第二十四話 和鰐襲来
「さてと、今日も張り切って配達しますか」
ちょっと気合いを入れて部屋を出るあやめ。
「黒兎は……まだ寝てるようだね」
ダンボールから少し黒いものが見えた。
「今日は天気いいなー」
空を見上げて、駆け出した。
◇
ブーン……
赤色灯を回しながらパトカーが通過する。
「今日、何台目だろう」
「やけにパトカーとすれ違うな」
配達が終わり、新聞屋さんに到着する。
「ただいまー」
「おかえり、あやめちゃん」
「今日はパトカーと何台もすれ違うんですけど、何かあったんですか?」
「あやめちゃんが配達に出た後に、警察の人が店にも聞き込みに来たんだけど」
「夜に女の人が戻ってこないらしいのよ、この間の高校生と合わせたら二人目だし、事件と事故の両方を視野に入れて探してるんだって」
「そうなんですか」
「あやめちゃんも気を付けてね」
「わかりました」
新聞屋さんの奥さんと話して店を後にする。
◇
「早く帰って、あかねさんのご飯でも作りますかー」
あやめは帰り道を進む。
すると、
ガシャーン
大きな音が少し離れたところから聞こえた。
「事故?」
何だろうと覗きに行くあやめ。
「なんか煙が上がってるなー」
見える位置まで進むと、
パトカーがひっくり返り煙が上がっていた。
パトカーから這い出ようとする警察官。
その前には……
「和鰐……」
警察官まで、目前に迫っている。
「仕方ないか」
「危険なことには首を突っ込みたくないんだけどな……」
あやめは意を決して神楽を舞う。
すると、神域が辺りを包む。
そして、和鰐と警察官との空間が切り離された。
「こっちはどうにかするから、自力で何とかしてください」
聞こえないのはわかっているが、あやめは呟いた。
◇
「何だあれは」
「恐竜?」
パトカーに乗る、警ら中の警察官達は前方に見える生物を見て言った。
「いや、まさかな……」
「だが、2足で歩行するデカいトカゲとか、どう表現するんだ?」
「わからん」
「まずは本部に連絡する」
『こちら、現在、警ら中の105号車、本部、応答願います』
『こちら、本部、どうしました?』
『パトカーより大きい、恐竜のようなものと遭遇。繰り返す。パトカーより大きい、恐竜のようなものと遭遇。応援を求む』
『こちら、本部。あの、大丈夫ですか?正確な情報を——』
しかし、そう悠長にしている時間はなかった。
「ヤバい!」
「ジョギングの女性に向かって行くぞ!」
「車をぶつける、構えろ!」
アクセルを踏み込み、スピードを上げる。
そして。
ドンッ
デカいトカゲにパトカーで体当たりする警察官。
しかし少し押し込むだけでダメージは無いトカゲ。
トカゲは車を睨むと、大きな尻尾を振り回し車にぶつける。
バシンッ
尻尾が当たった車は勢いよく飛ばされて、ひっくり返った。
ガシャーン
「おい、大丈夫か!」
「ダメだ!足が挟まって動けない!」
「もう少し頑張れ!」
「俺が窓から出て引っ張るから耐えろ!」
一人が開いた窓から出ようとする。
しかし、迫るトカゲ。
「うわー!トカゲが来る!」
「助けて——!」
慌てる警察官達。
だが、助けを求めた瞬間……目前まで迫っていっトカゲが急に消えた。
「……」
「今のは、現実だったのか……?」
◇
「変身!」
言葉を発するとあやめの身体は光に包まれ、ミニドレス風の衣装が現れる。
「和鰐の一匹くらい、なんとかしてみせる!」
「この間も倒せたし、大丈夫!!」
自分で自分に言い聞かせて、恐怖と戦うあやめ。
「だいじょうぶ!!!」
と、さらに大声で気合いを入れる。
「魔力刀!」
ブォン
あやめの手元に魔力刀が現れた。
「でゃあああああっ!!!」
気合い一発。
和鰐に向かって駆け出す。
そして、魔力刀を大きく振りかぶり、飛びかかるあやめ。
ズバッ
和鰐の肩口を力一杯、大きく斬りつける。
グオオオオオ!
咆える和鰐。
あやめの動きはさらに加速する。




