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僕が気づいた頃には、もう何もかも全てにおいて、遅かった。
「ジュリア。いい?貴方は今から公爵令嬢よ?この国の王太子様の婚約者になってしまったの」
「……え?でも、僕…」
「えぇ。わかってるわよ。何もそのまま結婚しろなんて言わないわ。婚約"者"になればいいのよ。何かやらかして向こうから破棄させれば良いのよ。こちらからでは出来ないからね」
「わかった。僕、公爵令嬢になる!」
そう言った僕は美少女に見間違うほど可愛い子供だった。
肩口で切りそろえられた綺麗な髪に大きな瞳。声も高くて。
母上はそんな僕が可愛かったらしくよく、遊びでスカートを履かせていた。…似合ってしまっていたのだから仕方ない。
それがあらゆる誤解を生んでしまった。
見た目のせいでこの国の王太子様に気に入られて、婚約者にされてしまった。
どんなに可愛くても、"男"なのに。
僕はその日高熱を出して寝込んだ。
そして、思い出したのだ。
この国、僕の…俺の姉貴が好きだった乙女ゲームじゃね?
と。
俺の姉貴はいわゆるオタクという奴で。
俺もゲームが好きで。
姉貴の部屋にはあらゆるジャンルのゲームや本があった。
そのゲームや本をよく借りていたのだが、その中にあった、乙女ゲームの世界そっくりなのである。
まず、俺。
そのゲームの"悪役令嬢"のジュリア・フェクトルそっくり…というかビジュアルそのまんまなのである。王太子の婚約者になったしね。俺男だけど。
あぁ。勿論ゲームでは女でしたよ。ジュリアさん。俺の好みどストライクの女の子。
え?可愛いヒロイン?お呼びでないよ。あんな計算され尽くした女の子嫌だ。全然可愛くない。何であんなのに攻略者どもは簡単に落ちてしまうのか……。あぁ、ヒロインだからか。
俺はその、悪役令嬢ジュリアが見たくて乙女ゲームを全編クリアしてしまった。
…俺が腐男子だからじゃないぞ。俺はノーマルだ。勿論攻略してる時は胸糞悪かった。…特に自分が。
すぐこける。
すぐ曲がり角で攻略対象とぶつかる。
すぐ男を潤んだ瞳で見上げる。
すぐ男に恋に落ちる。
お前はチョロインかって話だ。
攻略対象供もだ。
何故すぐヒロインに惚れる。
何故完璧令嬢を悪役にできる。正論しか言ってないではないか。
……まぁ、このゲームはジュリアにしか思い入れが無かった。
そして何の因果か。
何故か死んだ俺はそのゲームそっくりな世界に(いわゆる転生という奴だろう)俺の好きだったジュリア(男)に生まれ変わるなんて。
やばいよね。
好みの顔=俺。
そりゃ磨くよね。
俺の身体に、頭脳etc.
異世界といえば剣と魔法でしょ?
魔法はほぼ完璧。
剣は……肩に筋肉ついてゴツくなると言われて出来なかった。
一番やりたかったのに出来なかった。
母上には「令嬢生活が終わったらやっていいわよ。むしろやりなさい」と、言われた。
だから、剣術以外ほぼほぼ完璧な令嬢が仕上がってしまった。
ここで愛想までいいと王家が俺を手放してくれなそうなので、そこだけはよくしなかった。
笑わない、喋らない、聞かない…は出来なかったけど、無愛想で態度の悪い令嬢の出来上がりである。ゲーム内のジュリアと違って俺は完璧悪役になった。……見た目の影響で変な信者が増えたのだが。
物理的にも気持ち的にも王太子とは結婚できない俺。
でも、中々婚約破棄されない現実。
でもヒロインが現れた事により物事は筋書き通りに進んだ。
大嫌いなヒロインだけど、今は感謝しか無い。
ありがとうヒロイン。クソ王太子と幸せになってくれ。俺はジュリアみたいに邪魔しないから。
はい。
公爵令嬢の秘密は、"男だった"って事ですね。
お母さんは完全に面白がっています。はい。
お父さんどこ行った…。




