第三十六話 校庭の下に眠るもの
「ただいまー」
「戻ったぞ」
「あやめちゃん、黒兎、おかえりー。何かわかった?」
「どうやら、わたしが通っている学校付近があやしいみたいなので、ご飯を食べたら行ってみようと、一旦戻ってきました」
「そうなんだ。じゃあ、次は私もついて行くね」
◇
「暑いし、冷やしそーめんでも作るかな」
「具は、トマト、きゅうり、ネギ、ちくわでいいかな」
「黒兎にはピーマンと、たまにはきゅうりとにんじんでいいか」
手際よく調理を始めるあやめ。
そこへ——
「あやめちゃん、そのにんじん、ピーマンと同じ……いえ、ピーマン以上に光って見えるんだけど、何?」
「何って、ただのにんじんだけど?」
「そうじゃなくて、けっこう神威が込められてるのよ」
「あー、これもピーマンと同じでつかみ取りだったからかな? 念じながら詰めるとそうなるみたい」
「いやいやいや、普通はならないから!」
「考えても仕方ないので、ご飯食べちゃいましょう」
「まあ、もう、あやめちゃんだし……でいいか……」
「はい、黒兎もどうぞ」
「おう」
「では、いただきます」
三人で昼食を取る。
「あやめちゃんの料理は相変わらず美味しいわね」
「そりゃどうも」
照れくさそうに答えるあやめ。
そして、黒兎はにんじんを食べたあと——
「何か普段より調子がいい気がするな」
と、ボソッと呟いた。
◇
食事をしたあと、三人で学校へ向かう。
「あかねさん、その荷物はどうするんですか?」
あやめは、あかねが持っている荷物が気になった。
「ああ……これね。一応、念のために、ね?」
「なにか含みがありますね」
「いや、だって、黒兎が元の姿になると素っ裸なんでしょう?」
「そうですね」
「だから、裸で戦うのもなんかねー?」
あやめはコテンと首を傾けて、
「それはそれで面白いと思いますけどね?」
「なんでだよ!」
黒兎がすかさず突っ込む。
一方、あかねさんは裸で戦う黒兎を想像したらしい。
「ぷっ」
吹き出した。
「まあ、その時は、本人にまかせるわ」
◇
学校の前に着いた。
とりあえず、辺りを見回す。
「特に変わったものは無いわね」
「そうですね。いつもの学校です」
「黒兎は何か感じる?」
「そうだな……」
何かを感じ取っているのか、黒兎だけは注意深く辺りを見回しているようだ。
「校庭の真ん中辺りだと思う……地中深くに何かあるぞ」
「それも、かなりデカい」
「えっ」
あかねは驚くと同時に気配を探る。
「私にもわかったわ……」
「これ、別の空間ね。異相を介して上手く隠れているわね」
「異相?」
「そう、異相。神域を張った時の空間と、今いる空間。その狭間みたいなものよ」
「そんなところにあるんじゃ、何もできないんじゃないか?」
「おそらく大丈夫よ。あやめちゃんがいるし」
「わたし?」
「そう。あやめちゃんくらいの出鱈目な神威があれば、根こそぎ取り出せるはずよ」
「えっと、どうやって?」
「いつも通り神威を張る感じ? あとは、地中から掘り出すイメージを持ちながらね」
「わからないけど、わかった」
あやめは深呼吸をしてから、神楽を舞う。
イメージ……イメージ……イメージ……。
根こそぎ引っこ抜く感じでいいかな……。
あやめの舞に呼応して、周りの空間が神聖な空間へと切り替わり始める。
そして、強く「出てこい」と念じながら舞を終える。
すると——
神域へと切り替わった校庭の中央付近から地響きが起こり、それは姿を現した。
酷く穢れたそれは、黒兎やあかねにとって因縁深いものだった。
「蟒蛇甲……」
「以前とは比べ物にならないくらい大きいわね」
現れたものは——大妖蟒蛇甲だった。




