第104話.山火事発生
宝〇歌劇の様な物です、いきなり舞台ではなく、数年間の実習期間(音楽学校)
テーマパークとそこへ向かう馬車鉄道は連日満員な状態が続いているわよ。
だけど、そこにあぐらをかいてはダメよ、飽きられる前に次の矢を打たないと。
孤児達に手厚い保護をしているダールマイアー領だけど、ブラッチェの合奏団だけではなく、児童劇団の様なものも運営していた。
わたしは児童劇団の上澄みだけ頂いて、少女歌劇を作ったのよ、少女劇団だから、旬の時期は短いわよね。
劇団の層を厚くするために芸能学校を設立したわ、言うまでもないけど、関西にある、あの劇団を参考にさせてもらったわ。
商会を二つ経営して、冒険者としても活動している、更にテーマパークや劇場まで造ろうなんて、欲張り過ぎ。
まぁ、劇場の運営はヒルベルタ様が活躍してくれているので、お任せ。
アニメ制作も、作家や劇作家から、有望な人を引き抜いて来ているみたいよ。
そして、一番の助けが身請けした貴族の令嬢達、奴隷契約を結び、姿を変え、多方面で活躍中の彼女達。
ルクレチアはスリーローズ商会で勉強中、なんと、あのギングリッチ兄弟商会とやり合うまでに成長したのよ。
トリスタン子爵の令嬢ニコレシアは身長を伸ばし、名前もニンファと変えて、ダールマイアー領のアニメスタジオで、製作の陣頭指揮を取っているわ。
ホルストシュタイン男爵の令嬢ギジョルニーナはジョルナと名を変えて、溢れるお胸をAカップにまで削ったら、女らしさも削れてしまったのか、ワイルドな性格に。
今はダールマイアー領のテーマパークで時間帯別の来場者数の内訳を精査しているはずよ。
ぱっつん前髪の令嬢ホーデリーフェはホライナと名を変え、わたしと一緒にドネッセラ奴隷商会の売り上げを集計中。
「ねぇ、ホライナ、ヘプケン領の奴隷は売りばかりね、買い取りには行かないのかしら?」
「あそこの領地は数年前に連続して、魔物の大量発生がありましたからね、どの年も雨も降らなかったので、随分被害が拡大したと聞いております、まだ復興の途上なのですね」
「魔物の大量発生と天気が何の関係があるのよ?」
わたしの質問に、出来の悪い生徒を見る目で見る、ホライナ。
「魔物って水が嫌いなのですよ。
大量発生の魔物も雨が降ると、動きが止まってしまうのですよ、止まった魔物だったら、子供でも倒せますからね」
「もしかして、そこかしこに運河が掘られていたのは、魔物除けのためだったのかしら」
「ミヤビ様、本当に知らなかったのですかぁ。
よっぽど小さな領地は別ですけど、どんな領地でも、横切る様に運河が掘られているはずですよ。
魔物が発生しても、領地が全滅しないためです …… 」
ドヤ顔ホライナの説明は止まらない。
空を飛ぶ魔物や、泳ぐ魔物もいないそうだ、冒険者の記憶を呼び覚ましても、ノミみたいにジャンプしたり、ムササビみたいに滑空する魔物はいたが、羽ばたいて飛ぶ魔物は見た記憶が無い。
魔物の大量発生、パターンは無いの、ヘプケン領みたいに、数年連続で発生する事があるかと思うと。
魔物の森に囲まれた領地が100年以上大量発生を経験していない、なんて事があるそうなのよ。
この世界は地震も津波も無い、気候の変化も穏やかで、隣国と戦争らしい戦争も無い。
その代わりに、山火事みたいな、魔物の大量発生があるのね。
魔物が発生するのは仕方ないわ、天災だから。
だけど、その天災を押しとどめるか、広がるに任せるかが、天災と人災の分かれ道ね。
水に弱いと分かっているのだから、水堀を掘っておけば、災害は押しとどめられる。
「 …… そんな発想のもとで、水堀は掘られたそうです、最初は単なる防衛施設だったのですけど、水運に使えば便利じゃないかと、言う事で、運河になったらしいです」
「へぇ、そうなのね、だけど 領境を横切る度に通行料を徴収される …… 」
エルフの娘ラッヒエルがわたしの言葉を遮った。
「お話し中すいません、トルディが急いで感覚同期をしたいそうです」
「トルディと言う事は、ニンファね、ダールマイアー領のアニメスタジオで何かトラブルでも起きたのかしら?」
わたしとホライナはラッヒエルの手を握ると、目の前に背の高い、元気の良さそうなお姉さん、ニンファが立っている。
[お呼び建てして申し訳ございません、ミヤビ様]
「何か、急な案件ね、教えてください」
[ガイスト領で魔物の大量発生が起きたと、早馬の知らせが届きました、臨領ですので、一応報告を]
名前も親も、故郷も捨てて、新しい人生を歩み始めたニンファ、生まれ変わったと言うものの、生まれ故郷が魔物の襲撃を受けていては、穏やかではないであろう。
「ニンファ、魔物の大量発生は問題です、商会としても、正確な情報が欲しいです。
リウム村に空飛ぶ馬車が置いてあるのは知っていますね、使用を許可します。
ガイスト領を空から偵察してください、現地では臨機の処置を取りなさい」
偶然見つけたヘリウムガスが発生している荒地、わたしが買い取って、ガスを集めているわ。
気体って、普通に保存すると物凄く体積がかさむので、加圧・冷却して液状化した後ボンベに詰めているの、いずれ飛行船の時代が来る時の為の布石よ。
“臨機の処置をとりなさい”と言う、どうとでも解釈出来る指示を出したわたし。
故郷が荒れ果てるのを、黙って見ていろ、なんて事できるわけないわ。
[ありがとうございます、ミヤビ様]
ニンファとの接続が切れたわたしだけど、すぐに次の接続を。
「ロウシェと接続を取ってみて。
スリーローズ商会のルクレチアと話をしたいの」
「はい、ミヤビ様」
エルフの少女は同胞を探す。
[何でしょうか、ミヤビ様]
目の前には元修道女のルクレチアが現れたわ。
「緊急です、戦闘奴隷のコンチータを呼んで、空飛ぶ馬車を作らせる様に指示しなさい。
必要な資材は彼女が知っているはずです、ギングリッチ兄弟商会に頼めば良いでしょう、金額は向こうの言い値で構いません、とにかく速度重視で」
[かしこまりました]
そう言いながらも、しっかりとメモを取っている、ルクレチア。
「それから、エルヴァを呼んで …… 」
定番とも言うべき魔物の大量発生です、本作では魔物に弱点をつくっておきました。




