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おはようございます。
やっと男に戻れた元悪役令嬢のジュリアです。あぁ、女じゃなかったから悪役令嬢とは言わないのか…?……どうでもいいか。
あの卒業パーティーから一週間経ったわけだが……。
俺は体が男性化しないように、声が低くならないように魔法をかけていて、一週間前に魔法を解いたわけだが…………うん。
声は大体低くなった。と言ってもちょっと声の高い男の声で。身長も一週間で5センチほど伸びて現在174センチ。令嬢時代は169センチで令嬢としては背の高い方だったが、男としてだと低いよね。残念なことにこれ以上伸びなそうだし声も低くならなそう。だめだ。これじゃあ可愛い男の娘だ。
……うん。筋肉だ。筋肉つけよう。もっと剣術学ぼう。
ほら、剣術始めて筋肉ついて、肩幅も広くなって随分男らしくなった(あくまでも最初と比べて)。てことで。よーし。剣振るぞー!っと思い、剣を持ったところで執事さんに「ジュリア様。少々よろしいでしょうか?旦那様が呼んでおられます」と声をかけられた。
せっかく気合い入れたのにな…なんて思いながら父上のいる書斎に向かった。
「ジュリア。その…だな」
やけに歯切れの悪い父上。
なんだ。どうした。
「はい。なんでしょうか。父上」
「王家から、ジュリアに手紙が届いてだな」
スッと上質な紙で作られたであろう封筒が差し出された。
……読めと?
そう思いチラッと父上を見たら頷かれたので仕方なく封を開けて手紙を読んだ。
「…………はぁ……?」
とても綺麗な字で
"我が愚息が迷惑をかけたようで申し訳ない。今までの詫びとこれからの話がしたいので、本日登城するように"
と書かれていた。
本日登城するように………本日?
ガバッと顔を上げて父上を見るとまた頷かれた。
「その手紙と一緒に来た私宛ての手紙にも本日ジュリアを伴って登城するように。と書かれていたよ。よって今から城に向かう……が、いいか?」
……正直王太子に会いたくないし(城に行ったら絶対にいる)、詫びもいらない。
でも………。
「こちらには拒否権などないのでしょう?準備をしてまいりますので、お待ちください。……あ、服装はどちらの方がいいんですかね……?」
そう言えば、本来の服装で城に行ったことがない。
「ん?あぁ。いいんじゃないか?今の服装で。もう婚約者でないのだからドレスを着る必要も無いだろう。因みに私はもう息子がドレスを着る姿を見たくない。似合ってた、似合っていたし、可愛かったけどね」
「…ありがとうございます? では、こちらの服装にて準備します。また後ほど」
俺はそう言って書斎を後にした。
登城……城…。
城、ねぇ。
正直、かなり行きたくない。
王太子にあったらどうするよ。
めんどくさいなぁ…。
あぁー。そういえば王太子はあのヒロインと婚約したのだろうか。
まぁもう俺には関係ないことか。
数分後、俺は"関係ないか"と思った事を死ぬほど後悔する。
家から馬車に揺られる事1時間。
我が国の国王が住むお城に到着した。
…少し前はよく来たなぁ……。
お妃教育という名の王妃様とのお茶会。
王妃様は俺が男だと知っていたので、ある程度の教育を終えたらお茶会に変わっていた。
会うたび会うたびに「惜しいわぁ」とか「勿体ない」とか「ジュリアが王太子にならない?」とか言われた。
王太子レーガン…どんだけ評価低いんだよ。もっと頑張れよ。
……にしても、馬車を降りてから刺さる視線が痛い。
俺の父上がイケメンだからか?そうなのか?
それとも………俺の服装何処かおかしいか?
ちゃんと本来の姿で出かけたことも久しぶりすぎてわからない。
令嬢の時は悪役よろしく赤いドレスを良く着ていたのだが、俺自身は青が好きだから今日は自身の瞳の色と同じズボンとジャケットを羽織っているだけなのだが……。
おかしいのか?父上も同じような格好をしているから大丈夫だと思ったのだが………ジャボか?ジャボがいけないのか…?
仕方ないじゃないか。普通にネクタイしようと思ったら、俺のクローゼットに存在しなかったんだから。かといって何もつけないと胸元が寂しかったんだから仕方ないじゃないか。
悩みながら歩いていたら前から抱きついて来た女がいた。
勢いが凄かったが、なんとか踏みとどまった俺を誰か褒めて欲しい。
てか、誰だよ。俺の城にいる知り合いなんて王妃様と王太子くらいだぞ。
「ジュリア様ぁ」
…………この、耳につく猫なで声……。
視線を下げるとそこには、
ふわふわしたピンクの髪色をしたヒロインがいた。
この世界で直接ちゃんと見るのは2回目だが、ゲームでよく見ていたから間違えるはずがない。この私可愛いでしょって言っているようなピンクの髪に翠の瞳。でも、何故。
「君がここに居て、僕に抱きついているのかな」
俺はにっこりと笑っていない笑顔を浮かべて聞いた。
そしたら何を勘違いしたのか、抱きついている腕に力を入れて来た。
当回しに離れろって言ったんだけどな。
「ジュリア様が、私の運命の人だからです!!」
……は?いきなり何?……あぁ、俺の質問の答えか?抱きついてきた理由が俺が運命の人だから?ちょっと意味が分からない。てか、王太子どうしたよ。お前らは結ばれる為にジュリアと婚約破棄したんだろ?早くこの頭おかしいヒロイン回収してくんないかな。
「……えっと……ケイティ…様?でしたっけ。意味分からない事言ってないで離れてくれません?」
俺たちはお友達でも無いのだ。
なのに爵位が格下のヒロインから抱き着いてきたのだ。不敬か、最悪やんごとなき関係に思われてしまったらどうしてくれようか。
「ジュリア様が私の名前覚えてくれてた!嬉しいぃ」
ヒロイン基ケイティはさらに嬉しそうにした。
なんなのコイツ。頭がおかしいんじゃ無いか。離れろって言ってるの分からないわけ?
「だからはな「ジュリアから離れろ」
……ん?
離れろって言おうとしたら誰かが俺とケイティを引き剥がした。力づくで。
誰だと思い見上げて、輝く銀髪が見えて俺は額に手を当てた。
お前もか。
「ちょっと!レーガン様 邪魔しないでよ!!」
「は?邪魔?邪魔は君だろう。何故俺のジュリアに気軽に触れているのだ。汚らわしい」
…………はい?
いや、お前ら愛し合ってジュリア捨てたんだろ?
てかレーガン様よ。
俺はもうお前のモノではないのだが。
…………誰か、俺に、この状況の説明をしてくれ。頼むから。
望んだはずの婚約破棄から一転。
雲行きが怪しくなってきたところで今日は終了です。あと1、2話くらいで終わる…はずです。




