけをしてくれるおばさんの屋台で串焼を食べます。
外で食べるなんて大人みたいでカッコいいよね。
「あんた、また来たのかい、今日の余りは無いよ、他に行きな」
おばさんはそう言って誰かを追い払いました。
「さっきの誰?」
「あっ、ゴメンね、最近この辺をうろついている浮浪児だよ、一回余った肉をあげたら癖になって何度も来るんだよ」
「ねぇ、ふろーじさん、こっちに来なよ、一緒に食べよ」
「ダメだよ、剣士さんそんな事をしちゃ」
「わたしがお金払うから、ねぇ、いいでしょ」
ふろーじさんはボロボロの服を着て、顔も真っ黒でした、身体を洗って無いのかな?
わたしは商会に帰ろうとするけど、ふろーじさんは後をついて来ます、可哀そうだけど、商会には入れません、サン・ホセさん達に怒られるから来ないで、って言ってもついて来ます。
丁度商会の玄関からミヤビ様が出てきました。
「あら、カタリーナ、お帰り」
「あっ、ミヤビ様、おつかい行ってきました」
「偉かったわね、カタリーナ、ねぇ、後ろの子は誰なのかしら?」
「うんとね、ふろーじさんって言うんだよ」
ミヤビ様はわたしを押しのけふろーじさんに向かいます。
「あなた、名前は?」
「 エルヴァ 」
「そう、あなたの名前はエルヴァね、この商会の奴隷になりなさい」
わたしのお友達が増えた日の出来事でした。
中世的な世界で、社会のセーフティーネットも未発達ですので、
浮浪児とかが普通にいます。




