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底辺職の風俗嬢は異世界に行って本気を出す  作者: miguel92
第一部

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第16話 幼女の握る物

 前半は護衛騎士目線の話です。

 この話しは大幅に加筆しましたので、ずいぶんと長くなってしまいました。



◆サン・ホセ ◆


 人買いから助け出した娘ミヤビ、透き通る様な白い肌と、物おじしない態度で貴族の出だと思うのだが、奴隷契約を結びレオポルト商会の教育係に収まった。


 いや、収まる様な器じゃなかった、売り込みや買い取りで、あっという間に結果を出し、気がつけば商会の中枢に入り込んでいた。

 本来この商会の主人はレオポルト様で、実務を担っていたのは執事のオスヴァルトだったが最近は実務の中心があの女に移っている。


 もともとはアルトナー家の奴隷だった俺には複雑な気持ちだ。


 あの女は、ただ仕事が出来るだけではない、他のみんなが考えもつかない様な金儲けの仕組みを思いつく様だ。

 今日も4人の娘を迷宮ギルドに連れて行ったのだが、何を考えているのかさっぱり分からない。


 そのミヤビの指示で、戦闘奴隷の訓練を任された俺サン・ホセ。

 この前の遠征買い取りで購入した少女奴隷、プリスカとオザンナ。

 二人とも15,6歳、顔つきは田舎娘丸出しだけど、良く見るとそんなに造作は悪くはない。

 あか抜けないだけだ。


 そしてもう一人がカタリーナと言う10歳のお子様、子供用の剣すら握れず、台所から丸い棒を持って来て剣の代わり。

 こんな子に剣術とはさすがにふざけ過ぎだろう、無視する事も出来ないし素振りでもさせておこう。


 ◇


 二人の娘を前に言う。

「…斧、こん棒、鎖鎌、盾ですら攻撃の武器になる。

 だがお前達には基本の武器の剣、それも直刀で突き専門のレイピアから覚えてもらう」


『ハイ!』

 うん、返事は良い。


「これが基本の構えだ、俺の真似をしてみろ …… 」


 娘達に剣の構えから練習させた、女性らしくしなやかな身体で、流れるような突きと足さばきを一刻もかからずに会得した。


“基本突きの練習でもさせておくか”


「二人、こっちに来い」


 二人はポニーテールを揺らしてやって来る、小柄な二人の胸くらいの高さの木の台の上に子石を並べると。


「突きの基本は速さと正確さだ、見ていろ」


 木剣をまっすぐ突きだし台の上の子石を弾き飛ばす。


「綺麗に石が飛ぶまで基本突きの練習だ、木剣の先にまっすぐ当たれば石は遠くに飛んで行くぞ、今日は石が飛ぶようになるまで自主練習をしておけ」


 剣士と素人の違い、数え上げればきりがないが、自分の思った場所に剣を当てられるかどうか。

 実際にやらせてみると、イメージと現実の違いに驚く、特に突きをピンポイントで決められる様になるまでは、かなりの修練が必要。


“石突き”は早くて数十日、半年近くかかる者もいるくらいだ。

 何度も台を倒し、練習用の木剣を折りやっとものになる、それが済んだら実践的な剣術を教えるか。


 ◇◇


 翌朝は護衛仲間のロドリゲスに叩き起こされる。


「サン・ホセ、起きろ、お前何を教えたんだ!」

 同僚が血相を変えて叫んでいる。


「ロドリゲス、朝からなんだ。

 お嬢様二人には素振りと基本突きまでだ、意外にスジは良いぞ」


「そうじゃなくて、小さい子だ!」


「あれは素振りだけだ、形だけ教えておけば充分だろ……」


「良いから来い」

 俺はロドリゲスに無理やりパティオに連れて行かれた。


 ◇


 パティオでは三人の娘が談笑していたが俺達の姿を見ると並んでお辞儀をする。


「あー、一番小さい子、名前は何だったかな?」


「カタリーナです」

 ロドリゲスの質問に子供特有の高い声で返事。


「それじゃカタリーナ、さっきやっていたやつをもう一度見せてくれないかな」


「石飛ばすやつ?」


「ああ、そうだ」


 プリスカとオザンナが台の上に石を並べた、昨日教えた石突きか、スジが良いから二人ともマスターしたのか?


