第八話 消えた女子生徒
「あら、あやめちゃん、おかえりなさい」
「ただいまー」
両手いっぱいのピーマンを抱えたあやめを見て、しずくは思わず目を丸くした。
「あやめちゃん、確かピーマンが嫌いだったわよね……」
「それなのに、どうしてそんなに沢山持ってるのよ」
しずくは心底あきれたような顔をしている。
「だって、掴み取りが100円でやってたら、誰だってするでしょう!」
「嫌いなものはしないと思うわよ?」
「だって、仕方がないんだもん!今まで掴み取りの誘惑には勝てた試しがないんだから!」
◇
「ただいま」
「あ、黒兎、おかえりー」
「いい草あった?」
「あったけど、草って、そんなに美味くないな」
「そうなの?」
「俺って、身体はうさぎだけど、味覚は人間のままみたいだ……」
「へー、そうなんだ」
「だったら、お土産あるよ」
「ほー」
「じゃあ、これ」
「さっき、掴み取りで確保したピーマンあげるね!」
差し出されるピーマン。
「……」
「……ピーマンか」
「……ありがたい」
「草と比べたら、ピーマンのほうがよほどマシだったわ……」
その様子をみてたしずくが何かに気がついた。
「あやめちゃん、そのピーマン、ちょっと見せて」
ピーマンをまじまじと見るしずく。
「このピーマン、ものすごく魔力が込められてるわよ」
「どうやったら、こうなるの?」
「魔力?」
「どうやったらって、いっぱい入れ、いっぱい入れ、いっぱい入れ……って思いながら集中して袋に詰めただけ?」
「それよ!」
「あやめちゃんは普通の人より魔力が多いの。魔法の才能があるから、無意識に魔力を込めちゃったんだね」
「そうなんだー」
「その魔力って、気力とか妖力とかと関係あるのか?」
「黒兎、どうしたの?」
「なんか、あやめから出されたピーマンを食べると力が戻るというか体調が良くなるから気になっただけだ」
「へー」
それなら、
「いっぱいあるからたんと食べてね」
◇
さてと、
「しずくさん、お昼は食べました?」
「まだよ」
「これから何か作ろうかなって思ってたところ」
「だったら創作料理になるけど、食べていきます?」
「いいわね〜」
「何するの?」
「有り合わせで、ソーメンチャンポンかな」
「キャベツ、ピーマン、モヤシ、豚バラとソーメンでサクッと作るけど、それでいい?」
「うん」
「よろしくね」
「何か手伝う?」
「ありがとう。でも、すぐだから待っててね」
手際良く調理され目の前に出される。
「あやめちゃん、いいお嫁さんになれるわね」
「そんなことないですよー」
「だって、どんどん腕上げてるし」
感心するしずく。照れるあやめ。
「そんなことより食べましょう」
「そうね」
では、
「「いただきます!」」
◇
さてと、もう一度買い出しに行こうかな。
昼はピーマンが多すぎて他の買い物が出来なかったし、今日は夕方の新聞配達もない日だし。
と午後の予定を考えながら、
「そういえば」
「黒兎、今朝、お社に行ってみたんだけど、どこにも見当たらないの、何か知ってる?」
「さあな、あそこにいた理由も知らないからな」
「というか、無かったのか?」
「うん」
「よくわからないし、考えても無駄かな」
まあ、いいや。わからないものはわからない。
「商店街に買い物に行ってくるね」
◇
商店街の電気屋さんの前を通りがかると丁度ニュースが始まった。
店先のテレビが目に入る。
午後六時のニュースです。
〇〇市で高校二年生、十七歳の女子生徒が昨夜から行方不明となっています。
女子生徒は学習塾からの帰宅途中に消息が途絶え、警察が行方を捜しています。
情報をお持ちの方は、最寄りの警察署までご連絡ください。
一緒に流れる映像を見ながら、あやめが気づく。
「あれ?」
「……たぶんこれ、うちの学校だ」




