2章 1話 シールズ男爵降格
書けていない日が続いていますので、更新タイミング(朝6時)ではありまえんが、更新します。
今回から2章に突入します。
2章と3章の区切りはまだできていないので、長くなる予定です。
朝10人,昼過ぎ15人の全ての慰問を無事に終えて、自室に戻って休んでいる時だった。
ニルダが一緒に部屋を入って剣を差した腰の帯を解いていた。ニルダやノエリアが来て大分過ぎ、武器を携帯している修道士の姿に教会の誰もが慣れた頃。
「ウィリアム助祭、修道士長が待っている。
急いで来てくれ!」
ドアを数度強く叩かれ、向こうからノエリアの声がした。
ニルダと目を合わせて急いで普段打ち合わせを行う部屋へと移動した。
部屋ではテーブルに座っていたシスター達が、一人の例外もなく暗い顔をしている。
今まで、思いついたときにだけ行っていた打ち合わせは定期報告会へと様子を変え、今ではシスターだけではなくニルダとノエリアも参加しているのだが、ノエリアさえも顔が暗い。
俺とニルダが席に着くと、修道士長が立ち上がって神妙な顔で話し出した。
「ウィリアム助祭、先ほど教会に手紙が届きました。
内容は……シールズ男爵家が騎士爵へと
降格させられてしまったとのことです。
現在シールズ家のことは、これ以上はわからない状態です」
喋り終えると、届いた手紙を俺に渡してくれた。
手紙には、シールズ男爵家は数年に続く税の滞納につき男爵号を剥奪。降格させられ、騎士爵になったと書いてあった。
騎士爵とは貴族階級の中でも最も下に位置している爵位である。貴族ではない者が、戦争での活躍や国家への貢献等を経て国王より爵位を賜った時につくのが騎士爵。よって、生まれながらにして貴族の血を引いている貴族の者にとって、騎士爵の者は貴族とは扱われない。
つまり、シールズ家は貴族としては滅亡してしまったも同然だった。
再度男爵へと咲き返るには、最低限税を納められるようにならないといけないわけだが、数年滞納している状態から税をしっかり払えるようになるには奇跡でも起きない限り無理そうだ。
しかも、更に悪いことに騎士爵となって男爵領であった場所の半分は取り上げられ別の貴族の所領になるようだった。
手紙を読み終わり、顔が自然とリネットの方に向いた。
暗い顔を飛び越えて絶望の表情をしている。
「どうも、リネットは全く知らされていなかったらしく……」
リネットは全く喋る気配がなかったので、代わりに修道士長が答えてくれた。
しかし、どうにも困った。領地が半分と言うことは、シールズ家からの寄付が半額以下になってしまう。最悪、寄付がなくなる可能性もある。
今後、シールズ家からの寄付は当てにできないとすれば、シールズ家からの寄付で賄っていた分を何かで埋めなくてはならない。
この場を用いてその話をし、シールズ家からの寄付と同等に価値のあるアイデアを募集したが、教会内の不要な物を売るとか、ダークエルフの双子が護衛や冒険者として働くだとか、小物を作って売るだとか、一時的な解決ならともかく恒久的解決になりそうな案は出なかった。
仕方ないので今日のところはこれで解散し、俺は自室へと戻る。
打ち合わせの場では黙っていたが、もちろん俺にはアイデアがないことはない。
例えば、現代での知識を売ることもできる。しかし、知識を売ると言うことは信用できる相手がいないと始まらない。
なぜなら、知識と形にならないものは売ったことを証拠にすることが難しい。最悪、知らない振りをされ相手に逃げられてしまうだろう。
誓約書のようなものに残そうにも、どのような知識を売ったと言うことまで書かないといけないのだから、その証書にサインをせずに内容を見ただけで逃げられることもある。
だから、すぐに役立てる現代知識がなかなかないのだ。
だが、全くないわけじゃない。割とすぐにできそうなアイデアが1つある。しかし、今はタイミング的にも、環境的にもそのアイデアを披露することができない。
このアイデアを披露するのは、騎士爵領に慰問に行った日だ。俺は慰問の日を待つことにした。
その日の夜、教会の皆が寝静まった時に俺はいつものように開かずの扉へ向かった。
この世界で活かせる知識を隠し書庫から見つけるためだ。音を立てないように廊下を歩いていると、暗い廊下に誰かが立っているのがわかった。
近くの柱に急いで身を隠すが、廊下に立っていた人影はすでに俺を見つけていたからか、俺に向かって歩いてきた。
「ウィルくん……」
声の主はリネットだった。俺が深夜に部屋を抜け出していたことはバレていたようだ。この分だと、開かずの扉に入っていることもバレているかもしれない。
リネットは俺に近づいてくると、俺の前にしゃがみ込み俺を強く抱きしめてきた。
「お願い……シールズ家を助けて……」
リネットの目から流れた涙は、頬を伝い俺の肩に触れた。
頭をゆっくりと撫でてやる。
「大丈夫。任せろ」
リネットは「うん」とそれだけ言うと、ただ静かに泣いた。
その後泣き止んだことは泣き止んだのだが、俺を離してくれることはなくそのままリネットの部屋のベッドまで連れて行かれ、抱き枕代わりに使われた。
途中寝たのを確認してからベッドから出ようとしたのだが、寝ている癖に抱きしめる力が強くて抜け出すことができなかった。
今日は、開かずの扉へ行くのは諦める必要があるなと、そう思った。
翌朝、俺は当に起きている時間になったのだが、リネットがまだ起きずに抜け出せずにいると、
「ウィリアム助祭! ウィリアム助祭!」
「助祭! どこだ! 教会内にいるなら返事をしろ!」
まだ完全に陽が出ていないうちから、ニルダとノエリアの声が響いた。
あ、そうか。ニルダは俺と同室だから朝に部屋にいなかったら心配かけるよな、と思ったのだが時すでに遅く。
飛び起きたシスターたちも一緒になって騒ぎだし、その声でようやくリネットが起きだしてムニャムニャ言ってるタイミングで、リネットの部屋のドアが開かれた。
「リネット! 助祭がいなくなった! どこにいるか知ら……あ……」
大慌てで入ってきたノエリアが、ベッドを見て固まった。
「助祭……その年でもう……」
固まったノエリアの顔が徐々に赤くなっていく。
誤解だ。完全に誤解だ。そもそも、6歳児に性欲があってたまるか。
リネットはまだ頭が回りきっていないらしく、この状態にもついていけてなかった。
ドアを開けて固まっていたノエリアを見つけたからか、ニルダまでやってくる。
「助祭さ……ま……えっ」
その後、どんどんやってくるシスターに次々に同じような反応をされ、俺はまだリネットの手から抜け出せずに、どうしようかなと思っていた。
別作品である、「1から始まるダンジョンマスター」の方もよろしくお願いします!




