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2章 2話 混沌の実

他の小説でも出てきますけど、私も使いました。混沌の実。

混沌の実って言うネーミングは個人的に気に入ってます。


全員が固まっている中、修道士長が俺に抱きついているリネットを無理やり剥がし、俺は手を取られて別の部屋に連れて行かれた。

そして、説教された。

あなたは昔から頭は大人以上に良かったのに、まさかそっちまで大人だとは!とか、ここは神聖な教会ですよ。一体何をやってるんですか!とか、うんぬんかんぬん。

6歳児に性欲があるわけねーだろと言いたいが、修道士長のマシンガンは弾数が無限なのか収まる様子がなく俺は言われるがままになっていた。

ややもするとリネットが寝間着のまま部屋に入ってきて、そこでようやく修道士長の説教は止まった。

リネットに詳細を説明されて、そこでようやく自分が先走っていたことに気付いたのか申し訳なさそうにしていた。


「助祭様、信じていいんですよね?

 本当に何もなかったんですよね?」


修道士長以上にまだ疑いの目を向けて来るダークエルフの姉の方がいたが、無視した。


翌日俺は朝から孤児を集めてある遊びを提案していた。

その遊びとは、ある物を誰が一番多く集められるか、だ。

集める物の見た目を説明すると、子供たちはよく遊ぶ場所でたくさん見かけているからか、勝負が始まる前から俺が一番集めるんだ!などと言ってはしゃいでいた。

制限時間を1時間と定め、スタートの合図をすると孤児たちは我先にと走り出した。

孤児たちは、片方の手に1つずつ持って運ぶ者、服のお腹の部分を袋状にしてたくさん運ぶもの、両手に複数抱えるものと、運び方は様々だ。

1時間後にはズダ袋1つ分くらいの量が集まった。一位になった者は背も高くなく、それでいて走る速さもそこまでではなかった。だが、服を袋状に使って一度にたくさん運ぶことが出来た者だった。一位になれなかった者たちは納得できなかったようで、更にもう一回行われる。

2回目は、全員が一位だった者と同じ運び方をしたせいで順位が変わった。

そして、夕暮れを期限として3回目までが行われた。みんなひたすら疲れたようだったが、それなりに楽しかったらしくて満足していた。俺の目的のためだが、遊びとして喜んでもらえたなら何よりだった。

こうして、ズダ袋3つ分の物が集まった。


騎士爵領慰問の日の前日になったので、いつものメンバーである俺,リネット,ニルダ,ノエリアの4人でシールズ家まで向かう。

今回、俺以外の三人には先日子供に集めさせたズダ袋を持って行ってもらうよう頼んだ。一応、そこそこの重さがあるのでリネットだけ中身を少し減らしてある。

今日1日かけてシールズ家に向かうのだが、俺は5歳から6歳になり体力も増えたからかなんとか丸1日歩き続けることができた。ただ、疲れてその日はすぐ眠ってしまうことになったが。


翌朝シールズ家にたどり着くと、以前はいた下男下女が屋敷のまわりに見当たらなかった。

玄関をノックすると現れたのは夫人で、夫人自らが応接室に案内してくれた。そこで座って待っていたのは長男だけだった。

リネットはそれを不審に感じているようだ。


「兄さん、父さんや他の人たちは……?」


「父さんは爵位を俺に引き継ぎ、自身は出稼ぎに

 縁戚の元で書類仕事をしているから、もうここには

 いないんだ……。

 ここで働いていた下男下女は、払う給料もないので

 縁戚や知り合いへの招待状を書いて、解雇することに

 なったんだ」


長男、もとい現当主はとても悔しそうに拳を握りしめ、歯を噛みしめていた。

改めて降格された話を聞くと、男爵領では以前より不作が続いていて一昨年どうしようもなくなり、税の支払いを繰り越しさせてもらっていたらしい。だが去年もまた不作。二年連続税の支払いが滞ってしまったことで領地経営の手腕を指摘され、男爵である価値なしと判断されてしまったようだった。

結果領地は半分に減らされ、減らされた分の領地は他の貴族が扱うこととなった。


「リネット、すまない。

 こんな状態になるまで黙っていて。

 まだ幼いリネットに心配させるようなことはしないと、

 父上と俺で頑張っていたんだ。

 だが、どんなことをしてもうまく行かず、結果的に

 このようなことに……」


現当主の横では夫人がハンカチで目を覆っていた。

男爵領を訪れるたびに食事まで出してくれて、慰問の度に寄付までしてくれて、本当はそれを捻出するだけでも大変だっただろう。何も考えずにただもらうだけの立場だったのが申し訳なく感じた。


