第二十九話 両親の真実
「あと、両親について、知っていることを、これから詳しく話そう」
風見正人は両親の死の真相について、語り始めた。
◇
風見家は風を司る陰陽師の家系として古くから存在している。
今から20年ほど前、風見の占術により、この付近に災いの兆しがあると出た。
そこで、調査に向かったのが、お前の父、風見颯真だ。
調査を進めるうちに、昔、この付近には大池があり、池に巣食う妖を撃退したという話が浮かび上がった。
さらに調査を進める中、この付近にあるという社を、代々守っている白斗家が関係していることがわかった。
白斗の社は不思議なことに、白斗の者以外は存在がわからず、入ることすら出来ない。
そのため颯真は社を直接調べることが出来ず、守り人である白斗あやに接触し、協力を求めた。
二人は調査を進める中、恋仲となり、やがて、お前が生まれた。
ある時を境に、この付近に邪気が急に増え始め、元凶を掴むため、風見颯真と白斗あやは協力し、邪気の強い場所を探しては清めることを続けた。
◇
「颯真さん、ここは終わりました」
神楽を舞い終わり、夫である颯真に声をかける。
「あや、お疲れ様、今日はあと一箇所回って終わろう」
「そうですね、あやめが学校から戻る前に帰りましょうか」
「でも、最近になって、この地はおかしいですね」
「こんなに連日、邪気による穢れが発生するなんて……」
「そうは言っても無視は出来ないしな」
「あやめの安全のためにも確実に払っておかなければいけない」
「そうですね」
「では、あなた、次の場所を」
「わかった」
颯真は懐から形代を取り出して、なにやら呪文のような言葉を紡ぐ。
すると、形代は鳥の姿へと変わり、空へ飛び立った。
「さあ、いこうか」
二人は飛び立った鳥を追いかけて行った。
◇
「しかし、調査を始めてからずいぶんと経つが、これまでろくに何もなかったのに、急に邪気が溢れてくるとはな……」
「わたしも守り人として、これほど頻繁に邪気溜まりが出来たという話は聞いたことがありません」
「風見の占術で出た災いとはどんなものでしょうか?」
「わからん」
「俺はこの地に災いの兆しがあると言われ、派遣されただけだしな」
「ただ、俺一人を専属で長期調査させるんだ」
「よほど大きな災いなのだろう」
「そうですね……」
◇
形代の鳥が上空で旋回しているのが見える。
「あの辺りは、学校?」
「そうだな、あやめの小学校より、少しズレているように見えるな」
「隣の高校あたりでしょうか?」
「そういえば、あの辺りは、今までの調査の中で反応がなかったな」
「そうですね」
「言い伝えでは、大池があったとされる地域がこの辺だということはわかっていたが、詳しい場所まで書き記したものが無いからな」
鳥は高校の敷地内で旋回しており、その下に百葉箱が見える。
そして近づくと、その後ろに黒い渦のようなものを颯真が霊視で見つける。
「今回は百葉箱の後ろだ」
「あや、浄化を頼む」
「わかりました」
あやは姿勢を正し、ゆったりとした足運び、静かな所作、指先まで意識した動き、音の無い空間で静かに舞い始めた。
そして、舞が終わると、辺り一帯を覆っていた淀んだ空気が消え、爽やかな空気へと変わった。
「颯真さん、終わりました」
「わかった」
「今日はこれくらいにして、そろそろ戻ろう」
「そうですね、戻りましょう」
二人は、そう言い合うと帰路につこうと踵を返す。
その時、先ほど浄化した場所に、霊視せずとも見えるほど濃い、黒い邪気溜まりが現れた。
辺りを浄化したにも関わらず、どんどん邪気が溢れ、呑まれていく。
邪気溜まりはどんどん大きくなる。
急激に。
そして――
大きくなった邪気溜まりの中から何か大きなものが這い出てきた。
「颯真さん!」
「あや!気をつけろ!」
二人は見たことのない妖と遭遇した。




