第二十八話 叔父と名乗る男
スポーツチャンバラはゆいちゃんと10戦ほどして、最初の一戦目こそ勝てたけど、あとはいい勝負を繰り返して、結果的には私の勝ち越しで終わった。
その後に軽く指導をしてから、あかねさんとも何戦かして、最後には疲れてのびていた。
私は後衛だからとか言ってたけど、なかなか筋はよかったと思う。
運動不足にならない程度には誘ってみよう。
夕方の新聞配達があるから早めに切り上げて、身支度をする。
そして、部屋を出ると知らない人がいた。
◇
そこにいたのは、スーツを着てステッキを持った、紳士然とした男の人だった。
「風見あやめさん、でしょうか?」
男の人が話しかけて来た。
「そうですけど、あなたは?」
「やはりそうですか」
「私は風見正人。あなたの父親、風見颯真の兄で、あなたの叔父にあたる者です」
「少しお話をしたいのですが」
「そうですか」
「わたしは姓こそ風見ですが、父方の人とは特にお付き合いはありません」
「これから仕事ですので失礼します」
そう言って立ち去ろうとすると、肩を掴んできた。
「待ってください」
肩を掴まれて、わたしは、
イラッと来た。
そして、
「きゃあああああああああー!」
「おまわりさん、おまわりさん、おまわりさーん!」
「ここに、痴漢がいます!」
「たーすーけーてーー!!!」
大声を挙げてみる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
叔父と名乗る男は慌てて手を離した。
「黙れ、痴漢」
「とっとと立ち去れ不審者」
「これから仕事なの」
「これ以上付きまとうと通報しますよ」
あやめはとことん塩対応。
「わたしには話すことはありません」
「早々に立ち去ってください」
そう告げると、わたしは走ってその場を後にした。
◇
新聞配達から戻ると自称叔父さんはまだいた。
「……」
「まだいたんですか、不審者さん」
「……話を聞いてくれないか?」
「……」
「出来れば、人目のつかないところでお願いしたいのだが……」
「人目のつかないところとは?」
「ここで話せないような内容ですか?」
「人に聞かれたくない内容が含まれるので……」
「見ず知らずの人を部屋にあげろと?」
「不審者と二人になるとか御免です」
「それに話を聞くとは言ってません」
「人を喚びますよ」
「……わかった。ここで話そう」
「いえ、お引き取りください」
「両親が死んでから、3年が経ちますが、わたしは一人で生きて来ました」
「その間、親族とは一切関わっていません」
「なのに、急に訪ねて来るということは、どうせろくでもない内容でしょうし、聞きたくありません」
「話を聞いたところで、わたしには何のメリットもありませんし……」
「お帰りください」
立ち去ろうとするあやめに、風見正人が食い下がる。
「ま、待ってくれ!」
「両親の死について、本当のことを教える」
「だから、話を聞いてくれ!」
「……両親の死についてですか?」
「あゝ」
「聞く気になってくれたか?」
「……わかりました」
「ただし、ここで話してください」
「わかった」
「お前の両親だが、」
「ただの交通事故として処理されたが本当は違う」
「妖に殺された」
「妖……」
あやめは思わず言葉を失う。
「そう、妖だ」
「人の世に災いをもたらす、人ならざるものだ」
「風見家は古来より、妖や怪異といったものと相対してきた、風を司る陰陽師の一族だ」
「この周辺で起こっている失踪事件の調査を国の依頼でしていたが、先日思わぬことが起こり、一族に複数の死者が出た」
「そのため、今後の一族の存続を考え、優秀な血統の者が必要となった」
「そこで、お前の力が必要になった」
「お前の中の風見家の血と白斗家の血」
「どちらも優秀な血統だ」
「だから、お前に風見家に来てもらい優秀な血を残してほしい」
「こちらの用件はこんなところだ」
「……」
「あと、両親について、知っていることを、これから詳しく話そう」
風見正人は両親の死の真相について、語り始めた。




