第六話 黒兎の新生活
ピンポーン
ガチャ
「たっだいまー、あやめー、スイカ買ってきたよー」
「一緒に食べよ」
気にせず部屋の中に入る。
「うわっ!」
「何これ?妖精界と繋がった?」
勢いよく中へ入ってきたのは、木村ゆいだった。
二十歳。現在大学生。
「あ、ゆいちゃん、おかえりー」
「おかえりなさい」
「……」
「おかえりー、じゃないわよ」
「何よ、これ」
「んー」
「なんか、舞ったらこうなった」
「詳しくは知らない」
原因のあやめはこの調子である。
「うーん……」
「まあ、私が気にしたところで何も変わらないか」
「それよりも、そのうさぎは何?」
「飼うの?」
「飼う気は無いよ」
「一応、紹介するね」
「今日、新聞配達の帰り道で拾った、黒うさぎの黒兎」
ぺこり
「黒兎だ。よろしく」
「うわっ」
「うさぎがしゃべった!」
驚くゆい。
「中身は人間の男の子だから気をつけてね」
「何もしねーよ!」
「へー」
「でも、なんだろう、変な感覚というか気配だね」
「なんか、一応、妖なんだって」
「たぶん、害は無い?」
「だから、何もしねーよ!!」
「そうなんだー、私はゆい、よろしくね!」
「よろしく」
「それよりも、お前たち、普通に俺を受け入れているな」
「俺が言うのも何だが、おかしくないか?」
「あー、それはね。あなたは妖なんだっけ?」
「妖って、人ならざるものの総称みたいなものでしょう?」
「その括りなら、私たちも妖に入るのかな?」
「正確には妖精なんだけど」
「妖精?」
「こことは違う世界から来てるから、あなたの言う妖とは違うものとは思うけど」
ゆいはほわっと説明した。
「そうよね、妖がこの世界の人ならざるものを現す言葉なら、私たちは違うわね」
しずくが補足する。
「な、なるほど」
黒兎はわかったふりをした。
◇
「そんなことより、私はスイカを食べたい!」
あやめは空気をぶち壊す。
「そうだった」
「あやめちゃん、切り分けてー」
「了解」
「黒兎はスイカなんて食べられるの?」
「食べられるよ」
「そっかー、じゃあ4等分ね」
切り分けられたスイカが並ぶ。
「あま~い!」
「当たりだね!」
「ほんとね」
各々食べる。
黒兎はちびりちびり食べている。
「やっぱり、見た目通りうさぎだねー」
「仕方ないだろー」
「食べる物は基本的に草?」
「そうだな」
「たぶん、草が主になるな」
「そっかー」
「食費が掛からなくていいね」
「冬はやっぱり、冬眠するの?」
「……冬を越したことが無いからわからない」
「そっかー」
「頑張ってね!」
◇
「そろそろご飯にするかな」
「そうね、私もお暇するかな」
「しずくさん、ありがとう!」
「何かあったら教えてね」
「はーい」
しずくは帰って行った。
「ゆいさんはご飯食べた?」
「まだー」
「今日は簡単なスタミナ丼だけど食べていく?」
「いく!」
「黒兎はこれね」
黒兎の目の前に積まれるピーマン。
「また、これか……」
「贅沢言わないの、明日からは川原に行ってね」
「わ、わかった……」
しゃくりしゃくりと食べる黒兎。
「味は兎も角、何か調子が良くなる気がするな」
「そうなんだ」
話をしながら手早く台所で調理するあやめ。
「ゆいさん、出来たよ」
「今日はピーマンとモヤシとミンチと卵の焼肉ダレ味スタミナ丼と、お味噌汁でーす」
「たんと召し上がれ」
「ありがとう!」
「「では、いただきます!」」
◇
「ゆいさんは帰ったし、朝も早いし、そろそろ寝るかな」
黒兎を見るあやめ。
「黒兎はどうするの?」
「表に段ボールは置いてあるから」
「ちなみに泊める気はサラサラ無いよ?」
「だ、段ボールで寝ます……」
しぶしぶ答える黒兎。
「そっかー」
完璧な誘導で表に出される黒兎。
「じゃあ、野良犬には気をつけるんだよ!」
ガチャ
「えっ!」