 なんと小さなカタリーナは石突き台の反対側に行って“いいよー”と合図。

 プリスカとオザンナは石を次々と弾き飛ばす、教えて半日でこれだけでも凄いのだが。

 幼女はお姉さん達が飛ばして来た石を空中で正確に突いている。



「あー、小さい子」


「カタリーナだよ」

 可愛い鼻をフンと鳴らし、不満げに言う。


「ゴメンゴメン、どうやって、石が突ける様になったんだ」


「別に、当てるだけでしょ」

 これは、どうやって歩くの? と訊いた時と同じ反応だ。


「面会に行ってくる!」



◇ミヤビ ◇



 重厚なカーペットと、高級な調度品に囲まれた部屋。

 人一人の運命が変わる場所なので、安っぽい場所は失礼よね。

 わたしミヤビはレオポルト様とフリッカが契約を交わす場面に立ちあっていた。


「汝パオリーナよ、フリッカを主とする事を認めるか」


「はい、わたくしのご主人様はフリッカ様です」

 元娼婦の首元に嵌った銀色の首輪が光って、所有権の移行が完了したわ。


「これで所有権は移りました、後はお願いしますねミヤビ」

 そう言ってレオポルト様は部屋に戻ってしまったの。


「フリッカ様、当商会の奴隷をお買い上げ頂きありがとうございました、大切に使ってくださいね」


「もちろんよ、わたし達はもう10階層に届いたのよ」


 そう言ってパオリーナを引き寄せる、そんなスキンシップにも戸惑ったり嫌悪感を示したりせず、ごく自然に身体を寄せる元娼婦。

“2人で色々経験したのね”


 売約された荷物持ち奴隷とフリッカをお見送り。

 お客様のお見送りはソープ時代から、仕込まれているわよ。


 商会の前に立っているわたしに、メイドが声をかける。


「護衛のサン・ホセ様が急いで話したい事があるそうです」


 ◇


 人買いに売られ、魔物に襲われたところを助けてもらった、護衛騎士サン・ホセ。

 いつも沈着冷静で、物事に動じないタイプだと思っていたけど、今日の彼はやけに興奮しているわね。


「……そう言う訳であの三人は即戦力になる下地を兼ね備えております、ミヤビ様」


「そうなの、だったら専用の武器を用意してあげないとね。

 サン・ホセお勧めの武器屋さんはあるかしら? 彼女達専用の武器を作ってくださいな」


「幾つかありますが……」


 ◆


 結局わたしも武器屋に同行する事になった、プリスカとオザンナには短槍と直刀を二つずつ、これは一番汎用性の高い武器で既製品在庫も豊富なんだって。

 カタリーナは特注のレイピア、幼い体型に合わせた剣は最初からの特注品になるそうよ。


「ミヤビ様、短槍と直刀に慣れさせたいので冒険者ギルドの修練場に行きたいのですが」


 サン・ホセが訊いて来るけど、わたしは風俗のお姉さんだったの、武器とか戦闘系はお任せよ。


 ◇


 冒険者ギルドの修練場、初心者をいきなり迷宮に放り込んだら簡単に死んでしまう。

 冒険者希望者はここで修練を積んでから迷宮に潜るそうよ、体育館くらいの大きさを想像してみて頂戴ね。


 わたしは誰に言われた訳でなく黙ってキャットウォークに登ったの。

剣士さん達は人種が違うのよね。

 なんって言えば、良いのかな、大学でもガチガチの体育会系さん達とは共通の話題なんて出てこないでしょ、そんな感じよ。



 上から剣術の練習を見下ろしていると、突然後ろから話しかけられた。


「お嬢様、今日は見学ですかな」

 人の良さそうなお祖父さんだけど、タダものでない雰囲気をまとっている。


「ええ、わたしの戦闘奴隷の実力を見たくて」


「ああ、あそこの2人の女の子ですな、これは手馴れですね」


「まだまだ初心者ですよ」

 わたしは苦笑しながら答える。

 リップサービスが過ぎるだろう、昨日初めて剣を持った子なのよ。


「床に線が引いてあるのが分かるかな?」


「ええ、ありますねぇ」


「あの幅が迷宮上層階の幅なのですよ」



 お祖父さんは待っている間に色々な事を教えてくれた、迷宮内はもっと暗く圧迫感があり、遠くが見渡せない。

 天井と言う物は存在していなく、頭の上にはどこまで暗闇が続いているだけ。


 光魔法や魔具を使って魔物を警戒するのも一つの方法だが、逆に光に寄って来る魔物もいるので使い方が難しい……



 剣道の胴みたいな防具だけ付けたプリスカとオザンナが出て来た、手には身長より少し長いくらいの槍を持っている、もちろん木で出来た練習用よ。

 そして相手は筋肉マッチョみたいな剣士、相手が若い娘だと分ってニヤニヤ笑っている。


「おや、女の子達が出てきましたね、相手はヨハンセンですか可哀そうですね」


「練習とはいえ、いたいけな娘がいたぶられるのは辛いですね」


「いえいえ、可哀そうなのはヨハンセンの方ですよ」


 ヨハンセンがまともに勝てたのは最初の数回、後は二人のお嬢様が入れ替わり立ち替わり筋肉ダルマをいたぶっている。

 気が付けばお祖父さんはいなくなっていた。




 直刀と短槍が一番リーズナブルな武器です。

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