1章 5話 幼児期3
あれからさらに時が過ぎ、俺は4歳になった。
隠し書庫の本は読み続けており、いくつかにおいて進捗があった。
まず、魔法を使えるようになった。
助祭が使えるのは、ヒール(怪我を治す癒しの魔法)とクリーン(病気や穢れを除く浄化の魔法)である。それがわかってからと言うもの、隠し書庫内で魔法の練習を繰り返していたのだが、当初魔法が発動することは一度としてなかった。
ある時、転んだ際に膝をすりむいてしまった。シスターたちに見つかってもいなかったので、こっそりとヒールを使用してみるとなんと発動した。
魔法が発動しなかったのは魔法が発動する対象がなかったのが原因だった。怪我をしていない人間に対し、怪我を治す魔法を使っても発動しないのは納得がいく気がする。
クリーンの魔法は、風邪を引いて寝込んでいた大部屋の孤児に使うといとも簡単に発動した。
深夜だったので誰にもバレることはなかったが、病気が治ったのはともかく孤児が寝ていたベッドまで綺麗になってしまったことにびっくりした。
翌日、孤児の病気が治ったことをシスターたちは喜んでいたが、同時に孤児の姿が綺麗になっていたことに驚いていた。
俺は魔法を使えるようになったのだが、敢えて魔法を使えることを明かさないことにした。
なぜなら闇の女神教には現在助祭以上の者がいないのは衆知であったため、新たに助祭が生まれたことについて厄介事が発生するかもしれないと思った。
また、新しく生まれた助祭が4歳と言う若さだと世間に知れた時の世間の俺に対する反応を想像すると、明かすわけにはいかないとしか思えなかった。
しかし、いつかは助祭であることをシスターや孤児に告げないといけない時が来る。その日まで、魔法を使う必要が無い時は魔法を使わないことにした。
他には、植物学に関する知識が深まった。
4歳になり俺は外に出る時間を毎日1時間ほど作ることにした。植物や野菜等の実物をしっかり見たことがなかったからだ。教会の外に出て生えている植物の鑑定を繰り返したことで、多くの植物にどんな効能があるのかすぐにわかるようになった。
それ以来、たまに食用可能な植物を見つけては採集して教会の台所にこっそり置いたりした。
シスター達は明らかに購入してきたものと異なる食用可能な植物が置いてあったことで驚いていたが、神の贈り物だと祈りを捧げていた。
更に、俺が外で遊ぶことをシスターリネットが喜んでいた。外に遊びに行くことをわざわざ勧められなくなったのも良かったと言える。
厄介だったのは、今まで教会から出ることなかった俺が急に外に出るようになったことで、孤児たちに絡まれることだった。
孤児たちは教会から外に出る俺を目ざとく見つけては、遊ぶのをやめて俺を囲んで来る。俺の体力は孤児たちに比べて更に低いため、逃れるすべはない。
どこに行くの、何するの、一緒に遊ぼうよ、と質問責めにあった。俺が無視して通り過ぎようとすると俺の後をついてくる。
よって、俺は孤児たちに見つからないように教会を出るために、裏口を使うようになった。
裏口を使う時、洗濯の係であるシスターリネットに見つかることもあったが、シスターリネットは気をつけてね。と笑顔で言うだけで特に止めたりついてくることもなかったのでとても助かった。
俺が食用可能な植物を持って帰ってきてることがシスターリネットにはバレているような気がする。
教会の外に出るようになったことで、商人の店を見ることもできるようになった。
闇の女神の教会がある村は、まんま闇の女神の村と言う名前だった。昔はかなり栄えていたらしいが、闇の女神教が衰退するに連れてどんどん人がいなくなり、今となっては寂れた村程度である。
それでも宿屋や武器,防具屋、雑貨屋、居酒屋など最低限の店はあったおかげで、商売の形を目にすることができた。
最初は武器,防具,雑貨を見て回ったが、鑑定をせずとも良い物ではなかったのにすぐ気づいた。
念のため鑑定もしてみたが、ほとんどの物に下級と言う言葉がついている。
闇の女神の信仰を復活させるためには、この村を栄えさせる必要があることを感じた。
こうして、教会の外に出るようになったことで教会の中では経験できない色々なことを勉強した。
一ヵ月に一度村の外から来る行商人に話しかけ、幼いながら知り合いになってもらえたのもありがたかった。




