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1章 7話 幼児期5



助祭としてやらないといけないことの1つとして祈祷がある。

1週間の各女神の日に信徒は自分たちが信仰を捧げる女神の教会に集まり、祈りを捧げることになっている。

その日司祭の立場である者(闇の女神教では助祭の俺)は模範を示す必要があった。

闇の女神教ではかなり長い間祈祷は行われておらず、今までは信徒が個々に行っていた。よって、久しぶりに祈祷を開催することになるため、シスター達は村人に祈祷の日を連絡して回るなど忙しく駆け回っていた。


助祭になって初めて闇の女神の日を迎えた。今週は闇の女神の村での慰問を行うことになったので、教会の正面口にシスター達と立ち、お祈りの開始の時間まで信徒達を出迎える。訪れた信徒に挨拶し、シスター達が順番に教会内へと案内する。祈祷の時間になったのでシスターが教会の扉を閉め、俺は奥にある祭壇へと向かう。祭壇に向かう途中訪れた信徒の数を数えてみるがとても少なく、年老いた者たちばかりであることがわかる。それでも、その信徒たちを無下にはできない。闇の女神のために。本音としては俺が現代の世界へと帰るために。


祭壇には闇の女神の姿をそのまま写したような美しい像が祀られてる。闇の女神の髪,目は黒であり、祭壇に近寄った俺の姿を闇の女神の姿と重ねてみているのか、ありがたがる人間もいた。俺はその像の前に立ち、跪く。そして、教義に関する言葉を述べるのだ。

闇の女神の教義は「混沌,自由」であるから、それに関わる言葉を述べた。

一回目となる今回は無難に「闇の女神よ、我らに何者にも束縛されない自由な精神を与えてくださいまして、ありがとうございます。今週我々は自由な精神を忘れることなく健やかに過ごすことができました。来週も我々が無事過ごせるようにお見守り願います」と述べた。

これは5歳の子供が述べられるような言葉ではないことは誰の目にも歴然れきぜんである。信徒たちは本来この言葉を復唱する必要があるのだが、5歳の助祭が難しい言葉を発している現実に驚き復唱できない者も多かった。信徒の復唱が終わると、顔の前で両手を組み祈りを捧げる。そのまま目を瞑って、少し時間が経つのを待ってから手を直して立ち上がる。信徒たちが思い思いに祈りの姿勢から直るのを見守る。全員の姿勢が直ったのを確認してから、「次回からは祈祷後に説法を致しますが、今週の祈祷はこれで終わりです。この後は信徒同士で話し合いをするもよし、私や修道士と語らうもよし、ご自由にお過ごしください」と言って祈祷をしめた。はずだった。

何もなく終わるはずだと思っていた俺に向かって信徒たちが押し寄せた。


「新しい助祭様は、随分と可愛いことですな。

 孫と同じくらいかの」


「助祭様は本当に助祭としてのお力をお持ちなのですか?

 そのお歳で闇の女神様に祝福されるなどとても素晴らしい

 ことですね」


「そのお年で助祭になれるほどの信仰をどのようにして

 得られたのでしょう。

 是非、私のような者にお教えくださいませ」


「最近、家族ともども病気がちでなりません。

 是非慰問の日を近々設けて頂けませんでしょうか」


「これはうちの畑でとれた野菜でさ!

 助祭様は痩せすぎだぁ。是非うちの野菜を食べて、

 もっと育ってくださいや!」


「私は……」


「いや我は……」


「俺こそ……」


ほぼ全ての信徒が俺の周りに集まって同時に声をかけてきてしまった。傍付きであったリネットは出遅れて俺を囲う信徒たちの輪の外にいる。信徒達の中には俺が助祭であることに疑問を感じている者もいるようだが、5歳と言う年齢で今回の祈祷を成功させた俺を認めてくれてる信徒もいるようだ。助けを求めようにもリネットは信徒の外にいるし、返答しようにも一度に複数の質問には答えられない。とりあえず、最も近くにいる信徒の質問に答えようとしていたところ、修道士長が俺と信徒達の間に強引に割って入ってきた。


「皆さま、ご存知の通り新しい助祭様はまだお年も若く、

 お疲れの様子です。

 今日のところは私がお話をお聞きしますから、

 是非助祭様にはお休み頂きたく申し上げます」


助け船を出してくれた。

信徒達と関わるのも助祭の大事な仕事であるが、今日のところは疲れたと言うことにして帰らせてもらった。

俺が祭壇近くのドアに向かって歩いていくと、俺と会話できないことを残念がる声が聞こえた。チッと言う舌を鳴らす音も聞こえた。


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