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あの後、互いに色んなことを話し合った日から数日のこと。
千菊様が伝えたんだろう。村の方では刀と鎧を着た人がやってきて、幻朝と村人たちはお縄にかけられたと市で話題が持ちきりであった。
実際に私が連れて行くのを見たのだから。村で得ていた金品とお金を発見して、かなり騒いだらしい。何が起きたのか、何をしていたのか。幻朝たちが何か言おうにも、怪しまれるだけだろう。
市に居る人曰く、村にいた連れ去られた女の子たちは寺院で引き取られて、身元が分かる子だけは親元に返しているらしい。
千菊様に文句を言っていたお婆さんのもとには、女の子が泣きじゃくっていた。お婆さんだけではない。お婆さんの息子さんとその奥さんに女の子は抱きついている。孫と娘が帰ってきて嬉しいのだろう。思い出しながら、背負った包んだ布の物を背負い直す。店主さんから声をかけられた。
「しずちゃん。今日は何を買うんだい?」
あの時の物物交換で小袖を譲ってくれた店主さんだ。顔を覚えられたようだ。……千菊様と一緒にいて、人攫いと間違われて騒がれれば覚えられるよね……。
けど、今日は違う。私は首を横に振って、店主に首を横に振る。
「いえ、今日は市をじっくり見に来たのを兼ねて、皆様に別れの挨拶をしに来たんです」
幻朝たちを驚かしたあと、私たち話し合い決めた。
千菊様は住んでいた場所から物を全部処分をした。使えそうなものは持っていく。いらないものは、この家に住む主に譲る。ここにまで来るかどうかまでは分からないけれどね。
私の言葉に店主さんは目を丸くしたあと残念そうに話す。
「そうかい、千菊の旦那の勘違い人攫いが見れなくなるのか」
「千菊様がそれ聞くと怒りますよ」
「そうだな」
店主さんは楽しげに笑う。あっ、そうだ。
「店主さん。そういえば、千菊様がこれを届けてほしいと」
懐から手紙を出して彼に渡す。千菊様が丁寧に認めたもの。今回の関わったことについて、よく書いてある。店主さんは目を丸くすると意味ありげな笑みを浮かべ、手紙を受け取る。
「──なんだ。あいつ、最初から気付いていたのか」
話す口調がいつもと違う。声も、雰囲気も。私は千菊様から打ち明けられたから知っている。頷いて、私も話す。
「はい。だから、最初の対応もぶっきらぼうだったのでしょう。
あと、「見た目はごまかせても質のいいものばかり売るな。怪しまれるぞ」だそうです」
「あちゃー、菊ちゃん、厳しい。というか、わざわざ来ればいいのに、相変わらず人の多い場所苦手だなぁ。奥さんのために頑張って人込みの中にいた菊ちゃんの姿、見たいよー」
彼は額を押さえた後に手紙を懐に入れる。
「わかった。これは拙生が責任を持って届けるよ」
「はい、よろしくお願いします。……ええっと、秀亜さん。
ありがとうございました」
名前を言って私が礼を言うと、彼ははにかんで快く頷いた。
彼は千菊様の仲間で最初から支援していた。私にくれた小袖も彼が用意してくれたものだ。その感謝を言って、私は出入口へと歩いて向かう。
彼で挨拶が最後だ。
出口の方に出て行くと、千菊様は出口から離れた場所にいた。
「千菊様」
呼びかけると、彼は反応して体を向ける。私が駆け寄ると彼は膝をついて、私と顔を合わせてくれる。
「届けてくれたか。しず」
「うん。ちゃんと届けたよ」
千菊様は必要な荷物だけ布でまとめて持っている。ほっとしたように息をつく。
「そうか。ならいい」
用事を終えられて安心したのだろう。
……これから、私は千菊様のお世話になってる場所へ共に向かう。彼の元で身を寄せるのだ。帰る場所には帰れない。行く当てもないから、彼の場所だけが頼りだ。
「行こうか」
彼は立ち上がって、歩き出す。
私は後を追おうと歩き出すけど、再度確認したいことがあって足を止める。
「千菊様」
呼ぶと、少し離れた彼が振り返ってくれた。
「今の私は死にたい思いより、生きたい思いがとても強い。
あの時の私とは違う。こんな私でも、妻としてそばに置いてくれる?」
私の問いに彼は。
「生き抜いた最期に死なせると言っただろ。それまで、我が妻として近くで役立て」
即答しながらも、とても優しい声色で言ってくれる。
……うん、貴方はそういう人だね。
口約束から始まった契り。婚姻の儀式とか祝いはしてないけれど……きっと空の青さと涼やかな風は私達を祝福してくれるはず。
──この先、どんなことを味わうのだろう。
心を踊らせながら風を浴びて、急いで私の旦那様の元へと駆けていく。