「まあ暗い気持ちになる話はとはこれくらいにしよう。

 大した料理は出せないが、食事くらいはうちで

 出すから是非食べて行って欲しい」


現当主は無理やり笑い食事を勧めてきてくれたのだが、今回俺は先読みして持ってきた物があったので食事は必要なかった。


「必要ない」


俺は誘いを断ると、男爵に断りを勘違いさせてしまったようで随分と落ち込んでいた。


「はは、そうだな……。

 今うちで出せるのは屑野菜のスープがせいぜいだ。

 そんな料理、食べたいとは思わないだろうな……」


現当主がもう見ていられないような状態になっているので、俺は断った理由を説明するために持ってきた食材をズダ袋から取り出した。


「これがある。

 今日はみんなでこれを食べよう」


取り出したのは、大人の拳大ほどあるじゃがいもだ。

植物の鑑定をしていた時に、野生のじゃがいもが村の周りにたくさん生えていたのを知ったので、いつかこのジャガイモを食べることに使おうと決めていた。

そして、先日孤児たちにゲーム感覚で集めさせたのだ。


「それは……待て! 半毒の実じゃないか。

 とても食べられた物ではないぞ!」


しかし、じゃがいもを見て現当主が「半毒の実」と呼んだ。

この世界でじゃがいもが半毒の実と呼ばれることは、俺は知っていた。隠し書庫の植物の本に書いてあったからだ。

じゃがいもの芽には眩暈,嘔吐,腹痛を起こすような毒素が含まれているのだが、この毒素は死に至るようなことは決してない。だから、死に至る毒の半分しかないと言う意味で半毒と呼ばれている。

しかし、じゃがいもの正しい食べ方を知っていて、これから広めようとしている俺からすれば、この呼び方ではとても困るのだ。だから、


「これは半毒の実ではない。

 混沌の実だ」


じゃがいもを敢えて混沌の実と呼ぶことにした。

理由は2つ、じゃがいもは食用の部分と毒の部分の2つが混成しているので混沌に掛けられる。そして、闇の女神の教義に混沌があることから、闇の女神の食べ物と言いやすいからだ。


「その、混沌の実とは一体なんでしょうか」


ここで、話についてこれてないメンバー(現当主と俺以外)から疑問が上がったので、懇切丁寧に説明した。

まず、この実は毒を持っていること。摂取すると眩暈,嘔吐,腹痛が起きる。世間では食用にはならないと言う判断がされていて、当然市場には出回っていない。

毒があることを認めた上で、毒はあっても芽だけにあることを教えた。芽を取り除いてしまえば食用になることを話すと、この世界でも誰も知らない知識に現当主が驚いていた。

現当主以外の者はそもそもじゃがいものことをあまり知らなかったからか、俺の話を聞いて好意的に受け止めていたが、現当主はじゃがいもが毒であることを明確に知っていたので、俺の話を聞いただけでは完全に納得できていない様子だった。なので、今から試食をすることにした。


リネットの案内で厨房に行く、流石元男爵家。前までは何十人と言う人間の食事を作っていた場所だけあり、とてつもなく広かった。

俺は2つのじゃがいもを取り出し、1つは焼き、もう1つは煮ると言う方法でリネットに調理してもらった。リネットは教会でも当番制で調理を担当しているので、問題なく任せることができる。


まず食材切り分け用の短刀で皮を剥いてもらい、その後で芽を綺麗に取り除いてもらった。

焼きは、大きめの串のような物に刺して直火で焼き、煮る方は水でそのまま煮て柔らかくなったら潰し、雑炊のような状態にした。この世界では塩の価値も高いから、シールズ家に無断出費をさせるわけにはいかないので味付けはなしとした。

数分で出来上がり、皿に盛り付けられたじゃがいもを食べようとするとニルダが私が食べますと毒見を買ってくれようとしたのだが、強引に俺が食べることで進めた。

焼いたジャガイモはほくほくしていて食感がいい。教会で食べる料理より美味いかもしれないと思うほど。間違いなく屑野菜のスープよりは良い。

煮たじゃがいもはスプーンで掬って食べた。煮て潰したことで水分を含み、なかなかの量になりしっかりとお腹を満たすこともできた。


食べてから時間が経っても特に俺の症状が悪くならかったので現当主は驚いていた。

この食べ方をすれば毒はないことを一応理解してもらった後で、改めて人数分の量を作り試食してもらう。


「これ……なかなかいけますね。

 下手な物を食べるより美味しいと思えるかもしれません」


「食いでがあるな。

 毒についてちゃんと理解してもらえれば、

 生産する価値があるかもしれん」


じゃがいもの味については全員好意的だった。

次にじゃがいもの生産についても説明する。

じゃがいもは実の数か所から芽が出るため、4分割くらいにして植えることができる。

分割された物を1つの株として、1株からは多いと10個以上実がなることもあるため、収穫が期待できる。水が少ない土地でも育つので生産自体は割と楽。連作障害があるものの、年に2回収穫ができる。そして、この国では誰も食べられていないため、野生の実がたくさんあること。つまり、今からでも野生のものを取ってくれば食料にすることができるのだ。

明日の慰問の際に炊き出しを行い、半毒の実ではなく混沌の実であると言うことを村人に理解してもらう。これ普及すれば騎士爵領の生活が一気によくなると言うそういう寸法だ。


「しかし、理解してもらえるだろうか。

 村人の中にも半毒の実の話を知っている者は多いと思う」


現当主が眉毛を八の字にしてまだ悩んでいたので、もし混沌の実を食べて腹を下したりした者には俺がすぐにクリーンとヒールを行うことと、一番最初に現当主が試食をすることで村人たちに安全だと確認してもらうことを告げる。


「それならなんとかなりそうか……やってみよう。

 助祭殿,何かあればフォローを頼む」


明日の慰問で炊き出しを行うことを現当主に認めてもらえた。これで後は明日無事に慰問と炊き出しを終えるだけだ。


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