第101話.異世界アニメ
商会にも格があります、新興の商会は何かとバカにされたり、格下扱いを受けます。
これは、次の商会が出来上がるまで続く、人間の本能の様なものです。
高級ホテルの一室、目の前にいるのは15歳くらいの娘、リフリー、この子はサキュバスと言う、セックスの権現みたいな魔物なんだけど。
年相応の15歳の少女よ。
「リフリー、この服はどうかしら?」
フリルのついたドレスを見せると、今のリフリーが着るには小さすぎるわ、10歳くらいの女の子にピッタリ。
“カワイー”と、年相応の反応を見せたリフリー。
隣の部屋に行って着替えて来ると、いつの間にか10歳の可愛らしい女の子に代わっていた。
理屈、そんなもの分かる訳ないじゃない、魔法のある世界なのよ、分からない事は全部魔法よ魔法。
わたしもフォーマルドレスに着替える、どうして女性の服は格式が上がるほど露出が増えるのかしらね。
そして、戦闘奴隷のポーリンとアニカ、普段は迷宮で剣や弓で戦う女の子、ロリ兄弟のストライクゾーンの子達でもあるの。
わたしのスリーローズ商会やドネッセラ奴隷商会、勢いがあると言っても所詮は新参の商会。
ギングリッチ兄弟商会は規模と言うか、商会の格も違っていて、話し合い場を作るには、格下が色々な物を提供しなければならないのよ。
商売のルールは面倒なのよねぇ。
〇
ホテルのレストラン、聞かれたくない話をするから、もちろん個室よ。
向かいに並んでいるのは、暑苦しい変態兄弟よ。
最初はわたしの連れている美幼女をガン見していたけど、ビジネスの話しになると、そこは割り切って、営業トーク。
「 …… わたしたちのスリーローズ商会としては、透明な布を少し分けていただけたら幸いです。
もちろん、払うものはしっかりと払います、ビジネスのルールは守りますよ」
品よくカトラリーを動かしながら、上品に話すわたし。
「いや、透明な布は結構な量がある、お互いに商会だから、そちらに融通するのは構わないがなぁ」
「お前の商会にはバレーナの皮をかすめ取られたからな。
今度は何を考えているのだ?」
「それは、今は言えませんね、そんな事を訊くのはタブーだと、分かっておられるのでしょう、お互い商会ですから」
これは、感情論ね、バレーナの皮で大儲けをしているスリーローズ商会が気に入らない。
今度も透明な布で何かを考えているわたしたちに大儲けされるのが嫌なのね。
「まぁ、多少でも、使い道を教えてくれるのなら、融通するのもやぶさかではないがな」
「それは、困りましたね、言うまでもなく、情報は商人の命ですわ。
命のやり取りをする様な事は、お互い控えましょう、さぁ、料理を楽しみませんか」
そう言いながら、ポーリンの顔を覗くと、ニッコリと微笑む9歳児。
さっきまではビジネスマンの顔をして、交渉にあたっていた兄弟も、性癖を刺激されたのだろうか、ソワソワし始めた。
「ちょっと、我々はルールを破ってしまったようだな」
「うむ、顧客の望む物を届けるのが商会の仕事だ、どうやって使うかは、客が考える事だしな」
「あら、それでは、こちらにも融通してくださるのですか?
無理を言った身ですので、金額は上乗せしてくれても構いませんわよ …… 」
「新大陸では、透明な布は窓枠に張ってガラスの代わりにしているそうだ。
我々の商会でも、軽い窓枠として売り出すつもりだがな」
ギングリッチ兄弟商会が透明な布の使い道を喋り出した。
彼らとしても、先ほどの無理強いは思うところがあったのだろう、商売人の仁義を通したところかな。
こちらも、答えないとね。
「まだ、どうなるかは、分かりませんが、娯楽方面に活用していくつもりですわ。
ああ、そうそう、窓枠として売り出すのなら、二重にした方がよろしいかと、真ん中に空気の層が出来て、断熱になりますわよ」
わたしの返事に顔を見合わせる兄弟。
「スリーローズ商会には特値で卸す事にしよう」
「うむ、問題ない」
「わかりました、それで単価計算はいかほどをお考えでしょうか …… 」
相変わらず、商売のやり取りは、疲れるわね、営業職って、いつもこんな事をしているのかしらね。
その後は客室に戻ったわたしたち、幼女に戻ったリフリーを変態兄弟のもとに送り出したけど、何回やっても嫌な事よね。
これは、今回は話し合いの場に来ていただきありがとうございますと言う、お礼なのよ。
幼い性を武器に使うのは本意ではないけど、資本力は向こうが遥かに上だし。
だけど、領主には、そんな事をしたくないわ、商売上のメリットと言う以前に、貴族って、平気で平民の物を取り上げるのよ。
○○
ギングリッチ兄弟商会から買い入れた透明な布A4サイズくらいに切り揃える。
エルヴァは八面六臂の大活躍、わたしが描いた、下書きみたいなスケッチを紙にキレイに清書していくの。
後は戦闘奴隷の子達が、下書きの上に透明な布を乗せたら、線をなぞっていく、キレイに描けたら、別の子が色を塗っていくの。
〇
「ねぇ、マルチナ」
「何?」
「わたしたち、戦闘奴隷よね」
「そうだけど」
「だったら、どうして絵ばっかり描いているのよ」
「ナオミ、絵を描くの好きじゃない」
「そうじゃないでしょ、これって、絵じゃないわよ」
そんな、間抜けなやり取りをしている、二人に絵描きのエルヴァが声をかける。
「あっ、あのさぁ、マルチナ、ナオミ、もう全部描いちゃった?」
「描ける訳ないでしょ、やっと3枚目だって」
「あのさぁ、ちょっと、取り消ししていい、この絵からは口を描かなくていいからさぁ」
「エルヴァ、何考えているのよ!」
「いやね、ここは会話の場面なのよ、口だけ別で描いて、重ねたら、全部描く必要がないじゃないかなぁ、透明な布なんだしさ」
「へーえ」
「あのさぁ、それだったら、眼も描かなくて良くない?
後から重ねても良いんだったら、ウインクとか、目線とかも変えられるよ」
「マルチナ、それだったら、眼の形だけ描いて、黒目を重ねたらどうかな?
目線を動かすのが簡単になるよ …… 」
○○
エルヴァと戦闘奴隷の子達が試行錯誤を繰り返して、作り上げた短編アニメ。
夕食後の食堂にスクリーンを張って上映会、そうそう、異世界初の声優さんは、エルフのトルディ、そして、男役の声をニンファ。
田舎の村に魔物が攻めて来て、戦うだけの話しなんだけど、戦闘奴隷の子達は自分達がインクまみれになって描いた絵が動くのに、達成感を味わい。
高級娼婦候補生のお姉さん達も、初めての経験に拍手が止まらなかったわよ。
次はヒルベルタ様に見せて、次はダールマイアーの領主のもとでアニメ鑑賞。
上映会の後はリゾート計画書を広げて話し合いよ。
ギングリッチ兄弟商会さん、透明な布は、お金を生む卵よ。
今や歴史の遺物のセル画アニメです。




